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2017年07月17日(月)

ファシリテーション基礎技術の集中レッスン

クリエーター科1年生を対象にした共通科目に「ファシリテーション実習」があります。組織内コミュニケーション、プロジェクト推進、コミュニティ活動など多くの対人関係の場面で「ワークショプ」や「ファシリテーション」という言葉を聞くようになりました。その発展の経緯や応用範囲を俯瞰し、ファシリテーションの基礎技術を身に付けて、現場で使ってみようと思えるようになることを目標にした実習です。

1日6時間(午前3時間・午後3時間)×4回=計24時間の集中プログラムで、担当教員が経験してきた(国内の地域計画、環境教育、海外の参加型開発、即興演劇など)各分野の手法からこれは!と思えるベーシックスを選りすぐって伝えています。でも授業全体がワークショップ型なので、ほぼ人と話しているか立って動いている時間です。その内容をかいつまんで紹介します。

 

●1日目
①アイスブレークの技術( 対人緊張を溶かし場の規範をつくるアイスブレークの技術)授業全体のオリエンテーションを兼ねながら、講座・会議などの初めに効果的に使うと、学習効果や意見交換が活発になることを体験してもらいました。少しディーブな自己紹介手法 Five fingers (写真) も使ってみました。
②ファシリテーションとは何か(ファシリテーションのルーツとなる心理学の理論と当時の社会背景の絡まり、そして芸術、社会運動、都市計画、ビジネなど各分野の代表的な流れを資料を使って紹介しました)でもここは語り始めるとクドくなるのでさらっと。
③KP法プレゼンテーション( パワーポイントより応用がきく紙芝居プレゼンテーションの技術)初日の午後は、思考整理法でありプレゼンテーション手法でもあるKP法(川嶋直さん命名)の実習をしながら、より深い相互理解を図りました。

●2日目
④体験学習法ワークショップ(体験編)ワークショップの基本形である体験学習法を体験し、その構造を聞いて理解する実習です。例年「参加のデザイン道具箱」から [月に迷ったゲーム] を使ってグループワークや合意形成プロセスを体験し振り返っています。
⑤体験学習法ワークショップ(企画実践編)4〜5人のグループで30分位の簡単なワークショプ企画を立ててもらい、それを実際に運営してみる実習。学生さんにとって身近な森林や木工のお題が多かったですね。これからも積極的に使って腕を磨いてほしいです。

●3日目
⑥対話型ファシリテーション(事実質問を中心に)グループワーク形式が取れずファシリテーターの役割が決まっていない場面でも、対話形式の質問と問答によって相手の気づきを促し、周りへも影響を与えるファシリテーションの手法が国際協力の現場から編み出されています。中田豊一・和田信明著「途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法」をテキストに事実質問というやり方を練習しました。

⑦対話型ファシリテーション(即興演劇を応用して)事実質問とは反対に、人間の感情の動きや人間関係の変化を読み取る練習には即興演劇の練習方法が役立ちます。インプロ・ゲームと呼ばれる手法を使いながら、言葉の内容だけでなく表情やそこに込められた感情の動きを理解し、さらに社会的・心理的ランクなどを意識的に変えて練習してみることで、自分自身の癖や相手のメッセージをより繊細に感じ取ることができるようになります。

●4日目
⑧ファシリテーショングラフィック(基礎編)会議や討論の可視化(見える化)として、進行役でなくても出来るファシグラは有効なファシリテーション技術です。午前中は、基本的な道具の使い方に慣れながら、文字や線やアイコンを書いてみる練習。簡単なライブレコーディングをする練習をして板書への恐怖心を下げてもらいました。
⑨ファシリテーショングラフィック(実践編)午後はミニ会議で自由に討論する内容をライブレコーディングする練習を輪番制で行いました。さらに(XY軸表、対照表、タイムラインなど)フォーマット型のファシグラを使いながら一つの企画を整理する手順も練習しました。

 

各回みっちりの内容でしたが、これらの基礎練習を踏み台に、学生さん達にはぜひ各分野の実践場面で使ってほしいと思います。10冊の本を読むより1回の現場実践(習うより慣れろ)ですから!

担当教員としては「KJ法の体験から合意形成について」深める回をあと1回やりたかったのですが時間の制約で取捨選択しました。来年も一層の改善をしたいと思います。

 

【履修者15名、実施期間:6月7日〜7月12日】

担当教員  嵯峨創平(森林環境教育専攻)