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2017年11月09日(木)

わくわく体感、ドイツの森林環境教育

 『日独林業シンポジウム2017』森林環境教育分科会

 本日はドイツのHaus des Waldesのディレクター、ベルソルド・ライヒレさんと、ロッテンブルク林業大学のオットマー・フックス教授から、ドイツの森林環境教育を学ぼうと、全国各地から約100人の方々が参加してくれました。

 

 先ずフックス教授が5列に座った人たちの列毎に左からアカメガシワの枝を、右側から鉈を、各々隣の人に「これは何か」尋ね、「これは木の枝です」などと答えながら送り合って、どちらが早く末端に到着するかを競いました。

結果、アカメガシワの枝が先に到着すると、フックス教授は「本日も鉈のような人工物よりも、木の枝のような自然のものが優先するように願っています」と言いながら、アイスブレイクしたのです。

 

 

 続いてHaus des Waldesのディレクター、ベルソルド・ライヒレさんが、「バーデン・ヴュルテンベルク州の森林教育」につて講義。

 森の中で算数を学ぶ、それはごく簡単なこと。教室で学ぶより、森の中で遊びながら学ぶことの方が効果的。森では頭だけでなく、体で動かなければならない。ここでは「心」が」重要なのです。

 

 

 「なぜ、森林環境教育するのか?」、私たちは地球(自然と資源)を使い過ぎている。2015年にバーデン・ヴュルテンベルク州で「大切な知識は何か?」聞いてみると、52%は健康、46%はコンピュータ、25%は自然と回答した。

 環境(自然)がなければ社会が成立せず、社会がなければを経済は成立しない。

 EGOとECOを考えると、持続可能であるためには「公平性が重要」である。自分だけが良いにではない。実り多き学びは「感動」することが重要で、感動は他者との関係性の中で生まれる。

 知恵は知識よりも重要であり、自分で考えて何かをすることが重要。そしてそこには「楽しみ」があることがポイントとなる。

 「持続可能な発展」のためには「教育」が必要であり、教育が「行動」に結びついて行かなければ意味がない。教育プロセスは行動を伴うものでなければならない(価値観・行動力・知識)。

 

 

 バーデン・ヴュルテンベルク州では、森林体験によって物を認識する能力をつけさせ、それがスパイラル状に発展することで自分自身で判断できる人材育成につながると考えられている。

 BW州の森林教育施設はHaus des Waldes以外に、4つの森林学校シュールハイム、12ヶ所の森の教室、33ヶ所の青少年テント式キャンプ場があり、2016年には110,000人の青少年が森林教育体験を受けている。

 またフォレスターは法律で森林環境教育をすることが定められており、そうした影響もあってHaus des Waldesには年間45000人来場、300校来校があり、車椅子の人も全盲の人も森を体験できるようになっている。

 

 

  休憩時間には、フックス教授が「一時間以上座っていたので気分転換しよう」と屋外でのカードゲームに誘う。約100人が背中にカードをつけて、自分についているカードが何かを推測する。写真の方は、蟻塚をつくるシロアリの仲間をつけておられました。

 

 暫しの休憩後に、次は萩原ナバ裕作准教授が、この森林文化アカデミーに来て、「10年間何をしてきたか」をスライド開設。

 「人は森から生まれたと実感する人はいますか?」の問いかけから、スーパーモデル級のスタイルの方を見てそう思うかという展開、しかし人の手首にできる長掌筋の痕跡から、森で生活する中で枝を握っていた痕跡がある科学的根拠まで、・・・ナバさんが教育者としての一面を見せる。

 

 

 子どもの教育、森のようちえん、プレーパーク、おうちプレーパーク、出張プレーパーク、森のだいがく、森パパ・森ママなど様々な実施項目と内容、その効果を解説しました。

 

 最後平和的解決策を持つサル、チベットモンキー。このチベットモンキーは争いごと解決に子どもを利用する。つまり問題が発生して喧嘩すると、エキサイトする前に両方の間に子どもを差し出し、それで終息させる。

 子どもって、やっぱり社会の中心にいるんだな? と感じるお話をされました。

 引き続き、午前中に対する質問タイム。どうしてドイツでは森林環境教育が盛んになったのか。日本ではどうすればもっと盛んになるのか。いい質問に、いい回答連続でした。

 

