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2026年10月27日(火)

【視察報告】ドイツ・オーストリアの林業と林産業を視察しました ②自然保護の考え方について

 令和8年10月9日(金)~18日(日)の行程(※移動込み)で、「ドイツ・オーストリア森林・林業視察2026」に参加しました。

【参考記事】

【視察報告】ドイツ・オーストリアの林業と林産業を視察しました ①テュービンゲン市街視察

 今回はこの行程における11日(日)の、ドイツにおける自然保護に関する考え方ほかにつきまして書かせて頂きます。
 今回我々が視察に訪れたのは、チューリンゲンとロッテンブルグ間を結ぶ、とあるバイパス沿いにある広大な農地を流れる小さな水路でしたが、こちらでシャンテさんという、元々環境保護計画を立案する事務所で働いておられて、またこの地の環境保護計画の立案に関わっていた方からお話を伺いました。

 ドイツの自然保護にかかる思想の根源には、1976年に策定された「連邦自然保護法」というものがあります。この中では自然そのものの存在価値と、人間の存在基盤やレクリエーションの前提という観点から、自然と景観の保護と発展を第1条の目的で謳っております。
 この中で生態系の再生機能の維持と発展、自然の公益機能と自然と景観の多様性などの長期的保護が具体的に列挙されているそうです。
 この中で「自然保護地域」というものが定められ、この地域を対象に長期的保護をするよう定められていますが、「自然保護地域以外」であっても自然や景観の保護に配慮する事が求められています。
 具体例として、公共工事(この場ではバイパス道路)を実施する際、これが出来るために損なわれる機能を代替する措置を講ずる事が求められるとの事で、これを「均衡措置」と言うそうです。
 考え方の流れとして

 1)現況の自然環境を、少なくとも維持する事(悪化させるような事はあってはならない)
 2)もし工事を行う場合、何が起こり得るのか?を予想する。
 3)併せて、最も環境負荷が小さい工事計画を考える。
 4)それでも、どうしても環境負荷がかかると判断される場合、「均衡措置」をとる。

 との事で、この均衡措置は工事を行う地域内でなくてもよいとの事でした。
 この事に付随して興味深かったのは「エココント」(エコ貯金)という概念があり、道路建設や都市開発などで自然を破壊(改変)する際、前述のとおり法律で「均衡措置」が義務づけられているのですが、市町村や開発者があらかじめ別の場所で自然生態系を復元・創造しておき、それをポイントとして蓄積し、開発を行う際に、その貯まったポイントを消費することで代償措置をクリアできる仕組みがあるとの事でした。

【中央:説明して頂いたシャンテさん】

 

 この制度の特徴として、開発が決まってから慌てて緑化するよりも、計画的かつ効果的に豊かな自然環境を先行して復元・保護することが出来るというメリットがあります。
 この視察現場で説明頂いた、具体的な「均衡措置」を2,3紹介します。

【① バイパスの防音壁の一部を低くした】
 これは右の写真のように、バイパスの遮音壁の一部を下げたもので、なぜこのようにしたのかというと、蝙蝠の通り道を確保するためとの事でした。

【② 既存水路の改修】
 もともとここは、川底と護岸がコンクリートで覆われたライニング水路でしたが、自然状態に近い状態に戻すため敢えて土水路に改修され、また線形も従来の直線ではなく曲線を入れた(河川の蛇行に倣う)。
 バイパス工事なのに水路の改修?と思いましたが、バイパス建築により水路にも影響を与える可能性がある。との判断に基づくもので、直接的なもののほか、副次的に影響を受けると考えられるものについても、このような措置がとられるとのことで、その取り組みの徹底ぶりに驚かされます。

 

 この他に見聞きした事を、備忘のため以下に列記させていただくと、

・バイパス建築工事に日本円で90億円かかったが、このうち自然保護に関しては3~4億円の予算を投じている。
・うち、この川だけでも5~6千万円かかっている。
・水路脇に柳の木を挿し木しているが、この柳は近隣から持ってきたもの。
・ヤマナラシの老木はそのまま(最初は伐根予定だったが、うまくいかず断念-発注者側の行政も納得)
・水路勾配は、以前は同一勾配だったが、自然環境に近い形にするため、数か所で落差工を設けている。
・水路脇に敢えて切り株を持ってきた(動物などの住み家にするため)
・線形を曲線状にするための土は、水路対岸からもってきた。

 などなど、色々と取り組みが行われており、日本にも公共工事を行う際に「環境アセスメント」というものが行われますが、ここまで厳密・徹底してやっているんかな?と思ったりしました。
 また他方で課題もあり、こうした計画を立案する方は当然知識があって計画を立てるものの、「施工業者側も同様に知識があるとは限らず、図面に描かれた施設の思想・意味を理解しないで施工してしまい、後で失敗した。」というケースや、「業者側も公共事業の実績が欲しいから、安い価格で落札するものの知識不足により、後で問題が起こっても対処できないケースもある。」との事で、元行政職(農業土木)の身としては、ドイツでも同じなんだなーなどと思ったりしてしみじみ。

 

【番外編1】
 ロッテンブルグ郊外の丘陵の頂上にある十字架
 昔の人も頂に至る細道を登り、こうした光景を目にしていたことが偲ばれます。

【番外編2】
 ロッテンブルグの旧市街地散策に同行してくれた、ロッテンブルグ林業大学の学生さんたち。
 ジャケットは学校のもので、残念ながら非売品でした。

木造建築専攻 高木 始