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2024年02月15日(木)

馬搬・馬耕体験実習1&2 

 森林文化アカデミーでは、林業を教える学校としては全国でも珍しく(この規模でやっているのは、おそらく日本で唯一。ドイツの林業大学では普通にあるそうですが。。)馬で木を山から運び出す「馬搬」や、馬の力で田畑を耕す「馬耕」の実践授業を、5日間の集中実習として展開しています。これぞ「森林文化(里山文化)」ともいえる、暮らしのような実習の日々です。

 正直、馬はこれからの時代に必要な「古くて新しい」存在だと改めて感じています。林業の面からしても、道がつけにくく規模も小さい山で、持続可能に林業をしていくには、馬搬ほど優れたものはありません。時間もコストもほとんどかからない上、山へのインパクトも最小限で済みます。「本当に山の持続可能な利用のことを考えたら、最終的に馬になった」とは、岩手県遠野地域の山の古老たちから馬搬の技術を継承した今回の講師岩間さんの言葉。

 機械と異なり、化石燃料に頼らず、大量の二酸化炭素も排出せず、草だけをエネルギーに働く馬は、まさに「アニマル・カーボン・オフセット」ですね。そんな林業があっても良いかもしれませんね。

 そして単なる動力としてだけでなく、馬は、セラピーやレクリエーション、人材育成トレーニング(イギリスではリーダーシップ研修で使われている)、子どもの免疫力増進、情操教育、景観保持、そして循環(下草を食べてくれる上に、馬糞は堆肥になり、食料となる)を伝えるもの、人をつなぐもの、などSDG’sのゴールや、森林サービス産業の「観光・健康・教育」のテーマを、いとも簡単にクリアできてしまうような、「1頭で何倍も美味しい」マルチな生き物なんです。

 

 講師の岩間さんと倉本さんは、馬で耕した田んぼで獲れたお米や、馬で搬出した森の材を、高級日本酒や、馬搬材としてストーリーをつけることで付加価値をつけ、高値で取引しています。森林空間、里山空間を活用したビジネスとしての可能性も非常に大きいのです。

 そんな馬搬馬耕の授業を、先月1月31日〜2月4日の間に実施しました。期間中は、履修生だけでなく、他専攻の学生や部署で働く方々、近所の方、聞きつけた方、など多くの人が馬の働く姿を見に集まりました。集客力も半端ないですね。どうやら現代人は、馬を始め大型家畜の存在を身近に必要としているようです。

  そんな5日間の濃密な実習の様子を、学生の葭田さんが書いてくれたので以下に紹介します。

なんちゃって先生 萩原ナバ裕作より

 

<以下、学生の葭田くんのレポート>

1日目

初日は、引き馬を教わりました。

引き馬をする上で大事なことは、自分が馬をリードすること。迷いの気持ち持つと、馬もそれを感じてついてこなくなってしまいます。なので、引き馬をする人は、自分の芯を持つことが大切です。そうすることで、端材の山も、丸太も飛び越えられます。

長野から来てくれた牛のフユちゃんも、引き牛で歩く練習をしました。

2日目

ロングレーンを使った馬の操作の練習をしました。

実際に行う前に、馬の感覚を掴むため、僕たち学生も馬になりきり、人に操作される感覚を体感しました。目を瞑り、ハミを引かれる感覚を頼りに歩いていきます。やってみて感じたことは、強すぎず、弱すぎない力加減が大切だと分かりました。

3日目

演習林に入り、斜面を引き馬で進む練習をしました。

そして、実際に丸太を運ぶ様子を見せていただきました。メキメキと木が倒れていく様子と、それを引いていく馬の姿はとても迫力がありました。

4日目

田んぼに行き、馬鍬を使って馬耕をしました。ものすごいスピードで耕して行くので、あっという間に一往復が終わります。

作業をしていると、近くを通った数台の車が止まり、馬の様子を眺めていました。話を伺うと、「俺も昔親父と馬耕をやっていた」と言う人や、「馬がこんなとこにいるのでびっくりしたんです。」と様子を眺める親子など、たくさんの人が眺めに来ていました。

最終日

自分で、馬を操作し山から丸太を下ろして行きます。丸太に巻き込まれないように気をつけながら、全員が作業を終えることができました。

 

まとめ

馬で、耕せて、木を運べて、遊べて、人を集めて、人として大切なことを学べて、馬がいればできないことはないなと思いました。

僕自身も、芯を持ち行動することの大切さ、自分から話しかけることの勇気を馬から学びました。

岩間さん、倉本さん、貴重な体験をありがとうございました!

テラ、シバ5日間ありがとね。

 

森林環境教育専攻1年 

葭田 周作