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2016年04月08日(金)

再造林地のシカ被害を防ぐ郡上市の試み

 

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シカによる樹皮はぎ

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食害により盆栽化したスギ

全国的にシカによる森林被害、特に皆伐後に再造林された植栽木の梢や樹皮が食害される林業被害は、育林コストを大きく引き上げ、経営心理的にも林業経営の持続性を根底から阻害する大きな不安要因です。
岐阜県においても、中濃、西濃地域で二ホンジカの増加と共に人工林の剥皮被害が目立っており、近年では、東濃、北濃地域へのシカ生息域拡大傾向がみられています。おりしも国内大手の大規模製材・加工工場がそろって操業を開始し、順調に推移すれば数年後には、県内丸太需要が大幅に増加し、それに合わせて伐期を迎えた人工林の皆伐が増加するものと推察されます。シカの頭数増加、生息域拡大の波と、需要増加による皆伐地増加のタイミングが妙に符合していることが、林業被害の急激な拡大を招くのではないかと懸念しています。

 

そんな中、岐阜県郡上市では、「郡上市森林づくり推進委員会」において検討し、市に提案されたアイデアを基に、行政主導で新たな組織を立ち上げ、運営を民間に委託して先進的な取り組みが始まっていますので、簡単にご紹介したいとおもいます。

 

組織の名は「森林動物共生サポートセンター」。鳥獣被害対策実施隊(猟師)と、森林所有者・林業事業体が協力して、皆伐後の植栽地に集まってくるシカを効果的に捕獲するための仕組みつくりをサポートすることを目的としています。
具体的には、皆伐後の再造林地をネットで囲む防除の提案・助言と、そこに集まるシカの罠による捕獲、見回りの頻度を上げることによる獣肉利用、これら一連の活動による予防効果等の測定等です。

郡上市は、この仕組みを提案した「NPO法人メタセコイアの森の仲間たち」に運営を委託し、狩猟免許を所持する30代の男女2名の職員を新たに雇用しました。
まだ、この仕組みによる捕獲実績が上がってないため、知名度も低く林業関係者からの関心も高くない状況ではありますが、将来の懸念に備えて今から準備を始めているその先進性や、専門の人材を育成しようとする市行政の姿勢は、大いに評価されるべきものと考えます。

もとより岐阜県では県・森林研究所における専門研究員の地道な被害調査や防除法等の研究、普及指導員等による狩猟免許(罠)の普及活動がすでに行われていることに加え、森林環境税を財源とする寄付により、岐阜大学では、岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター内に「寄附研究部門(鳥獣対策研究部門)」を設置し、有能な研究者を集め、全国に先駆け、「野生動物管理体制及び被害対策の課題と解決に関する調査研究」と「地域の野生動物管理・被害対策を担う人材の育成に関する研究と実践」を行い実績を挙げているところです。

上述したNPOの代表者は、岐阜大学の卒業生でもあり、後に続く意識の高い有能な人材育成が期待されています。

こうした動きを見ていると、数年後には、「シカを主とした野生動物の森林被害の対策なら、岐阜県に学べ」と言われるようになるのではないかと思っています。

我が森林文化アカデミーでも、シカ被害防除は、林業を成立させる基本条件であり、今後確実に公共事業として見込まれる新規ビジネスとしての可能性も含め、先進事例の視察や専門研究者の指導を受ける授業を提供しています。卒業後は林業事業体に就職し、通常業務を担当しつつも、狩猟期にはシカ被害対策事業の責任者として活躍できるような人材を育成したいと考えているところです。

報告者  原島幹典

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