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2025年05月09日(金)

授業「森林評価・収穫調査」の現場から

アカデミーでは、クリエーター科木造建築専攻の学生が実際に小規模建築を自ら設計・施工する「自力建設」というユニークなプロジェクトを実施しています。
自力建築に使用される木材は、クリエーター科林業専攻とエンジニア科林業コースの学生が演習林で伐採した”自前の材”です。

今回は、その”自前の材”を調達する前段階でどんな学びがあるか、具体的には、林業専攻が立木調査を行い、その結果を建築の学生と共有し意見交換する授業を行いましたので、その様子を報告します。

22期生が伐採した木材で作られた、24期自力建設 木材乾燥庫 ”栞(しおり)”

今年入学した25期の木造建築専攻の学生たちは、今年卒業した23期生が伐った材を使って建物をつくります。そして今24期生が伐っている木は、来年入ってくる26期生へと受け継がれていく。まさに「循環」を実感できる学びの流れが築かれています。

授業の構成を説明する塩田准教授(アカデミー3期卒)・・・ここにも「循環」が

伐採の対象地となるのは、アカデミーの演習林。林業専攻の学生は、授業「森林評価・収穫調査」で、その伐採前の森林の状態を詳しく調べます。

調査風景①(周囲測量)

調査風景②(毎木調査)

今年も4月に測量調査や毎木調査(木を1本1本の採材を判断する作業)、収穫量の予測といった現地調査を実施。そして、その結果を木造建築専攻の学生たちと一緒に伐採予定地で共有しました。

今年のプランナー(説明)役(林業専攻2年)の面々(正面奥)

昨年度の伐採現場も見ながら「山」と「建築」の視点を交換し合う

現場では、昨年度までに伐った区域を見ながら、木が育つスピードや伐ったあとの山の姿、再び森を育てていく方法など、建築を学ぶ学生たちと一緒に「森の時間」を感じながら学び合いました。

伐採地の面積、林分の密度、健康度合など、林業専攻の学生が説明を進めるなかで、木造建築専攻の学生たちからは「この木から材はどれだけ取れる?」「価格は?」といった実践的な質問が飛び交いました。

普段は素材生産という“山元”の視点で森を見ている私たちにとって、「木をどう使うか?」という“川下”の情報はとても新鮮で、気づきの多い時間となりました。

現場を共有したからこそ意識できた課題もありました

この夏には、いよいよ今回の調査地で本格的な伐採が始まります。
調査段階で予測した材積と、実際の搬出材積の違いを検証していきます(ドキドキワクワクです)。
また、木造建築専攻の学生たちからは、製材率や木取りの情報をフィードバックしてもらうことで歩留まりを認識し、“林業と建築”の対話を深めていきます。

一足先に始まった伐採授業の様子(立木評価の検証がこれから始まる)

この授業を通して私たちは、ただ木を切るだけでなく、森の再生、資源の活用、そしてその循環を支える責任について学んでいきます。

卒業後に活躍するフィールドは、林業と建築各専攻で違ってきますが、こうして一度、同じ森のなかで学び合えた経験が、将来きっと「森を活かすという共通の意識」につながる。そんなことが感じられる授業となりました。

報告:林業専攻2年 米澤翼、本田佳彰、渡邊久美子

(授業担当:林業専攻教員 塩田)