活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2017年12月15日(金)

ロッテンブルク大学サマーセミナー2017報告

 林業専攻の横井先生とエンジニア科1年生の日下部くんによるドイツのロッテンブルク大学サマーセミナー参加報告。今回は翔楓祭に報告した内容を更に充実させ、約2時間の報告会となりました。なお日下部くんにはドイツ研修経費の半分を学校から補助しています。

 

 

 最初は日下部くんが、様々見聞した中でも(1)化石燃料代替エネルギー、(2)森林レクリェーション、(3)木材生産と利用、の3項目に絞って発表しました。

 

 (1)化石燃料代替エネルギーについて見ると、ドイツでもソーラーパネルによる発電の固定買取り制度が終了して苦慮する中、森林内に高さ100mほどの風力発電も設置されている。風力発電の寿命も20~30年ほどであるため、チップ利用によるバイオマス発電が盛んになっている。見学した施設ではチップを3段階に分け、①クオリティ1(木部)は家庭用ボイラー、②クオリティ2(枝葉)は大型施設のボイラー用、③クオリティ3(剪定枝)は堆肥利用。

 

 

 (2)森林レクリェーションでは、森林情報コンピュータグラフィックで多様に見せたり、シュツッツガルトの市有林では、森林を狩猟用に提供していたり、狩猟用のハイシートが設置されていたりするばかりか、休日にはイベントがないのに多くの市民が森に来る。文化の違いというか、カルチャーショックだったようです他にもキャノピーウォークできる施設の紹介などもしてくれました。

 (3)木材生産と利用では、「ナラ材と樽生産」について報告。ドイツではブナ材よりも樽材用のナラが高価で販売される。見学したところは300年生のナラ林を誘導するため、ブナは伐採したり、巻枯らししたりする。樽材は全て割材で、歩留まりは4割、他の6割は薪などに利用されるほど効率が悪い。

 

 

 続いて、教員の横井先生、「ドイツの森林施業(造林/育林)」として報告。最初にドイツの森は樹種が単純でトウヒ・モミ・ブナ・そして少しのナラで天然更新による天然生林が多いこと。

 Plenterwald(単木択伐林施業)では、逆J字型の直径分布をすることが大事。目標の直径はDBH60cm。蓄積は最大で500m3/ha、5年ごとに50m3ずつ収穫する。ここで目標を80cmにすると下層木の成長が衰退することも分かっているそうです。

 

 択伐林の蓄積の推移をみると多くはha当たり300m3~400m3で推移している。択伐林は収穫し過ぎる(過伐)と林型が崩れて失敗する。

 

 

 Continuous Cover Forestry モノカルチャーからミクスカルチャーへ、単層林から多段林への思考。

 ナラのCrop Tree Management では直径70cm、胸高断面積合計で30m2、80本/haで、種子の豊凶に合わせて伐採して、ナラの天然更新を誘導している。ブナの天然更新は容易で、むしろブナを排除している。

 更新したナラは高密度で枝が枯れあがった樹高8mほどに成長した時点から、本格的な管理を開始。重要視するのは通直性・枝下高(枝に関係するもの)で、これは樽用材が最も高価で取引されるからです。

 間伐は伐採ではなく、巻枯らしです。・・・・理由は「光環境」です。

 

 

 ドイツではBark Beetle による被害も多く、これは単純林が多いから被害が拡大しやすいとも言える。加害昆虫は大型種と小型種の2種あり、両者によって被害が発生すると、被害防除のための皆伐を実施する。ドイツでは薬剤散布は禁止です。被害に遭わなければ94ユーロ/m3の材が、軽微被害で70ユーロ/m3に材価が下がる。被害地以外の伐採では樹冠部は林地に残してくるのがルールであるが、被害地ではすべてを搬出してチップ化し、冬の間に全てを焼却するそうです。

 

 さて、今回のドイツ報告会には学生、教職員以外にも、卒業生や一般の方も聴講に来てくださいました。ありがとう御座いました。

 

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。