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2025年09月16日(火)

被害と対策を知る:獣害対策PG

 先日までの「獣害対策プログラム」では、日本の森林と野生動物の関係、関連する法令、野生動物の生態や調査方法などについて学んできました。

 今回は岐阜県郡上市にある郡上農林事務所を訪問し、郡上市内での獣害の現状と課題についてお話を伺いました。郡上市は県内でも主伐と再造林が盛んに行われている地域で、伐採跡地にはスギやカラマツ、広葉樹などが植えられています。

 しかし近年は、シカによる植栽木の食害が大きな問題となっています。被害対策のひとつとして、この地域では植栽木への「忌避剤」の散布がよく行われています。ただし現場では、十分な効果が確認できていない場合もあり、実際に散布を行っても植えた木が食べられてしまうケースも報告されているそうです。

 そこで郡上市では、皆伐後の植栽地184箇所を調査し、シカによる被害の実態を把握しようとしています。調査の結果、被害が特に大きい地域とそうでない地域、また被害の大小が入り混じる地域があることが分かってきました。この違いが何によって生じているのかは、今後さらに解析を進めていく予定とのことで、結果がとても楽しみです。

 

 

郡上地域の現状と課題、忌避剤散布による防除効果はどこまであるのか、調査結果をもとにお話しする生駒さん

 

郡上地域における再造林に関する基礎知識について説明する安田さん

 

 

 午後は郡上市内の複数の現場を巡り、実際の被害の様子と獣害対策の現場を見学しました。

 明宝のある場所では、植栽してまだ間もないスギの側枝や頂芽がほとんど食べられてしまい、盆栽のようになっているものがありました。また、ヤマザクラなどの広葉樹を植栽した皆伐地では、全員で探してみても1本も見つけることができないほど消失してしまった場所もありました。

 

前回の復習がてらシカの採食痕から被害程度をみんなで推測

 

  更に別の場所では、樹高が3m程度まで成長したにもかかわらず、シカによって樹皮が剥がされて(剥皮)木が弱っていたり枯れてしまったものもあり、せっかく植林した森が立ち直れなくなってしまう危険を感じました。

 

遠くからみたらそこまで違和感はありませんが、近くでみてみると下の写真のように、剥皮されているのが確認できます

 

近くで確認したスギの幼木

 

 これらの被害に対して、現地では忌避剤以外にも生分解性のツリーシェルターをつかった獣害対策が実施されています。今回は昨年から導入された生分解性プラスチックで作成されたツリーシェルターが設置されている植栽地を見学しました。

 

2.7haの植栽地には、丁寧にシェルターが設置されていました

 

今回使用しているツリーシェルターについて解説する上辻さん

 

 今回の獣害対策プログラムでは、被害の最前線の現場について知るとともに、シカによる獣害の深刻さと、その対策の難しさを改めて知ることができました。

 また、現地見学を通して、「数値や写真で学んだことが、実際にどんな光景として現れるのか」を体感することができました。特に、忌避剤などの工夫をしながらも、被害を完全に防ぐことは難しく、地域ぐるみでの対応が欠かせないことを実感しました。

 今回の学びを、これからの活動などに活かしていきたいと思います。

 

 最後になりましたが郡上農林事務所の皆様、暑い中本当にありがとうございました! 

 

林業専攻 中森