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2017年02月03日(金)

木の仕事にデジタルを取り入れてみる。「デジタルファブリケーションの導入」という授業を開催しました。

木工を仕事とするうえで、近年のデジタルによるものづくりの技術の発展は気になるところです。私(教員:和田)はここ数年、3Dプリンター、レーザーカッター、CNCといったいわゆるデジタルファブリケーションについて、岐阜県大垣市にある情報科学芸術大学院大学(通称:IAMAS)のプロジェクトにかかわらせてもらったりしながら、情報収集を行ってきました。

デジタルファブリケーションと木工の可能性


大きな工場では産業用のレーザーカッターやNCなどの機械は数十年前から導入されています。それらの技術・機械が一般の人々にも広がりを見せてきた今、もっぱらの興味は、「ものをつくるという行為が、デジタルファブリケーションの普及で一般的にさらに広がるのか」「木工にどのように生かせるのか」といったところです。

さらに、デジタルファブリケーションというと、合板やMDFをつかってものをつくるイメージが強いですが、私たちは本物の木を使います。均一素材でない無垢の木を使う場合、「どのようなことを考慮しないといけないのか」「木という素材の新しい活用の方法はないか」。そのあたりのことを学生らと一緒に考えていこう、ということで今回初めて「デジタルファブリケーションの導入」という授業を2日間かけて開催しました。

IAMAS 小林教授からデジタルファブリケーションの世界を紹介してもらいました。


1月の半ば、場所は情報科学芸術大学院大学(IAMAS)のイノベーション工房をお借りし、国内外のデジタルファブリケーションについて詳しく、専門書も執筆しておられる小林茂教授と各機械の特徴を把握し的確なオペレーションに導いてくれるスタッフの高見さんの協力をいただき、今回の授業が実現しました。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

初日は、まず小林教授からデジタルファブリケーションがどのように広がってきたのか、そして現在どのようなことが行われているのか、といった概要を国内外の事例を併せてレクチャーいただきました。普段森林や木材に向かっている学生たちからすると、このようなデジタルやハイテクな世界はとっつきにくいところかもしれませんが、あえて普段見ない世界を意識することで、新しい気づきが出てくるかもしれません。

2日間の授業で盛り込まれたたくさんの要素


その後、高見さんよりこの授業で実施する内容を説明してもらいます。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

今回、授業でフォーカスしたのは、レーザーカッターで、中でもカーフベンディングという素材に細かい切り込みを入れて曲げる技術です。

2日間(実際には1日半)の授業で実施する内容としては、以下のようなものです。

1.レーザーカッターで使用できるデータの作成方法を学ぶ
2.レーザーカッターの操作方法を学ぶ
チームに分かれ、
3.樹種ごとにカーフベンディングのパターンごとにデータを作成し、加工する
4.2日目に制作するモノを決め、材料・データを準備する
5.実際に作ってみる

2日間でやるには、なかなかハードな内容だったかもしれませんが、学生たちは真剣に取り組んでくれました。

まずは機械が動くところを見学


データ作成などを始める前に、まずは、機械がどのように動くのかを見てもらいました。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー
レーザーカッターでの様子。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー
実際授業では使いませんでしたが、ShopbotというCNCをつかった加工も見せてもらいました。同じカーフベンディングをやってもレーザーカッターとCNCでは仕上がりが違うそうです。

次にイラストレーターによるデータ作成


デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

レーザーカッターで加工するには、イラストレーターが必要になります(その他のアプリケーションでも作成できますが、業界の標準的な方法として紹介)。事前にイラストレーターを持っていて使える人を中心にチームを分けていたので、その人たちを中心に作業を進めてもらいました。

樹種ごとにさまざまなパターンでカーフベンディングの加工をしてみる


デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

カーフベンディングはMDFでは多くの作例があり、3D形状にうねうねさせたりしたものもある中で、これらが無垢の板でも実現できると作るものに広がりがあるかもしれません。このカーフベンディングは切り込みのピッチや長さなどで曲がり具合に違いが出てきます。

今回、ヒノキ、ホオノキ、ケヤキ、ヤマザクラの4つの樹種でやってみました。針葉樹と広葉樹の違い、散孔材と環孔材の違い、比重の小さいものと大きいものとの違いを比較するためこの4樹種を選定しています。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

実際、チームごとにそれぞれの樹種を担当してもらい、データ作成と加工を進めてもらいました。樹種によって、加工スピードやレーザーのパワーを調整しなければきれいにできません。ヒノキやホオではきれいに加工できたのに、逆にケヤキは堅くてパワーを強くスピードを遅くしなければきれいに切り抜くことができませんでした。そして、曲がり方も樹種によって違いました。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

