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2024年02月06日(火)

日独連携視察レポート【獣害対策】①

全3回を予定している視察レポートの初回は【狩猟者教育】についてです

ドイツのフォレスターは様々な知識と技能を持ち合わせている必要があり、その中でも「野生動物管理」が必須項目となっています。ロッテンブルク林業大学(HFR)はフォレスターを養成する学校でもあるため、1年生から狩猟の資格を取得するためのカリキュラムが組まれています。

 

ここで注意しないといけないのは、日本とドイツの狩猟資格制度の違い

アカデミーで実施している勉強会の様子

日本の場合、事前の勉強会や講習会に参加していれば狩猟免許の資格取得は問題なくクリアすることが出来ます。銃猟免許の場合は試験取得の前or後で所持許可と射撃の訓練が必要になりますが、銃社会でない日本では必要な訓練であると言えます。日本の場合資格は取得しやすいので、獣害対策の入口には立ちやすい。しかしながら、実技の練習の機会が少なく、資格取得だけで終わってしまうという課題もあります。

ドイツの狩猟用テキスト(テーマ毎に10冊のボリューム)

ドイツでは

州によって狩猟法が異なるので地域によりますが、狩猟免許取得の為には通常半年~1年の実技トレーニングと講習及び試験をクリアする必要があるそうです。

実技では

「野生動物の生態学」

「ビオトープの手入れ」

「農業・林業」

「狩猟による被害の防止」

「武器技術」

「武器に関する法律」

「拳銃を含む武器について」

「狩猟実技」

講習・試験では

「狩猟の種類」

「狩猟施設」

「猟具」

「動物愛護」

「狩猟の法律」

「自然保護と景観保護法」

「狩猟倫理」

「動物の病気」

「野生動物の寄生虫など病気」

「食肉としての評価と衛生対策」

を学ぶ必要があるそうです。とても幅広い知識理解が求められます!!さらに、資格を取得するために十分な射撃訓練を行う必要もあります。資格取得に費用が€2,500~3,000程度かかることから、日本に比べると非常にハードルが高い事が伺えます。そんな中でも資格取得の若年齢化が進んでいるそうです。

 

この棚全てが狩猟・野生動物管理に関連する書籍

HFRの図書室を見学させてもらうと驚き!

この書棚一面が全て狩猟・資格取得に関連する書籍です。新旧の書籍が混在しているモノもありますが、非常に幅が広いということと同時に入ってすぐ正面に位置していることから、狩猟と野生動物管理が優先順位の高い学びに位置している事も感じました。テキストを見てみると、個体の年齢測定方法や止め刺しの具体的な手法が写真やイラストをふんだんに使用して説明されているのでとても分かりやすい!リアルな情報が細かく書かれているのは非常に丁寧だと感じました。

 

スマホで現在地とこれからの動きの確認

後の報告でも書きますが、実際の狩猟も学内カリキュラムの中で実施され

そのトレーニングが資格取得の実技に充てられます。このカリキュラムは1年生からはじまり、猟期に複数回実施される実猟では関わり方(企画運営・食事担当・勢子・解体・射手)を変えながら様々な視点で学びを深めていきます。それぞれが猟場のどこに配置しているのか?だれが責任者なのか?そして猟場のホットスポットはどこなのか?等すべてがデータ化されており、感覚ではなく合理的な狩猟へのかかわり方が印象的でした。

1日の狩猟で収集したデータ

フォレスターにとって必要とされる野生動物管理と捕獲技術。日本の将来の森づくりに於いて非常に参考になる事ばかりです。

つづく・・

 

 

報告:新津裕(YUTA)