活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2026年01月16日(金)

ドイツサマーセミナー2025報告②

前回の続きになります。

今回の報告はエンジニア科2年の石村道成さんからしていただきます。

 

—以下、石村道成さんの報告

ドイツサマーセミナーの後半の行程について報告します。

 

9/18 Günter Rauch(林業事業体)

バーデンビュルテンベルク州で森林施業、林業用品開発、チップ加工などを行っているGünter Rauchという事業体を訪問しました。

 

今回案内してくださったGünter Rauchの社長

 

午前中は素材生産の現場を見学しました。施業地の選木はすべてフォレスターに任されていて、木の質、樹種の多様性、階層の多様性などを総合的に判断して将来木を選定しているそうです。現場にはフォレスターが選定した、マーキングされた将来木があちこちにありました。

 

マーキングされた将来木

 

現場のハーベスタは1日8時間から9時間稼働し、多い時で1日200立米を山から出すそうです。ハーベスタは日本ではなかなか見ないクローラ式。すごい迫力でした。

 

現地で稼働していたハーベスタ、日本国内にも同モデルが数台あるとのことです

 

午後に見学したチップ加工の工場では、前日に訪問した製材所と同様に、生産した熱エネルギーを地域の家庭に供給していました。家庭だけではなく、市の公共施設などにも供給しているという話を聞いてとても驚きました。ドイツでは地下のパイプラインによって各家庭に熱エネルギーが供給されており、冬の暖房などに利用されているのだとか。生活に欠かせないエネルギーを共有する仕組みに感動しました。

 

チップの加工場、周辺の家庭や公共施設にもエネルギー供給をしています

 

 

9/19午前 Wald Haus Freiburg(森林環境教育施設)、フライブルク市有林

4日目の夜からドイツ南西にある都市フライブルクに移動し、この日はフライブルクの森林環境教育施設(Wald Haus Freiburg)を訪問しました。この施設は、学校に通う子どもや周辺に住んでいる住民たちを対象に、森や自然に触れるプログラムを提供していて、この日も朝から多くの子どもたちが訪れていました。体を使った木工やレクリエーションなどの実践的なプログラムも行っており、アカデミーに隣接している森林環境教育施設”morinos”に似た部分を感じました。

 

木育に関するプログラムの実演

 

午前中の後半は、現役のフォレスターであり、営林署所長のシュマルフスさんにフライブルク市有林を案内していただきました。気候変動の影響が年々大きくなる中、これからの森林施業はどうなっていくのかに焦点を当ててお話ししてくださいました。

 

現場を案内してくださったシュマルフスさん

 

ドイツでは地球温暖化の影響によって、今後の樹種分布が大きく変わることが予想されています。ダグラスファー(ベイマツ)は北米から持ち込まれ、ドイツトウヒに代わって今後の木材利用に有用とされている樹種です。しかし、自然保護や生態系保全の観点からみるとダグラスファー林分の価値は低く、ダグラスファーばかりを育てるというわけにはいかないようです。これからは、一つの樹種が進出しすぎない混交林を増やしていくことが重要だとシュマルフスさんは語っておられました。

 

将来木施業を行って目標林型へと進んでいるダグラスファー林

 

 

9/19午後 FVA(フライブルク林業試験場)

午後はフライブルク州の林業試験場であるFVAを訪問し、研究員の方々にお話を聞きました。試験場では380人の方が働いており、日々新しい技術の導入に向けて研究されているそうです。この日は、4人の研究員の方々がそれぞれの専門にしておられる分野について講義をしてくださいました。近年の大きな課題である地球環境問題に対処するため、菌類、野生動物管理、木材のCTスキャン技術などさまざまな角度から気候変動に適した森林、林業の在り方を考察していました。

 

林業試験場には、研究者以外にもフォレスターも勤務しています

同研究所には、日本人のフォレスターも所属しており、研究所を案内いただきました

 