レーザーの加工サンプルも副産物として生まれました。こちらは、授業準備のために、さまざまな樹種でテスト加工を高見さんにやっていただいたもの。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

こちらは、カーフベンディングで余る部分にデータを配置して、どのパワーでどのスピードでやると結果どうなるか、というサンプルを作成しました。

チームで作るものを決めて、データ作成と材料準備をして、加工する


1日目の終わりには、チームごとに2日目でつくるものを話し合って決めてもらいます。材料は無垢の木材という縛りがあるので、材料準備は森林文化アカデミーに戻らないとできません。そのため、とても慌ただしくなりました。IAMASとアカデミーは車で1時間。夕方IAMASでの授業が終わったら、アカデミーに戻って材料の木取りをしなければいけません。

それでも各人が協力し合い、データ作成と材料準備を進めてくれたおかげで、2日目終了時には全チームが終えることができました。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

チーム1
カーフベンディングをふんだんに取り入れた、青海波紋(または俵型)積木。木を曲げながら俵を積み上げていきます。ヤマザクラで作ってみたところ割れてしまいましたが、ミズメザクラにしたところうまくいきました。このあたりの粘りはミズメのほうが上のようです。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

チーム2
ノートカバーとメモパット台。背の部分はカーフベンディングで曲がるようにしています。ミズメザクラの木目がとてもいい感じでした。これはネットで公開されているデータを使って作成しました。これはキハダでもチャレンジしましたが、割れてしまいました。無垢材でカーフベンディングをやる場合は、割れにくい粘りのある樹種の選定が重要そうです。逆に栗のような割裂性が強い樹種はパキパキに割れます。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

チーム3
在席・不在を示すやつ。こういったものもレーザーカッターならさくさくっとできます。台座はMDFを使っています。視認性を求めて角度の調整も行いました。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

チーム4
フラードーム。建築のバックグラウンドがある学生が入学時から作ってみたいといっていたフラードームがついにデジタルファブリケーションで実現しました。一枚一枚すべてサイズ形状が違うため、デジタルファブリケーションだからこそできる形状です。ホオノキの木目がつながっているところも重要なポイントです。

これは幅広の薄いホオノキから作成しましたが、木どりをした後に反ってしまいました。その反りを矯正するための冶具も即席で作成しました。この辺りは木工の知識があると対応できるようになります。

岐阜時計もついに完成


さて、おぼえていらっしゃいますでしょうか?

9月に実施した「電動工具(成形・加工)」という授業で作っていた岐阜時計。この時計ですが、文字はレーザーでいれようということになっていました。そして、今回この授業の中で、ついにその文字入れをすることができました。

デジタルファブリケーション IAMAS 木工 森林文化アカデミー

単なる時刻を示す数字ではなく、岐阜県の形に合わせて東西南北を入れてみました。

デジタルファブリケーションで何ができるのか


なじみがなければそれまでですが、一度経験すると、その特徴を感じることができます。

授業後の学生からのコメントでは、デジタルファブリケーションでは、頭の中にあるイメージをすぐに実際のものとして実現できる、といった意見が多くでました。これままさしく木工作業にはないデジタルファブリケーションの特徴です。データさえ用意できれば機械にセットして加工ができるわけです。

またカーフベンディングを今回取り入れましたが、板状のものから立体物ができるというところが印象的だったという声も。木という素材を自由に曲げることができるというのは、とても衝撃的です。

一方で、無垢材を使うむずかしさもあります。

MDFなら表裏、上下左右はバラバラでも見た目に影響しませんが、無垢材は木目の向きがあり、表裏も違います。そのためどのパーツをどの面にどの向きで加工するのか、事前に考えておかないといざ組み立てたら木目がバラバラで見た目が悪くなってしまうということが起きます。

また部位によっては加工が思うようにいかなかった事例もあります。フラードームではホオノキの髄の部分が含まれていましたが、そこは加工中に燃えてしまい、黒くなってしまったようです。またケヤキの加工では堅い部位ではパワーを強め、スピードを弱くしたおかげで切り抜くことができましたが、逆に焦げが広がりやすくなります。

こういった事例から木工に活かせるレーザーの使い方としてノウハウを積み上げて、新しい表現が生まれていくことを期待します。現に1年生は商品化という授業の中でさっそくレーザーカッターを取り入れた商品開発をしています。積極的に取り入れることで新しいものが見えてくるんじゃないかなと思います。

木工教員:和田


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