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2019年01月29日(火)

『森林空間利用プログラムと事業化』信濃町訪問〜森と癒しをつなげた町づくりを学ぶ〜

森林環境教育専攻の科目である『森林空間利用プログラムと事業化』では、数回に渡り、森林空間を利用した先進的な事業を行っている現場にお邪魔させていただき、その事業について学ぶ授業です。その最終回は、学生自身が興味のあるテーマで事業を調べ、そこにアポイントを取り、段取りをして訪問します。

今年の森林環境教育専攻の学生は、全員が前職でIT関連の仕事に携わっていたこともあり、森林空間×リモートワークというテーマで事業を調査しました。そして、長野県信濃町役場とNPO法人Nature Serviceが共同で構想している2019年5月にオープン予定の『信濃町Nomad Work Center』(以降ノマドワークセンターと呼びます)について伺うために、2019年1月21日に長野県信濃町を訪問しました。

 

 

信濃町役場では、産業観光課商工観光・癒しの森係の川鍋さんが出迎えてくださり、信濃町の概要や癒しの森事業について、教えてくださいました。信濃町は人口約8,500人ほどの町で、面積が150 km2、うち森林面積は110 km2で73 %が森林の自然豊かな町だそうです。癒しの森は、そんな豊な森を活かす事業で、信濃町森林療法研究会―ひとときの会―、一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団、株式会社さとゆめの3社が集まった「しなの町Wood-Life Community」が町と連携して行っているそうです。

信濃町では、2003年から森林メディカルトレーナーという認証制度を作り、高度な専門性を保証しており、官民一体で癒しの森事業を進めている素晴らしい事例であることがわかりました。具体的な事業内容は公式ホームページ(http://iyashinomori.main.jp/)に紹介があります。

 

 

癒しの森事業の概要を伺った後、株式会社さとゆめの取締役で、NPO法人Nature Serviceの共同代表理事でもある浅原武志さんにノマドワークセンターについて、お話を伺いました。『NPO法人Nature Service』はノマドワークセンターを運営する立場で、『株式会社さとゆめ』は「ふるさとの夢をかたちに」することを目的に”伴走型”が特徴のコンサルタント企業で、癒しの森を中心とした信濃町のまちづくりに対してコンサルティングする立場で関わっている団体です。

 

 

ノマドワークセンターは、企業に勤める社員が自然の中でも都会と変わらない仕事ができることを目指したリモートオフィス施設です。浅原さんの中には、この構想自体は10年前からあったそうで、このノマドワークセンター自体も地域づくりのための関係人口増加の手段の一つという位置づけでした。
浅原さんは、リレーションマーケティングや物語マーケティングといった理論的なマーケティング手法を活用しており、地域づくりにおいて、成功に必要なヒントが盛りだくさんでした。

また、ただのリモート拠点では、都市部でカフェ等を利用してノマドワーク(オフィスに依存しない働き方)する場合に負けてしまい、自然豊かなだけでは東京都郊外のリモートオフィス施設に負けてしまうため、信濃町でなければならない理由をとことん突き詰めたうえでターゲットを絞っていました。ターゲットを絞る必要性は理解していましたが、浅原さんのお話を直接伺うことで、どこまで突き詰めるとモノゴトは実現に向かうのか、その程度の深さや熱量をリアルに感じることができました。それらは、手法を教わる以上に大きな学びになりました。

今回、ノマドワークセンター自体はオープン前で見ることができませんでした。しかし、信濃町まで訪れ、直接お話を伺うことができたことで大きな刺激になると同時に、一層オープンすることが楽しみになりました。今回の学びを卒業後に関わっていく事業に活かしたいと思いました。

 

報告:クリエーター科 森林環境教育専攻 菊池拓也

写真:担当教員 嵯峨創平