特に印象的だったのが、木の中身を見ることができる木材のCTスキャン技術です。この技術によって、フォレスターや製材所の人が外観から中身がどうなっているのかを推測することができ、将来木の正確な見立てや効率的な木材生産につながります。まだ実用化には至っていませんが、この先どんどん発展していきそうな面白い分野だと感じました。

 

林業試験場にあるCTスキャナ、今回の見学のために稼働いただきました

 

9/20 カイザーシュトゥール(Kaisersthul)

研修も残すところあと2日となったこの日は、フライブルク近郊にあるカイザーシュトゥール(Kaisersthul)というワイン生産地を訪れました。現地のガイドの方に案内してもらいながら、カイザーシュトゥール地域一帯とフランスとの国境に面した町、ブライザハ(Breisach)を周りました。

 

現地ガイドの方と現地通訳の安井さん、今回の研修は現地通訳の方が同行してくださったおかげで言葉の壁は非常に少なかったです

 

ワイン用ぶどうの段々畑の風景が特徴のこの地域は、ドイツとフランスの山々に挟まれた場所にあり、非常に乾燥しています。その乾燥した気候と、耕作に適していて保湿力も高い黄土という土壌を活かして、古くからワインの生産が盛んにおこなわれてきました。

 

ドイツでも珍しい(?)ブドウ畑が広がっています

 

保湿力の高い黄土の土壌のおかけでこの地方はワインの名産地として知られるようなりました

 

 

9/21 シャウインスランド鉱山博物館

研修最終日は、フライブルク郊外のシャウインスランドという山にある鉱山博物館を見学しました。この博物館はボランティアで運営されており、ガイドの方がツアー形式で坑道を案内してくださいました。

 

現地ガイドの方、入館料などは全てこの鉱山を管理するための費用に充てられています

 

この山には22の坑道があり、総距離はおよそ100km、深さは約800mにもなるそうです。鉛や亜鉛が採掘され、現在も活字やバッテリー、レントゲンなどに利用されています。ツアーの中で、坑道を掘り進める際に使われる掘削機の実演があったのですが、想像以上に音が大きく驚きました。林業でもチェーンソーなどかなり大きな音の出る機械が使われますが、坑道が閉鎖的な空間だったこともあってかそれ以上だったように感じました。

 

当日はたくさんのツアー客でとてもにぎわっていました、所々で激しい爆音が聞こえてきてびっくりしつつも狭い坑道を進んでいきます

 

ドイツの多くの施設(スーパーなども含む)は日曜は定休日なこともあり、最後は博物館見学で今回のサマーセミナーの研修は終わりとなりました。最後に、現地通訳の方や道中様々な補足説明や解説をしてくださった岩手大学、宮崎大学、信州大学の先生方に感謝とお礼を伝え解散しました。

 

以上、ドイツサマーセミナーの報告でした。

—ここまでが、石村さんの報告

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

このブログは、学生がドイツでのサマーセミナーを通して、自分の目で見て、耳で聞き、感じたことを、ひとつひとつ言葉にした記録になります。森林施業の現場や、地域とつながるエネルギーの仕組み、森林環境教育の取り組み、そして気候変動という大きな課題に向き合う研究の現場など。どれも、決して遠い世界の話ではなく、私たちの暮らしや未来と静かにつながっていることが伝わってきます。

海外での研修は、知識を増やすだけの時間ではありません。

慣れない環境の中で考え、悩み、驚きながら得た経験は、すぐに答えになるものではなくても、これからの学びや進路を考える上で、大切な土台になっていきます。このブログには、そうした「学びの途中」の姿が、率直に描かれています。この文章が、読んでくださった皆さんにとって、森や林業、そして人と自然の関わりについて考える小さなきっかけになれば幸いです。そして、学生の一歩一歩の学びを、これからも温かく見守っていただければと思います。

林業専攻 中森

これらの実習の様子は、アカデミーの学びの一端になります。

アカデミーの学びについて知りたい方は、YouTubeにてオンライン講義のアーカイブ配信を行っています。

興味のある方は、こちらをご覧ください。