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2026年03月13日(金)

「馬搬・馬耕体験実習」

日本で最高の馬搬の授業と自負している(笑。でもほぼ確実!)「馬搬・馬耕体験実習」
が行われました。今年は、特別なプロジェクトが最後に実施される関係で(詳しくは報告
ご覧ください)、馬耕は実施しませんでしたが、森林文化、景観、セラピー、教育、ヘルス
ツーリズム、コミュニケーション、持続可能な暮らし、人材育成研修(イギリスでは馬を
介した企業のリーダートレーニングプログラムが盛ん)などなど多くの分野にまたがる
可能性を秘めた「馬」と4日間みっちりと過ごすことで学生たちは多くのことを体で
学んだようです。講師の岩間さん、倉本さん、ありがとうございました!!

農林高校の教頭を退職後、アカデミーに入学し、卒業後は地元で自らの活動場所を
切り開いていこうと意気揚々の1年生、ケンケンこと丹羽健一さんからのアツ〜い
実習報告をご紹介しますね。

なんちゃって先生 萩原ナバ裕作

 

******(ここからケンケンこと丹羽さんの報告)*********

例年、2月中旬の4日間で、森林環境教育専攻1年生を対象の中心にして、講義「馬搬馬
耕」が開講されています。

 「馬搬」とは、広義には馬による荷物の運搬のことですが、この講義では林業にお
ける馬搬、つまり山林において伐採した木材を、馬によって搬出する内容を取り
扱っています。

またこの講義では今年は実施しませんでしたが(馬耕の様子は昔のアカデミーブログ参照)、
「馬耕」は水田の耕起・代掻き(耕したり均したりする作業)を行うものだそです。
これらは1950年代までは日本全国で行われており、林業・農業の重要な技術でした。
しかしトラクタをはじめとした産業機械の普及に代替され、今ではその技術が消失しようと
しているのです。


 森林環境教育専攻では、文化として、林業における重要な技術であった馬搬の技術を
学ぶとともに、ヨーロッパの環境教育の場(ユースファーム)で、大きな教育力を発揮
している馬と人間の関わりについて、この講義で学びました。

 なお、本講義は全て実習で、学生は、馬や馬搬に関わる講義内容も講師に従って馬と
ともに歩いたり、作業をしている現場で、講師の口から語られる専門的内容を聞き学ぶ
という、まさに体験しながら学ぶ体験学習でした。講義の4日間は、朝食・昼食・夕食は、
全て学生による自炊。それも火力は全て焚火。食事場面は、焚火を囲んで講師に学生が
聞きたい内容を質問する貴重な座学の場面となりました。


 

 報告に先だって、報告者としての自分を開示したます。今年還暦の私は生家が牧
場で、大学での専門も畜産。肥育牛100頭の畜産経営の経験や、親しい友人が乗馬ク
ラブを経営していることなど、牛や馬には大いに親近感がありました。

 久しぶりに大動物(家畜のうち牛と馬)に接すると、今回の講義にはとても興味を持ち、
心待ちにしていたところです。何より、今回の講義では、これから設立しようとする山里体験
事業における大動物家畜の可能性なども考察したいと考えていました。

2月11日(祝)講師の岩間敬氏と倉田伸幸氏、そして「きりしば」と「てらゆう」の、
お2人・2頭が森林文化アカデミーに到着しました。

 馬運車から降ろされた2頭の馬の印象は、足の太さと肩と尻の筋肉が明らかに競馬馬
のそれ違うということであった。血統としてはブルトンとペルシュロンの系統だと説明
を受けました。 さっそく私たちは2頭分の飼葉と水を実習地のグランドに準備。

 岩手県から15時間、車に揺られてやってきた2頭は、体を解すように歩いた後、
30リットルほどの水をあっという間に飲み干して、馬運車に積んできた飼葉を解して
やると、ボリボリと音を立てて食べていました。

 今年のこの期間はアカデミーには雪はなく比較的暖かいと言われましたが、2頭が
グランドに露天で4日間過ごすと聞いて、家畜は厩舎と思い込んでいた私は驚きました。

1日目 2月12日(木)
 朝6時半から朝飼い。ほぐした飼葉と水を与え、朝食を済ませて講義が始まりました。
実習初日として、馬に触れることからスタート。ブラッシング、手綱を装着しての引
き馬を行いました。

 単純な直線路から、三角コーンで制限してのスラロームへ、速度も変えて。特に
重要なのは定位置での停止で、馬搬では作業の途中での操作時・危険な場面で確実に馬
を止めることが大事と講師より説明がありました。

 そして、馬が荷物を引くためのハーネスの装着に加えて「どっこい」・・・90cm
ぐらいの木製の牽引器具を装着しての引き馬。遊び要素も取り入れて、きりしばチームと
てらゆうチームでリレー競争など、馬との意思のやり取り、コミュニケーションがとても
心地が良いと感じました

