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2019年01月15日(火)

獣害対策・狩猟訪独研修 学生報告その3「ドイツの狩猟と日本の狩猟」

8日間の研修のなかで、私はドイツの狩猟について多くのことを学びました。私が知りたかった点についても、現地をこの目で見たことによって答えを得ることができました。ここでは、ドイツの狩猟について学んだことを日本と比較しつつ書きます。

ドイツでは伝統的に罠猟を避け、法律で厳しく規制し、反面、銃器の所持は容易で銃猟が盛んに行われています。なぜ罠猟を規制してまで避ける必要があるのか、なぜ銃猟が盛んなのか、私は疑問に思っていました。今回の研修では実際に狩猟のフィールドを歩いたり、ハンターでもある現地の先生から講義を受けるなどして、それらの理由を知ることができました。

まず、罠猟を避ける理由についてです。現地の先生や学生いわく、獣を罠にかけ長時間の苦痛を与えることをドイツ人は非常に嫌います。これらの感情は環境保護や動物愛護を目的とする法律にも滲んでおり、ドイツでの罠猟を厳しく規制しています。もちろん科学的な理由もあり、特にストレスによって獣肉を劣化させてしまうことを懸念しているとのことでした。

一方で銃猟は国法でも州法でも広く認められており、趣味やステータスとしても行われていることから非常に盛んです。猟銃の種類も数も豊富で、許可を得るのも日本ほど手間はかかりません。また、銃猟のために施設や視界が管理された林(写真1)や、射撃精度の向上を図れる練習施設(写真2)も充実していました。ドイツの銃猟は、実績もノウハウも技術も高いレベルにあると感じました。

(写真1-1:ロッテンブルグ大学演習林内に多く設置されている射座。約5メートルの高さがある。)

 

(写真1-2:射座の前方の林が切り開かれているため、これらに登ったときの視界は非常に良好。)

 

(写真2-1:シューティングセンター「MSZU」。300メートルまでの各種射場が地下に設置されている。)

 

(写真2-2:施設には銃、狩猟関連商品の販売店も併設されている。)

 

(写真2-3:別館には巨大な室内クレー射撃場もある。)

 

とはいえ、罠猟も全く行われていないわけでは無いようです。研修先のロッテンブルグ大学では、敷地内に箱罠を設置して試験的に罠猟を行う予定とのことでした。日本のそれとは全く異なり、大型で重厚かつ機械的な箱罠でした(写真3)。しかし、あの造りでは獲物に警戒されてしまい、あまり成果を上げられるとは思えませんでした。

また前述のようにドイツでは動物保護の観点から法律が厳しいため、使用許可を得るだけで大変な時間と手間を要し、日常的な使用すらままならないとのことでした。そのため使用にも製造にも情報や経験が少なく、さらには法律や国民感情に縛られるドイツで罠猟が定着するのは、まだまだ先になると考えられます。

(写真3:ロッテンブルグ大学敷地内の箱罠。自動で内部にエサを撒く装置付き。金属製で大型のため非常に重たく、容易には移動させられない。)

 

ドイツは日本と異なり地形がなだらかで、林内でも見通しが利くところが多いため(写真4)、銃猟のほうが効率は良いと思われます。そもそも罠とは獣の通り道や、獣が局所的に集まりうる場所に設置することにより真価を発揮するものです。獣害対策の面から考えた場合でも、農地や人工林が広大であるドイツでは、罠設置の適所を絞り込むことが難しいような気がしました。よってドイツでは、罠猟よりも銃猟のほうが適していると考えます。

しかし、だからといって罠猟をやらなくてもいいとは、私は思いません。手段が多いのは良いことです。ロッテンブルグ大学がドイツでの罠猟の可能性を探っていることを、私は高く評価します。

(写真4:ロッテンブルグ大学演習林内の様子。写真の場所は落葉広葉樹の高木と低木が主。下層植生は幼木が少しある程度。地表が湿潤で、倒木にはコケが生えている。)

日本には罠猟のノウハウがあり、ドイツでは銃猟が大いに盛んです。日本とドイツの狩猟が手を携えれば、日本の銃猟のレベル向上と、ドイツでの効果的な罠猟の開発が、同時に実現できるのではないでしょうか。私は、互いの長所を生かした連携の可能性を今回の研修から感じ取りました。

以上、報告は、エンジニア科1年 山田 創 でした。

 

 


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