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2018年11月19日(月)

アカデミーを経た先に~森と木の仕事を知るモニターツアー報告~

アカデミーでの新企画

翔楓祭・オープンキャンパス・産業祭と大賑わいの美濃市で

【森と木の仕事を知るモニターツアー】を開催しました!

どんなツアーかというと、森林文化アカデミーを卒業したらどんな仕事があるのだろう?森や木に関わる仕事って実際どんな仕事なの?という疑問に応えるべく、美濃市内で活躍するアカデミーのOB・OGの職場を訪問しリアルな話を聞かせてもらおう!という内容です。今回は市内で起業した8名を紹介させていただきました。

短い広報期間にも関わらず、東は埼玉から西は福岡まで県外からの参加者も多く、申込数は定員を超えるとても賑やかなイベントになりました。

 

※盛りだくさんツアーなので長文です

どうぞお付き合いください

 

 

 

最初に訪れたのは、県外からの移住者でもある「きのこま」大村裕茂さんの工房です

グリーンウッドワークの足踏みろくろや、機械ろくろ、素材や製品などを見せていただく中で、素材へのこだわりや、道具の使い分け方、収入に対してのリアルな状況など様々なことを語ってくれました。アカデミーで得たのは技術だけではなく、人や地域など様々なつながりだったと言います。

大村さん「一つの職に没頭せず、合わせ技で暮らしていけば良い。しかし、後世へ引き継ぐためには稼ぐことも必要になる。」

続いてお話を伺ったのは県内出身の「AC FOREST」澤田良二さんです。

全くの異業種で働いていた澤田さんは、アカデミーを経て地域の森林組合で10年間勤めてから起業しています。地域の資源を活用するには、地元の人との信頼関係を築く大切さも教えてくれました。そして森への熱い思いを参加者へ向けて語ってくれました。

澤田さん「ACに込めた5つのメッセージの1つ。森にAccessすることで森の価値を高めます。」

次に伺ったのは

「森の機械株式会社」の広瀬幸泰さんの所有する森林。

ここでは開発した商品(木材を運搬する為の搬器)の実演版モデルルーム的な活用をしています。広瀬さんも全く別の業界からアカデミーへ入学し、現在は在学中から関心のあった林業用の機械器具の開発を行っています。広瀬さんの発想と視点は、これからの林業に新しい風を吹かせるかもしれません。

広瀬さん「林業の機械や器具はまだまだ改良の余地が多くあります。僕は道具を作るのが好きなんです」

林業関連のOBを2件続けて伺いましたが、今まで持っていた「林業」というイメージが大きく変わったと多くの参加者が口にしていました。

お昼過ぎに美濃市駅前の灯屋(あかりや)に到着。アカデミー在学中から「子育てカフェ」の構想を温め続け、古民家の取得と改修、子育て世代のニーズ調査、そしてオリジナルメニューの開発を進めてきた西潟洋一郎さんが2018年3月に開店しました。

 

店舗改修には一般社団法人インクの中島昭之さん(木造建築講座卒業生)が建築診断や設計施工に腕を振るいました。灯屋でランチを待つ間インクの事業内容(古民家診断、改修設計、空き家斡旋や移住サポートなど)をご紹介いただきましたが、それらを包含するのが「暮らしを向上させたい人のお手伝い」というコンセプトです。これからますます求められる仕事ではないでしょうか。

 

西潟さんと奥様がカレーランチを提供し終えた後で、「子育てカフェ」の開業に至る経過もお聞きしました。

前職では海外出張が多く子どもと一緒に過ごす時間が少なかったそうですが、アカデミーに入学して起業を考えた始めた時に、家族と共に過ごす時間を持てるワークスタイルを優先に考え、同じ願いを持つ保育園仲間のお母さん達にもカフェのあり方やメニューについて意見を貰いながら準備を進めました。2階部分にある子どものプレイルームには、アカデミーで木工を学んだ卒業生の遊具も置かれています。

 

午後は、美濃市うだつの町並みの中に拠点を構える3人を訪ねて歩きました。この日6人目は、NPO法人グリーンウッドワーク協会・竹部会に所属する安藤竹細工店の安藤千寿香さん

アカデミーを出た後に一旦は他の仕事に就きましたが、「ものづくり」の仕事に惹かれてグリーンウッドワーク協会の中で竹細工の職人として腕を磨き、岐阜県の伝統文化である長良川鵜飼の鵜匠が使う「鵜籠」の製造技術を受け継いでいます。最近では、初心者にものづくりの楽しさを伝えるための竹細工講座の講師にも引っ張りだこです。

 

7人目は、うだつの町並みの空き店舗に拠点を構える「MOTTAINAI工房」を運営するNPO musubiの吉田理恵さん(ものづくり講座卒業生)です。

MOTTAINAI工房は「木育」の拠点としてイタリアの保育活動として世界的に有名なレッジョエミリアにヒントを得て、自然物や木の廃材を使ったアート作品を作る工房です。自らの子育て経験や中学校教員の職歴をふまえて、子ども達の居場所となるような木工房を創ろうとしています。2018年3月に卒業して約半年ですから課題は多いものの、アカデミーの教員、美濃市の教育委員会や社会福祉協議会など「子どもを中心に据えたまちづくり」を進める美濃市の新しい核となっています。

 

8人目は、AC CRAFT代表の石井学さん(ものづくり講座の1期生)です。

業後すぐに町並みへ木工房を構え、すでに15期の営業を続けています。自らは注文家具の製作を中心としながら、ギャラリーの中にはアカデミー後輩の木工作家が作った製品を展示販売するなど、美濃市の木工ショーケースの役割を果たすと共に「木のある暮らし」の提案スペースにもなっています。アカデミー同期の奥様も一緒に切り盛りしています。こういう着実な歩みは後輩の励みになりますね。

 

最後はアカデミーに戻り、今回の企画のふりかえりとアンケートへの記入をしてもらいます。

参加者からのコメントで多かったのは、①専攻分野と年度を超えて卒業生が仕事で繋がっていること ②森林整備・木工・古民家活用などを通じて森や暮らしの再生に向けたvisionを語れることに驚いたという声でした。まさに森林文化アカデミーの特徴と目指す姿を的確にとらえて頂いていて嬉しかったです。ツアーに対する満足度は平均92%。少しのマイナス要因は「件数が多すぎて後半疲れてしまった」という点でした。次回ツアーの改善に反映させたいと思います。

今回は参加者に入学予定者も居たので、入学した後のイメージがより深まってくれたら幸いです。

 

ご協力いただいたアカデミーOB/OGの皆さん、東京でぎふ移住・交流センター相談員をされている岩瀬千絵さん、岐阜県庁の移住定住係の皆さま、ありがとうございましいた。

担当:森林環境教育専攻の教員チーム(嵯峨、柳沢、萩原、新津)