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2026年10月27日(火)

【morivis活用vol.5】ドイツの地形・地質を見る②

前回は演習林GIS「morivis」を使って、ドイツの地形を陰影起伏で確認しました。ドイツトウヒの黒い森で有名なシュバルツバルトの山地とライン地溝帯が、アルプス造山運動により形成された様子を感じることができました。今回はドイツの林業を知るために重要な地質について「morivis」で見ていきます。

 

毎年行われるロッテンブルグ林業大学でのサマーセミナーでは、ドイツトウヒやブナ、ナラなどの人工林を訪れますが、そこで必ずといっていいほど地質の説明があります。ここの基岩は「砂岩で水はけがよく」あるいは「石灰岩のためアルカリ土壌で」などと、人工林施業を行う場所の地質によって透水性、保水性、土壌のphが異なるため、地質を考慮した植栽樹種の選定や施業が行われています。

 

morivisでドイツの地質を表示してみます。

ドイツ全体を黒線で囲っています。さらに南部2州(BW州、バイエルン州)を黒線で囲っています。

 

大きく分けると、ドイツ北部の第四紀の氷河堆積物に覆われた地域(薄い肌色)、ドイツ中部~南部の中生代の地層が広がる地域(紫色~水色)、ドイツ南部の第三紀~第四紀の新生代の地層に覆われた地域(肌色~黄色)となります。少ないですが、一部火山活動による火成岩の地質も見られます。

 

よく訪れる南部2州を詳しく見てましょう。BW州の北東ー南西方向に地層が分かれており、北から紫色の中生代三畳紀の地層、水色の中生代ジュラ紀の地層、黄色~肌色の第三紀、第四紀の地層となっています。シュバルツバルトの山地は赤色で先カンブリア~古生代にかけての古い岩体が広がる地域となっています。

200万分の1の地質図です。ドイツ連邦の研究機関が提供する地質図で、この他に25万分の1、200万分の1の縮尺があります。

 

BW州の多くを占める三畳紀は、三畳紀の名前の由来にもなっていて、砂岩、石灰岩など3種類の地層が層状になっています。下から順番に砂岩層(地質図の凡例でT1)、石灰岩層(T2)、Keuper層と呼ばれる泥岩を多く含む層(T3)となっています。濃い紫がT1で、T2、T3になるに従い、薄い紫色になっています。なおBW州中部に広がる三畳紀の地層は地殻変動の影響をほぼ受けていないため地層が水平に近く、T1,T2,T3の順番で地質年代は新しいです。

 

また丘陵の上部がT3、谷はT2というように、地層が水平に近いため丘陵地の上部はほぼ同じ地層で構成されています。それぞれ地層では、透水性や土壌phが異なるため、人工林における植栽樹種の選定において、地層を知ることが非常に重要です。ドイツで人工林を視察した際に、必ず地質の説明があるのはそのためです。

谷側斜面の濃い紫がT1層(砂岩層)、丘陵上部がT2層(石灰岩層)です。肌色のQ層は第四紀の堆積物による地層です。

 

こちらアカデミー演習林周辺の地質になります。アカデミー周辺は堆積岩であり、ドイツと同じく海成堆積物で構成されていますが、大きく異なるのは「付加体」ということです。海の底で堆積した砂や泥は海洋プレートによって運ばれた後、プレート境界で大陸プレートに付加され、地殻変動により地上に押し上げられたものです。地層は水平どころか、褶曲しています。メランジュといった、砂岩、泥岩、チャートなどが入り混じった地層もあります。

 

ちなみに地質が複雑ということ以外に斜面で施業することが多い日本では、地質よりも斜面形状による風化層の厚さ、堆積物の厚さが木の成長に大きく影響するため、地質を元に植栽樹種を選定することは少ないです。

ようやくmorivisが演習林に戻ってきました。

 

 

最後に、ドナウ川とライン川の分水界と地質図を重ね合わせてみました。ドナウ川はオーストリア、ハンガリーなど10か国以上を巡って黒海に注ぐ大河川です。そのドナウ川の源流はシュバルツバルトにあります。シュバルツバルトはライン地溝を流れるライン川に沿って南北に走る山地ですが、ドナウ川の源流にもなっているのは大変面白い事実です。

 

またライン川とドナウ川の分水界と、紫色の三畳紀の地層と水色のジュラ紀の地層の境界はほぼ一致しています。さきほど三畳紀の地層はほぼ水平と書きましたが実際には少し南東に傾いており、ケスタ地形となっています。ドナウ川と比較して河川勾配が急なライン川が南に向かって浸食を進めている状況で、将来的(地質年代的に)には、三畳紀より新しいジュラ紀の地層が残っている水色エリアが少なくなり、紫エリアが広がっていくものと思われます。

ライン川とドナウ川は現在、ライン・マイン・ドナウ運河で結ばれており、北海から黒海まで船で通行することが出来ます。

 

morivisを使ってドイツの地質、特に南部の地質を見てみました。様々な地図を重ね合わせることが出来るmorivisならではドイツ旅でした。まだまだ興味深い地質があるのですが、また次回にしたいと思います。

 

林業専攻 杉本