 午後一番は、フックス教授によるスティック遊び

 全員が一人一本、長い棒を持ってフックス教授の「ヒップ」の掛け声で右に棒を倒し、左から倒れてきた棒を掴む。また「ホップ」の掛け声では、左に棒を倒し、右から倒れてきた棒を掴む。単純ながらこれが盛り上がり、全員が一度に成功するまで何回か繰り返しました。

 その後、参加者は3つのグループに分かれて、演習林フィールドで体験学習。自力建設の四寸傘のところにフックス先生がいて、「周囲の様々なものを集めると樹木は何を作るか?」と問題を出して、参加者は色々集めたものを参考に考える。答えは簡単に言えば「砂糖」、樹木が周辺環境を利用して、光合成によって糖分を産生し成長する。それを楽しく学ばせる。

 

 次に、生きた樹木一本を切って、円盤状の輪切りをつくり、その片側断面に中性洗剤を塗って、反対側から息を吹き込む。すると洗剤を塗った側に泡がたくさん出てくる。これは木の中を水が移動できる証明になる。言葉だけでなく、目で見て、体験させることで理解させる実践なのだ。

 切った木は無駄にはしない。残った部分で子どもたちにフォトスタントやカードスタンドを作ってもらう。多分、家に帰って2週間もすると、お母さんが「これ捨てていい?」などと聞くが、子どもはそう聞かれた瞬間にも森での体験を思い出す。そして大切な思い出として、残すことを懇願するだろうと開設されました。

 樹木が水を吸い上げて、糖分を作ることを学んだら、次は自分たちで木になったつもりで実践です。

 フックス教授が地面に樹木のシルエットを描き、根元側から器に水を入れて葉に運び、葉の所に用意してある糖分(マシュマロなど)を根元に持ち帰るリレーを2班で競争する。

 競争が終わったら、葉の所に溜められた水の量を測定する。すると早く終わった班の水は、遅かった班よりも少なかった。そこでフックスさんは、樹木にとって「早くて少ない水と、遅いけど多いい水、どちらが樹木が喜ぶのか」と問いかけます。

 

 次にマツ林内に、色付けされた爪楊枝を散乱させ、親鳥になったつもりでペアをつくらせ、餌に見立てて散乱させた爪楊枝を拾ってもらう。

 これで親鳥が森の中で必死に餌を探す姿を学び、色分けによっていろんな虫を捕ることや、本数を数えて算数の勉強にも転用する。

 次に各ペア毎に、拾える爪楊枝の色、つまり捕食できる餌を一つの種に限定して再スタート。

 すると、あまり捕ることができない。つまり野鳥はある特定の種の昆虫だけ食べていると生活できない可能性があり、いろいろな昆虫を食べることで生きることができる。そのいろいろな昆虫を育む多様な森が必要なことを学ぶ

 

 次に別の森で待っていたベルソルド・ライヒレさんが、「ここでは自分たちの理想の森を作ってください」と問いかけ、参加者は5人ずつに分かれて、現場にあるもので「理想の森」を作るための材料集め。

 

 ドイツではこうした課題を大人に出すと、「突然言われても困る」という雰囲気が漂うが、ここでは頭から心への転換、想像力を働かせることが重要

 作品を見て、環境に配慮しているのか、多様であるか、家を建てる木材はあるかなど、多くの投げかけをします。

 

 3か所目はナバ先生のパート。

 ここでは耐火煉瓦、飯盒、マッチが用意されていおり、「15分以内に水を汲んできて、薪を集めて、お湯を沸かしてください」と告げられ、グループごとに挑戦。

 なんと多くのグループが煙がもくもく、飲み頃のお湯はできるが沸騰はせず。その沸かしたお湯で、お茶タイム。

 お茶を飲みながら体験活動を振り返る。これがなんともいい時間。火を使うことの意味、難しさ、様々な項目をふりかえります。

 

 最後にフックス教授が「再び棒をもって集合し、こんどは右に放り投げて隣の人に渡し、左から飛んできた棒を空中でつかむ」これが全員でできたら、本日終了と言われて、全員が一体となって実施。妙な連携と、隣を思いやる心が生まれる。

 

 そして最後まで残った全員で棒を掲げながら、今日一日の充実してプログラムに満足の雄叫びを上げたのです。

 

 今回の森林環境教育分科会、Haus des Waldesのディレクター、ベルソルド・ライヒレさんと、ロッテンブルク林業大学のオットマー・フックス教授、そして萩原ナバ裕作准教授、森林文化アカデミーの学生たち、コンソーシアムメンバー、全教職員のお陰で実現しましたものですが、今後も皆さんのご参加をお待ちしております。

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。