活動報告
2019年11月17日(日)

「デザインの基礎」とは?

木工専攻授業「デザインの基礎」が終了しました。巷でつかわれるデザインという言葉。デザイナーという職能。間違いなく重要な概念でありながら、その使われ方や捉え方は、まちまちであります。
そして、その「基礎」とは、何を伝えればよいのか・・・

都会ではなく、この森林に囲まれ、四季の変化を日々体感できる環境の中だからこそ、伝えるべきことは、ガウディの以下の言葉であると考えました。

「常に開かれて、努めて読むのに適切な偉大な書物は、自然のそれである。」
―アントニオ・ガウディ

そこで、自らが歴史の一部であることを再確認し、座標軸を『日本人である私』に置き、デザインを時間軸(歴史)と空間軸(人と自然の多様性)から見つめなおし、考察する視点のキッカケを提供できれば・・・と試行錯誤の結果、構成を以下の通りとしました。
1. 時間軸 (モノの歴史を学ぶこと)
2. 空間軸(自然から学ぶこと)
3. 空間軸(今を生きるデザイナーから学ぶこと)

1.では、日本が世界標準に価値観を合わせていく流れ、また、縄文や琳派など世界が注目した日本の文化を俯瞰しました。


2.「自然から学ぶこと」は津田格先生にお願いしました。デザイナーではない、生き物の専門家から学ぶことこそが、森林文化アカデミーならでは・・・と考えたからです。


奇しくも21_21 DESIGN SIGHTにて、「虫展~デザインのお手本」が開催されたことは、デザインを学ぶ環境としてのアカデミーのポテンシャルを実感しました。

3.は、本年度は小原木材社長であり、デザイナーである、小原淳さんにお願いし、岡崎市内のオフィスにて刺激的なレクチャーを受けました。

以下、学生の岡田さんにレポートしてもらいました。
「デザインの基礎」担当:松井勅尚

 


小原木材の小原淳社長を訪問して、デザイン、地域材の活用、地域の環境保全活動等についての講義を受けました。小原社長はとても穏やかな印象ですが、行動が力強くパワフルな方です。それは行動の基点が「自然を大切にする」「環境と産業の調和」といったシンプルで明確なものであり、大切なものを考え、形にするデザイン力をお持ちだからと感じました。

【使い手の情景に思いを巡らせる】
小原社長がプロデュースした作品は使い手の状況を意識したデザインがされていています。例えば和紙の照明は、ホヤが継ぎ目のない筒状に漉かれた厚くて固い和紙でできており、筒は載っている台座にから簡単に持ち上げるられるので、電球の交換は誰でも容易にできます。和紙の多重的な皺のおかげで和のイメージが無く、部屋に自然となじみます。継ぎ目が無い=表と裏の区別が無い、のでどの向きでも印象を損ねません。使われる場の情景に思いを巡らすことで、形や機能がデザインされ、より心地よい空間が作られることに作り手として大切なものを見せていただけました。


【デザイナーは何でもできる】
小原氏が企画した壁紙の発表会では製品それだけの演出ではなく、製品を知らない人、興味が無い人の気を引き、興味を沸きたてて購買まで繋げる一連の演出を学べました。壁紙メーカーの当事者では目線が近すぎるが、デザイナーならではの自由度や視野の広さが大変魅力的だなと感じました。


【異素材との組み合わせ】
木工家はとかくなんでも木で作りたがりますが、木だけでなく布、紙、陶器やガラスなどの異素材との組み合わせが、機能を互いに補完しあう優れた面や、異素材の組合せが全体の印象を穏やかで柔らかく、落ち着かせるのことを学びました。紙や布は四季の変化のある季節の設えを簡単に作れるので、日本の暮らしにあっていたのだと再発見した思いです。

【天使の森と地域材の活用】
小原社長は自然や地域の環境を大切にするため、地区の財産区であった市有林をスギ・ヒノキの人工林から在来種の雑木林に戻すための活動をしています。森と人との関わり合いを深め、森林を含めた風土を大事にする活動ですが、理念だけでなく地道な行動の積み重ねで、財産区の住民との合意形成や、地域や企業との協働など実に多様な取り組みをされています。一企業でありながら、「自然を大事にする」その根本的で根源的な行動が多くの人の賛同を呼び込むのだなと感じました。

【最後に】
講義前の食事中に、自分の行動が説明できる、理由が説明できることが大事、理由があれば、相手は納得するし、信頼につながるとお話しされ、初めからいろんな気づきにつながりました。これからやるべき方向が少し見えた気がします。お忙しい中、貴重な講義を大変ありがとうございました。

クリエーター科木工専攻1年 岡田 和美

以下全体を振り返っての学生の感想です。

土木設計畑出身の自分にとってデザインは設計になる。力学的要求を具現化したものであり、無駄なくある形状に収束され単純で保守的だ。一方、講義では人のメンタリティとモノの形、使い方との関連に重点が置かれ、自身を振り返るきっかけになった。思えば「何となく」が多い暮らしと思う。類似や模倣、本質的な必要が無いモノや過剰な機能など。何となく欲しいものを手に入れるために仕事に忙殺される。生き方を丁寧に考えていない自分に気づく。そもそもどう生きたいのか、暮らしの在り方をデザインする、考える姿勢を持ちたいと思った。
「自然から学ぶこと」でのWSでは、生き物の形、特に昆虫について紹介があった。人類の歴史に比べてはるかに長い時間を生きてその結果作られた形は無駄が無く合理的で変化に富みで個性的で美しい。自然物に着目してその造形に学ぶこと、それらと自分と一にすることは暮らしに深みを与えてくれると思えた。


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