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2017年11月07日(火)

日独林業シンポジウム2017

 昨年のドイツでの林業シンポジウムに引き続き、豊かな森林と清流を擁する岐阜で、「100年先の森林づくりを見据えた人材育成」をテーマに第二回の日独林業シンポジウムを開催しました。

 神門岐阜県副知事、牧元林野庁次長、ドイツ連邦共和国大使館のホルツハウザー参事官によるご挨拶で始まりました。

 

 

特別講演は宮大工の小川三夫さんによる『木のいのち 木のこころ』です。小川さんは法隆寺の宮大工、西岡常一の愛弟子で、奈良県法輪寺の三重搭再建や薬師寺復興工事などに携わると同時に、宮大工を目指す若者の育成にも力を注いでいます。

 

 

 小川さんは、「山の神の日」である12月12日には、神様が山の木の本数を数えるので入山しなかったこと。山の神に畏敬の念と感謝を持っていたことについての話から始まり、宮大工が利用する木材を5年ほど水蓄乾燥すること。木の命が建物の命となること。宮大工が使う道具は自分にあった切れる道具であること、切れる刃物は嘘をつかないことなどを話されました。

 また復興した薬師寺西搭の柱を見ると、全体が真っ直ぐに見えるように、わざと21mm内側に倒してある先人の知恵に驚かされたことなども話されました。そして木材は生きていたとおりに柱として使うため、枝の多い南側が節が多くても正面に利用していたことなども話されました。

 

 話の中で、「感じとれるものが知恵で、伝えようとして伝わるものは知識である。知識以上の建物は造れないが、知恵は限りなく湧き出てくる」とも話されました。

 

 最後に現在利用されているカンナと槍ガンナの違いを実演されて、先人の知識と知恵、技術伝承の難しさにもふれられました。

 

 

 小川さんの特別講演終了後、ミス日本みどりの女神である野中葵さんと、バーデンヴュルテンベルグ州の森の女神であるラモーナ・ラウフさんが、それぞれ林業について意見を述べてくれました。

 

 

 昼食と昼休み時間には、国内の林業・木材産業関連企業のブースやドイツの林業企業のブースが活況でした。

 

 岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアムも協力して開発しているチェンソーパンツメーカーPSS社のブースも多くの人が興味津々、質問攻めになっていました。

 

 

 午後からは、岐阜県立森林文化アカデミーの涌井学長、そしてドイツのロッテンブルク林業大学のカイザー学長が主催者挨拶をされました。

 

 涌井学長は、2015年の国連持続可能な開発サミットにおいて「持続可能な開発目標(SDGs)」として全ての人に対する質の高い教育の提供や、生物多様性損失の阻止、森林の持続可能な管理などの目標が、150ヶ国の世界のリーダーによって採択されたことにもふれられ、今回のシンポジウムが目標達成に貢献できることを願うとも、発言されました。

 

 

 学術講演は、「100年先を見据えた人材育成」を主題に、林野庁森林技術総合研修所の赤堀所長による『日本の森林・林業政策と求められる人材育成について』、ロッテンブルク林業大学のカイザー学長による『ドイツにおける人材育成の成果と今後の展望』、岩手大学の澤口教授による『林業工学教育・研究者の視点からの人材育成』、鹿児島大学の寺岡教授による『九州における林業・木材産業の展望と技術者養成』について各30分の発表がありました。

 

 

 シンポジウム会場はドイツからの参加者を含め350人を越える大盛況で、スタッフの一部は立ち見していました。

 

 

 さて、続いて『日独林業トークセッション』ここでは「林業・木材産業を担う人材に求める姿と我々の使命」と題して、涌井学長、カイザー学長に加えて、飛騨産業の岡田賛三社長の3人のトークセッション。

 

 ここで岡田社長は、飛騨産業の経営改善を図るため、リストラは一切行わず、トヨタ生産方式を導入して徹底的に製造工程を見直しを実施し、同時に県内の豊富な資源であるスギを圧縮した材料に曲げ木加工を組み合わせた額も生産され、2016年に三重県で開催されたG7伊勢志摩サミットでも利用されました。

 

 また飛騨産業では2014年に「日だ職人学舎」を設立し、若手職人の育成にも努めておられます。

 

 

 トークセッションでは最初に涌井学長が4枚のスライドで現在の地球環境や人材育成の必要性、これから求められることなどについてのプロローグを紹介をされました。

 

 日本には「常若」という言葉がある意味や伊勢神宮などで20年に一度御遷宮されること。揖斐川町で昭和天皇が植樹活動され、今上天皇が育樹活動され、2年前には第9回全国育樹祭で皇太子殿下が間伐されたこと。

 

 また深刻な地球環境の危機、温暖化と年間4万種に及ぶ生物種の絶滅。地球表面の生命圏は垂直に30kmだが、命を育むのは僅か3km、これをスイカに例えると表面に巻き付けたラップにしか匹敵しない。

 

 森林空間は単なる林業空間ではない。グリーンインフラとしての資本財ととらえ、その中で木材などの経済財を得ることの重要性にもふれられました。

 

 カイザー学長は森林の多面的効用を広く社会にアピールすべきであるとも発言されました。

 

 

 人材育成について岡田社長は、秋山木工さんが「一流の職人は一流の人格者でなければならず、人に感謝できる人間でなければならない。つまり親に感謝できる人間でなければならない」と教わった。そうした若手木工家を育てる必要があることが分かった。とお話しされました。

 

 他にも涌井学長は「伝統」はイノベーションを友達にして、更なる「伝統」となると述べられ、これにカイザー学長は「伝統の無いイノベーションは無い」とも答えられました。

 

 

 最後に、涌井学長からは、アメリカのグリーンアーミーの歌、Beautiful Americaの事例やSATOYAMAイニシタティブでの目標「2050年には自然と共生する社会をつくろう」、そしてインドでのCOP11で採択された「自然を守れば、自然が守ってくれる」という言葉も紹介され、環境・経済・社会の課題を統合的に解決し、低炭素・資源循環・自然共生社会が同時に 実現される地域づくり、国づくりを目指すことが、豊かな自然の懐で豊かな心と感性を涵養してきた先人たちの歴史と叡智であり、それこそが未来への課題解決への近道ではないかと発言されました。

 

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。