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2018年07月24日(火)

7/27〜29弁当箱販売!『長良川(ながら)んちぼっくす』ができるまで⑤

 岐阜県美濃市で生活を始めて1年余り。日本のいたるところ、人は必ず川が流れているところにすんでいるが、ここ美濃市ではさらに山が近いのである。当然人が暮らしている土地もあちらこちらに起伏があり、斜面も多い。そこに田畑が開かれ、家が建てられている。それらの多くは「擁壁」によって支えられている。その擁壁は最近でこそコンクリート製のものが当たり目になってきたが、この長良川流域には多くの擁壁が川原で採取された直径2〜30cmの長く、丸みをおびた石を積んでつくられているのである。それも、大きさのそろった石を右向き→左向き→右向き・・・と交互に45°傾けながら丁寧に詰まれている。

 私がかつて住んでいた大阪ではこういった石積みの擁壁は見たことがなかったので、はじめは非常にものめずらしく感じたが、流れの速い長良川が作り出す大きな丸い石と人々が起伏のある土地での生活が作り出したものであることが徐々に理解でき始めた。

 私たち森林文化アカデミーの木工専攻の学生に、商品化の授業の中で川合優先生より「弁当箱」というテーマが与えられ、商品として販売していただく「長良川てしごと町家CASA」の河口さんより「長良川にちなんだものを」という話があった。そのとき、この長良川流域の石積みの擁壁があたまに浮かんだ。このかたちを弁当箱の中に取り入れることを考えるなかで、断面が6.7ミリ×14ミリの杉の角材を擁壁を積み上げるようにして組むことを思いついた。そして、できあがったものを見ると、杉の年輪があちらこちらに複雑に動き回っているようすが、まるで長良川の川面のように見えた。ここから、この弁当箱に「Kawamo」という名前をつけることとした。

 なんともふしぎな気がした。もともとは山で生きていた木が、長良川をつたって、弁当箱の姿になって、いま、岐阜市川原町の「CASA」の店頭に並んでいる。この弁当箱がここを訪れた誰かによって買っていかれたとき、次はどこへたどり着くのであろうか?私と長良川流域の石積みの擁壁との出会いがこの弁当箱「Kawamo」を生み出したように、つぎは「Kawamo」を手にしてくれた方によって新しいドラマが生み出されていくことを楽しみにしたいと思う。

宮崎 晋
(クリエーター科2年)

 

「長良川(ながら)んちぼっくす」展
2018年7月27日(金)〜29日(日)
11:00〜18:00
長良川てしごと町家CASA
500-8009 岐阜県岐阜市湊町29