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2016年06月18日(土)

ドイツ報告-04 省エネ住宅 Passive House(パッシブハウス)

 

20160606Passive House(001)

木材利用のメインとなる木造建築、その現場を訪問するためロッテンブルク大学のDr.ブルノッテ先生(上の写真で中央の背の高い方)のご案内で、難民用のPassive House(パッシブハウス)建設現場を訪問しました。

パッシブハウスはドイツパッシブハウス研究所が規定する性能認定基準をクリアした省エネルギー住宅のことで、建物の断熱性や気密性などの性能を上げれば、高性能の熱交換器の空調設備だけあれ過ごせる建物です。

パッシブハウスの認定を受ける条件として、㎡当たりのエネルギー量 kwh/㎡ 年間)が、①冷暖房負荷が各15kwh/㎡以下、②一次エネルギー消費量(家電も含む)120kwh/㎡以下、③気密性能として50㎩の加圧時の漏気回数0.6回以下となっています。

20160606Passive House(002)

この難民用住宅を建設しているのはSYNDIKATという住宅会社で、社長のエルベさん(上の写真で短パン、白Tシャツの方)に説明を受けました。

この会社が受ける新築の81%は木造住宅、会社は7人の現場監督、20人の作業員がおり、木造建築の多くはエレメント構法によっています。

 

100年前には石と木材を組み合わせた木組建築であったが、第二次世界大戦後は木組をやめてプレハブに移行した。しかし1970年以降、エネルギー問題から断熱を中心に検討されるようになり、35~40cm厚の壁がドイツでは標準となっており、断熱だけでなく、湿度を逃がすことも重要なため、透湿シートも利用されています。

20160606Passive House(003)

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木質の断熱材も厚いですが、壁全体が厚く、他にも石膏ボードも使用されています。

バーデン・ヴュルテンベルク州ではこうしたエレメント構法の住宅が増加しているが、昔ながらの石積み住宅も増加している。木造のうちエレメント構法住宅は41%に及んでいるそうです。

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作業7日目という現場では男性2人が石膏ボードを取り付けていました。

1階の天井と2階床は同じ素材で、なんと200mmの厚みのCLT(クロスラミネーテッドティンバー)を使用しているそうです。

また2階の屋根裏は断熱処理して、300mmの空気層などを設置してあるそうです。

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次に見学させていただいたのは、ブルノッテ先生のご自宅です。

下の写真の手前は、以前先生が住んでいた伝統的な木組建築のお宅、そして左奥に見えるのが、先生が建設されたパッシブハウス(実はパッシブハウス認定は受けてないそうですが、断熱性能はパッシブハウス同等のこだわり住宅です)。

といなみに、手前の住宅は難民の方に提供されているそうです。・・・素晴らしい。

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さっそく、新築のパッシブハウスお宅訪問。

外はダグラスファーの板ではられています。なんと板は無処理、つまり防腐剤も塗料も塗られていません。

このダグラスファーの内側には30mmの通風用中空層があり、60mmの木質断面、300mmのセルロース断熱材、そして合板と石膏ボードで壁面ができているそうです。

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ブルノッテ先生のお宅訪問で感じたのは、屋外は暑かったのに、室内は快適空間、しかもエアコンなし。

室内見学で感動していると、先生がこのお宅の建築風景をスライドで説明してくださいました。

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下の写真で2日目後半、エレメント構法であるため、建築が早いのです。

木材はふんだんに利用されています。この家は断熱、気密だけでなく、地震対策や避雷針対策も施されています。

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屋根材のエレメントの大きさ(厚み)に注目してください。屋根の厚みは400mm以上あります。

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わずか3日で大筋の建物が完成です。

このお宅は年間の冷暖房負荷が各15kwh/㎡以下(冷房はついていませんが)でパッシブハウスの要件を満たしています。

結露も問題となりますが、窓は三層構造で厚みが133mmもあり、外側はアルミ、室内側は木製、木製サッシなんです。

20160606Passive House(012)

 

家の年間熱利用は、ヒーターが2250kwh、温水が4259kwh、電気が950kwhとのこと。

先生のお宅の南面にはソーラーパネルが、家のガラス窓には外付けブラインドが設置されており、自動でブラインドが動きます。

日本では見られない外ブラインド、これだけでも導入したいものです。

P1120642

ブルノッテ先生は家の建設は一般の住宅に比べて8~10%高くなるが、40年以上使用することを考えれば、パッシブハウスに投資する価値が高いと言われました。

 

さて、この日の宿泊地ロッテンブルク市に戻って、街並みの建物を見ると歴史がすごい。日本のような消耗品扱いの建物ではない。

下の建物は1456年建設のもの、それが玄関わきに記されています。

20160606Passive House(013)1456年

すぐ近くにも、1674年建築の建物がありました。さすが城壁の町。

20160606Passive House(014)1674年

そもそも建築物自体が景観的にも優れ、多少の窮屈さよりも歴史の重みを重要視しているドイツの住宅。現在はパッシブハウスの建設が主流になってきたとはいえ、日本人も環境と建物自体に対する考えを学ぶべきだと感じました。

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。