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2022年01月14日(金)

森林文化特別講座「見つけた!“新”林業〜株式会社柳沢林業」原 薫さん

株式会社柳沢林業は、長野県松本市にある少し変わった林業会社です。山の管理や特殊伐採をする傍らで、馬耕馬搬、果樹園&畑づくり、木のマルシェ、キャンプ場、森のようちえんのサポートなど、一見すると林業とは関係なさそうな事業を展開し続けています。
「信州・松本の豊かな風景をつくる」をモットーに、熱い思いと独創的な発想、そして幅広い視野で思わず唸ってしまうような「新しい」林業(=新林業)を実践し続け、その未来を育む持続可能な地域デザイン力が評価され「2021年度グッドデザイン賞(公益財団法人日本デザイン振興会」を受賞しました。今回は、代表取締役である原薫さんにお話しを伺いました。

原さんは「林業会社として見ると色々やっていると見えるけど、私の中では林業というより『山』なんです。『山は豊かだ』というところから始まり、『山と人を活かすこと』をしている。山と人とが生かし生かされる豊かなくらし。たまたま立ち位置が林業会社ってだけ。」と言います。

講座の前半では、独自の経営哲学の素地を築いた学生時代からの体験を語っていただきました。学生時代の原さんは、環境問題に関心を持ったものの、漠然とした環境問題に対し、何をどうしたらよいかわからないと感じていたそうです。
あるとき、木挽き職人を聞き語りした一冊の本「木を読む」に出会ったことで、私たちも自然の一部であり、生かしているようで生かされているという、日本の文化・考え方に気づいたそうです。一方で、そうした考えが現代社会では忘れ去れているとも感じたそうです。
そして、なにより山に関わる職人の魅力に惹かれ、林業にハマっていった原さん。そこでは暮らしそのものが山とつながっており、山の豊かさを実感したそうです。


後半では原さんの独自の経営哲学にも触れました。原さんは「お金がないから社員を雇えない」ではなく、「必要だから雇用する。そうすれば必要な売り上げが与えられる」と考え実践してきました。また社員を会社の仕組みに当てはめるのではなく、「彼らが伸びるためにはどんな仕事があったらよいか。」を考え、一人ひとりの個性に合わせて組織を広げて運営しているそうです。ある社員は、会社で馬を飼うことで飛躍的な成長を経験したそうです。また「いつかキャンプ場をやりたい」という社員の夢に応え、キャンプ場の管理を始めました。
とてもユニークな運営ですが、個々のモチベーションを高め、能力を引き出すためには、理にかなっているように感じました。「社員は、林業以外にも様々な能力・興味を持っており、その能力・興味を木や山を活かすことに繋げられれば、ほかの会社と競う必要もない。」という考えも印象的でした。

さらに自然と調和する働き方についてもお話いただきました。例えば、季節に合わせた林業や働き方を考え、冬に伐採を行い、夏にはキャンプ場や農業など行い、自然の摂理に合った仕事を目指しておられました。
また、引退馬の「ヤマト」と出会い、かつて農林業を支えた技術としての「馬搬・馬耕」の可能性に目をつけ会社にヤマトを招いたことで、想像もしなかった馬の力を感じたそうです。前述の社員の成長もその一つですが、ヤマトがいることで、誰も来なかった荒地に、地域の人が自然と集まり交流が生まれ、自然と人、人と人を繋がっていき、様々な相乗効果が生まれたそうです。

今後の展開について、「木を伐ることは生かすこと」、山はすべて資源であり、それを活かした地域づくりをしたいと語る原さん。木で遊ぶ、森のようちえん、野外で算数、
子どもの居場所でもあり、高齢者の居場所でもある。みんながいていい場所。途切れてしまった関係性をつなぎ直したい。原さんからあふれる熱意に、講座参加者たちが包まれ、熱を帯びていくのを感じるようなそんな講義となりました。

原さん、ありがとうございました。

 

柳沢林業をもっと知りたい人はこちら

森林環境教育 講師
谷口吾郎