 私は牛の引き綱などの経験が相当あるので、牛のショーポジション:肩の横にリードを
持って立つ癖があり、馬搬では近すぎて危険と指導を受けました。初めて大きな馬の引き
馬で意思の疎通を体感した他の学生は私の何十倍も馬とのコミュニケーションを楽しんだ
ことが収穫だったようです。

 どっこいを使った木一本の引き馬実習から、一頭でのロングレーン(馬車を引く場合に
使うような長い手綱)、さらにスノーチューブをどっこいに牽引させてロングレーンで馬
車?そり?のように自分が乗って馬に引いてもらってコースを走る。最終2頭立てのう
え手綱をロングレーンまでを一気に体験しました。

 馬の調教や、操作は簡単でないことを聞いていましたから、講師から特にこの馬種、
この系統が育種によって、おとなしいうえに指示をよく聞いてくれるよう育てられてい
るという説明が、とても納得できましたし、感動しました。

2日目 2月13日(金)演習林にて 間伐木の搬出の様子を見学。さらに林内傾斜地
において引馬の実習。馬の下側に立たないように引綱をもって移動することなど、作業
を安全にすすめるための注意点を口を酸っぱくして指導してくださった。

この間伐木の搬出が現場で馬搬を見る生まれて初めての体験でしたが、まず第一
作業道も付けずに、人が歩くのと同じに、馬が移動する様は機動力の高さが圧倒的に
違いました。

 林業ではミニバックホーを重宝して使う場面でも、馬の方が圧倒的に林地での移動
に有利でした。このことは特筆といっても良いでしょう。さらには馬のけん引力も
想像を超えるレベルで、林業の現場はあまり知りませんが、現代でも馬搬の機動力は
機械力に勝る部分もあるのではないかとまで感じました。 

 岩間さんとの語らいの場では、馬搬技術を引き継ぎたいと技術指導をしていること、
馬育成に力を注いでいること、人材育成のため若い世代に向けた研修の話や、馬耕で
田んぼを耕したり、代掻きをして馬耕米の生産など、そして、馬を活用する場面をもっと
多種多様に広げることで、人と馬のつながり、馬が日常にいる空間をつくりたいという
大変面白いお話を聞けました。

これらのお話の一端は、株式会社三馬力社のfacebookや岩間敬さん/馬搬などの検索語
で調べてもらうと詳しい情報が載っていますので興味のある方はぜひ。

途中、波なり学校、森のようちえんの幼児、morinosに遊びにきた子どもたちと馬との
交流の場面にも遭遇し、馬と人とのふれあいの場面を体感することができました。

4日目 2月15日(日)馬搬にて材木の搬出、この日は樹高25mのヒノキを演習林で
新津先生指導のもと、三つ緒切りにて伐採のうえ、2頭立ての馬搬による材木の搬出と
人力・馬力だけの実習となりました。

チェーンソーと重機・架線が当たり前になっている私たちにとっては、想像の世界だけ
だったものを目の当たりにして、その方法しかないと思っている概念ををひっくり返され
た一日でした。

岩手へ戻る岩間さんと2頭の帰り支度は、夕日と相まって寂しいものでしたが、お互
いに再会を約束しました。次にお会いできる際には、馬搬馬耕まではいかないまでも、
牛や馬のいる自分のフィールドを報告したいと思いました。

 この講義を受講して、馬搬の文化、馬と人間との関係性などを学ぶつもりでしたが
予定を遥かに超えて、感じたり、考えたりする4日間となりました。

一番大きな気付きは、私たちは「今の方法しかない」と考えがちですが「それ以外の
法(復古も含む)」がはるかに合理的である場合もあることだ。
林内の木材の移動は、作業道や索道などの設置大型機械での方法しかないと考えていま
したが、これだと林道や作業道が土砂崩落のきっかけになるといった課題があります。

 馬搬は作業道も無しに、重機のような巨大な力とまではいきいませんが、「必要十分
な静かな力」での木材搬出の姿を見せてくれました。私たちの今の生活が「それ以外の
方法」で代替できる可能性を見せてくれたと感じました。

NbS(ネーチャー ベースド ソリューション:自然に立脚した社会基盤の構築)に
対して、森林文化アカデミーは文化として具体を提案することを求められると考えています。

「必要十分な静かな力」は私に見通しを与えたと今感じています。

 馬搬の実習は、牛は得意だけど馬はちょっと苦手と思っていた私に「優しい子で良か
ったですね。きっと上手くいくと思います。」の言葉どおり、てらゆう号ときりしま号
2頭が馬が好きになる機会を与えてくれましたし、馬と意思が通じるという体験ができ
ました。

 

また産業文化として、木材搬出での馬搬の機動力に、実用的な可能性を見た体験は、
私の専門である田畑耕起においても、もしかしたら馬耕がトラクタと比肩することがあ
るかもしれないと考えさせるものでした。

 森林文化アカデミーの一年目が終ろうとしています。馬搬馬耕の講義のように、たく
さん宝物のような現場現物との体験が輝いています。外部講師の先生をはじめとして、
このような貴重な体験を与えてくださった皆さんに感謝します。

 森林環境教育専攻1年 丹羽 健一