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2021年11月12日(金)

アカデミー教職員から学ぶ「相互講義」

 11月10日(水)に連携協定を結ぶ清水建設株式会社の社員の方々に森林文化アカデミーの教職員が講師となり、授業を行いました。

 午前中は、森林総合教育センターの川尻課長による「日本人の森の思想」の講義と林業道具と森林総合教育センター(morinos)の家具の説明を行いました。

 講義では、「日本人の森の思想」について、日本の原風景は、「人が住む里、野良、野辺、里山、奥山、神の棲む岳」であり、その中で奥山は、神の領域のバッファーゾーンとして、その生態系を人間の都合で勝手に消費してはならないという原則を守っています。その反面里山は、人が積極的に自然にかかわることで、恒常的な生態系サービスを享受する知恵を持っています。日本人は、自然と寄り添う形で、どうやって生活を存続させるかという、自然の恵みを最大限に活用する知恵を持っています。

 リュドヴィック・ボーヴォワルは「日本人以上に自然の美について敏感な国民を知らない」と絶賛しており、ヨーロッパから日本に来た多くの人たちは、「日本人は、物質的な豊かさがなくても、周囲にはすばらしい自然があり、助け合って暮らす村の人々がおり、これで十分だと思うから日本人は傍目に見て『満足と幸福』が顔に出ているのだろう」と記しており、例として『吾唯足知』をあげ、常に足りている心の豊かさがあれば充分で、物質的な充足を一切求めないことを指すなど、日本は「自然が豊か以上に、豊かな自然に育まれた日本人の思想そのものが豊かである」と紹介されました。

 また、江戸時代の山の様子を浮世絵版画で見ると山に木が少ないことがわかりました。その原因は、①塩木山からの製塩のための燃料、②砂鉄をたたらで精錬する際の燃料、③窯業の燃料材、④人口増加による燃料材利用の増加などの事例が紹介され、その対策として、17世紀中期以降は、藩における植林活動の開始、1666年の「諸国山川掟」の発布や留山・留木施策が行われました。

 また、日本人の精神形成上『森』が果たした役割は、①日本土着の信仰(自然神道)、「神が木に依りつく」思想、②『鎮守の森』は、その森自体が神様、③『森』は、神霊が『こもる』意味もある、④『木』には、共通して生命力を表す意味がある、⑤『森林の思考・砂漠の思考』の事例として、森や木は、日本人と神と心の奥深くで、結びついた重要な存在であることが紹介されました。この講義の中で、江戸時代の日本人等に学ぶことが多くあると感じました。

 続いて、テクニカルA棟1階に移動し、木材の伐採に使用した古くからの斧や鋸、チェンソー、木材の搬出に使用した木馬や一本橇、二本橇など、貴重な林業道具について、現物を見ながら使用方法等道具の歴史を学びました。

 最後に場所をmorinosに移動して、morinosの家具について紹介がありました。

 morinosにあるみみ付きデスクと工作椅子は、岐阜県産の5種類(ヒノキ、ホオノキ、カツラ、クリ、アベマキ)で、みみ付きとは、一辺が皮を剥いだ木の表面のままの自然な風合いになっています。その中でヒノキは、針葉樹で恐竜が生きていた時代の樹木で、木材組織は仮道管で出来ていること、一方ホオノキは、広葉樹で花を咲かせる樹木の先駆者で恐竜が絶滅すること発生した樹木で木材組織は道管、木組織、柔細胞でできており、散孔材に分類されるなど、実物の机や椅子を見ながら分かりやすく紹介されました。

 また、参加者は、座面に穴のあいたアベマキの工作椅子に興味を示し、この穴の原因は何かと尋ねたところ、川尻先生から「犯人はカシノナガキクイムシという虫である。」とカシノナガキクイムシの標本を見せながら、説明されました。

 このようにmorinosの岐阜県産材家具は、楽しく森を学べる教材でもあることに感心しました。

 

 午後からは、林業専攻の大洞先生による「森づくりと林業の基礎について」の講義と演習林で森の観察を行いました。

 講義では、『「森づくり」って何だろう』の問い掛けから始まり、森づくりは目的に照らしてどういう姿にしていくのか、またどういう森の配置にしていくのかを考え、その目的に向けて必要な管理や施業の計画を立て、工夫しながらそれを実践していくものであること、目的によっては森を自然のメカニズムに任せてそのままにしておくことも森づくりの1つであること。また、森林をつくる力は、人為の影響のない森林はほとんどなく、人の力だけでは森林は作れない、できることとできないこと、やると良いこととしてはいけないことを知ることが必要であることが紹介されました。

 また、森づくりの主目的である木材生産について、一斉人工林施業の作業工程(育苗、地拵え、植栽、下刈り、除伐、枝打ち、間伐)毎の内容が紹介されました。

 植栽に使用する育苗では、従来からの裸苗に加えて、コンテナで育成するコンテナ苗の普及が進んでいること、下刈りは、林業の作業の中で一番過酷な作業であり、時期としては下草が繁茂する夏場に実施することが有効であるが、育林コストの中で割合が高い作業であり、獣害対策(シカ)には、有効という考え方があること。間伐では、林木が個体間競争をしながら発達する森林において、その個体間競争を人為的に制御し、森林をより望ましい姿に整える作業であること。林齢が若いうちは、林型を整えることが間伐の主目的になるが、林齢が高くなるにつれ林木のサイズが大きくなると間伐の目的の中で収穫の比重が徐々に高くなることなど、木材生産林における間伐は、林型を整えながら収穫を得る重要な作業であることが紹介されました。

 

 続いて、森を観察するため、参加者にはヘルメットと長靴姿で演習林に向かいました。

演習林へ向かう途中、大洞先生から自生している葉の臭いに特徴があるクザキや同じ葉っぱでも朴葉寿司の材料となるホオノキ、葉を触るとビロード状で手触りが良いヤブムラサキなど周辺に生えている植物観察を行い、日頃触れることのない植物の特徴を学びました。

 演習林では、木材の搬出に利用する林業架線が張られており、それを動かす集材機や木材を吊り下げる搬器の説明、周辺の人工林の生長状況について説明をしてもらいました。また、森林総合教育センター(morinos)の建物を象徴するヒノキのV字柱の伐採現場まで行き、伐根を見て改めて100年生以上の木材の大きさに驚きました。

 参加者は、日頃山に入ることが少ない方が多く、演習林の人工林を見ながら、人工林の施業方法等について積極的に意見交換をしていました。

 この授業の内容が、皆様の今後のお仕事の参考になれば嬉しいです。

 

                                 事務局 井戸


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