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2018年09月30日(日)

教員お気に入りのアイテム7:「パソコン」小原 勝彦

【はじめに】
大阪府北部を震源とする地震、平成30年7月豪雨(通称:西日本豪雨)、口永良部島の火山活動、平成30年北海道胆振東部地震、各台風などによる被災者の方々にお見舞い申し上げます。

さて、私の専門分野は木造建築の「構造」です。皆さんが楽しく生活していくことができるように、そのベースとなる皆さんの命を守る部分を仕事としています。仕事の中でもプライベートの中でも、お気に入りのアイテムはたくさんありますが、あえて1つ御紹介させていただきます。
40年近く苦楽を共にしてきた「パソコン」です。

教員お気に入りのアイテム7:「パソコン」

アイテムのデータ
(小原先生が小学校低学年の時から使ってきた全てのPC)
紹介している教員:小原勝彦


【黎明期】 パソコンとの出会い
ゲーマーだった私は、暇さえあればいろいろなゲームをしていました。今風に言えば、ゲーム依存症であったのでしょう。ゲームをやりつくした先にたどり着いたのは、ゲームをする側から創る側へと志向が変化していきました。ちょうど小学校低学年頃からになりますが、友達と一緒に簡単なゲームをパソコンで創り始めていました。その後、コンピュータミュージックを利用して作曲をしたりもしていました。
ある時、F1ゲームを創りたくて、画面上でコースを回転させるべく、中学生頃に独学で回転行列(当時は画面上のものを回転させるコマンド程度にしか考えておりませんでしたが・・・)を扱えるようになりました。サイン、コサイン、タンジェント、アークサイン、アークコサイン、アークタンジェントなどもこの頃に扱っていたので、高校数学で教科書に出てきたときにはちょっと驚いたこと(高校で学ぶことを中学1年生で扱っていたのだと・・・)を今でも覚えています。実用として数学を知らないうちにゲーム創りに単純に利用していただけですので、勉学や試験としての高校数学の成績が良かったわけではありませんが・・・。実用と勉学・試験との一番の違いは、実用ではパソコンが計算してくれるので、私は手計算しなくていいところですね。

【揺籃期】 建築におけるパソコン利用
子どもの頃からパソコンを利用していた私は、大学生になり建築を学び始めた際に、建築におけるパソコン利用を考え始めていました。紆余曲折を経て、木造建築の「構造」を専門とすることになったのですが、この分野はパソコンを利用する絶好の分野でした。
今から二十数年前はパソコンを利用する大学生もまだ少ない状況で、さらに建築分野でプログラミングができる大学生も非常に少なかった状況でした。この頃は私自身がプログラミングしていろいろなアプリケーションソフト開発していました。枠組壁工法スパン表を作成したり、木造トラス架構や木造ラーメンの構造解析をしたり、壁量計算ソフト、耐震診断ソフト、有限要素法解析ソフトなどを創ったりしていました。実験では、静的加力試験制御ソフト、仮動的加力試験制御ソフト、荷重・変位・ひずみ等計測ソフトを創っては、木造の実大実験などをしていました。

【確立期】 建築構造におけるパソコン利用
もちろん今でも、ちょっとしたものであればプログラミングしてデータ処理などを行っています。建物の振動を測定(常時微動測定)したデータを高速フーリエ変換するソフトを利用して、建物の固有振動数や減衰定数などを算出しています。

図1 常時微動測定データの高速フーリエ変換ソフト

エクセルを利用して、建築構造教育用に創ったソフトもあります。例えば、「スウェーデン式サウンディング試験データ処理ソフト」は、地盤調査を行った際のデータを入力すると、即時沈下量や圧密沈下量まで自動的に計算してくれるソフトです。

図2 スウェーデン式サウンディング試験データ処理ソフト

また、「精密診断法2 保有水平耐力診断法ソフト」は非住宅まで対応している保有水平耐力計算による既存建物の耐震診断ソフトです。単なる教育用というだけではなく、このソフトを利用した実物件の耐震診断時に、一般社団法人愛知県建築住宅センターさんから技術評定を取得している実績(3件)もあります。実務にも使っていただけるソフト開発をしています。

図3 精密診断法2 保有水平耐力診断法ソフト

【さいごに】
今でこそ当たり前となってきている各分野でのICTですが、まだまだいろいろと発展していくものだと思います。
建築の分野では、定性的ではない定量的な性能設計を木造建築で実施することは非常に重要なことだと考えています。そのためには、建築におけるICTの更なる発展が必要です。
特に、命を守るための性能設計は非常に大事です。
森林文化アカデミーで我々と一緒に性能設計を実施していきませんか。

小原 勝彦

小原准教授

専門分野 木造建築
最終学歴 工学院大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了、
工学院大学博士(工学)
研究テーマ 郡上市伝統的建造物群保存地区保存審議会・委員
岐阜県CLT建築に関する情報交換会・アドバイザー
岐阜県応急危険度判定士養成研修・講師
岐阜県産材木造ラーメン構造・木造トラス構造の開発
木造制振構造の開発と制振効果の見える化ソフト開発
木構造性能検討ソフトの開発および技術研修
常時微動測定による木造建物の構造性能評価