火を起こし、自分と向き合う時間をつくる(アウトドア活動の基礎)
<2026.7.2> 森林環境教育専攻の授業「アウトドア活動の基礎」を、郡上市明宝小川地区で実施しました。
この日は、武蔵野大学ウェルビーイング学科3年生7名との合同実習です。
武蔵野大学のみなさんは、「地域とビジネス」をテーマにした実習で、明宝小川地区に約3週間滞在中。 地域の中に入り、地域の暮らしや仕事に触れながら、地域の方々と交流をしています。そこから、「自分は何をやりたいか」「どう貢献したいか」という、卒業後も見据えた自身と社会を接続する「種」を見つけることが、今回の滞在実習の目的だそうです。
森林文化アカデミーにとっても、都市部の大学生と交流できる貴重な機会となりました。
今回の会場は、古民家をリノベーションした地域交流拠点「ななつやステイ」。ここを拠点に、一日を通して自然と向き合い、自分自身と向き合うアウトドアプログラムの実習を行いました。

実習の進行は、森林環境教育専攻の谷口吾郎(ゴロー)先生。
まずは、お互いの学校紹介から始まります。
武蔵野大学のみなさんからは、「ウエルビーイング」という学部についてや、これまでの様々な実習について紹介されました。
続いて行われたのは、里山キャンパスでも大切にしている「チェックイン」です。その日の体調や気持ちを一人ひとりが言葉にして共有すると、
「滞在10日目で少し疲れがたまっています。」
という率直な声も聞かれました。
その様子を受けて、ゴロー先生はこう話します。
「今日は情報をたくさん詰め込むよりも、静かな時間を大切にしましょう。」
あらかじめ決めたプログラムを進めるのではなく、その日の参加者の状態を見ながら内容を組み立てていく。それもプログラムデザイナーにとって大切な姿勢です。アカデミー生も、現場でゴロー先生の対応を直に見ることで、実習していきます。
チェックインの後は、外へ出て「感性の準備体操」。光や風、音や匂いを感じながら、五感をゆっくりと開いていきます。

穏やかな時間となった午前が終了し、各自昼食に。疲れがたまっていた武蔵野大学の学生の中には、そのままうとうとする姿もありました。「休むこと」もまた、ウェルビーイングにはとても大切です。
その間、アカデミー生はタープ設営に挑戦。前日に学内で練習した成果で、初めて訪れたフィールドで、プログラムの条件や気候条件に合わせた設営を、協力しながら手際よく行っていました。

そして午後は、ソロストーブを使った火起こしです。「火の三要素」について説明がされた後、ゴロー先生から出された課題は、
「身近なところで、材料を集めて、一人で焚き火をする」。
この日、朝までは雨。乾いた材料を見つけるのは簡単ではありません。

大学生もアカデミー生も、落ちている枝や草を感触で確かめながら、真剣に、そして夢中に焚き火の材料を探していました。


これまで焚き火を何度もしているという大学生のみなさんでしたが、全てを一人でやってみるソロの焚き火は初めてとのこと。苦労と工夫をしながら、自分だけの火を起こしていきます。

同じ火起こしでも、人によってやり方はさまざま。うまくいかず何度もやり直す人もいれば、小さな火を大切に育てる人もいます。そんな違いも、それぞれの学びになっていました。
そして、火がついた人から、地域の名物「明宝ハム」を焼いて味わいました。


振り返りでは、火を囲んだからこそ生まれた気づきが次々と語られました。
武蔵野大学の学生からは、
「みんなと一緒にいると一人になりきれないけれど、火と向き合っている時間は自然と一人になれた。」
「火がついた瞬間、本当にうれしかった。」
「条件がそろわないと火はつかない。昔の人はどうやって火を起こしていたのか考えた。」
「火を見ていたら、自分のことをゆっくり考える時間になった。」
といった声が聞かれました。
また、
「共同生活が続いていたので少し疲れていたけれど、一人で火と向き合う時間があって回復した。」
という感想もあり、自然の中で過ごす静かな時間が心身を整える時間になっていたことが伝わってきました。

アカデミー生にとっても、多くの気づきがありました。
「社会人になってからは、一人で火を見る時間なんてなかった。今日は火だけを見つめる時間が新鮮だった」
「自然に働きかけるというより、自分も自然の一部なんだという感覚を、火を見ながら考えていた」
武蔵野大学のみなさんが「ウェルビーイング」という視点から自然や火との時間を捉える姿は、アカデミー生にとっても新鮮だったようです。
普段、自分たちが当たり前のように取り組んでいるアウトドアプログラムも、異なる学びをしている学生と一緒に体験することで、新しい意味や価値が見えてきます。

今回の実習では、アウトドア活動を通して技術を学ぶだけでなく、「今の自分はどんな状態なのか」を感じ取り、自然との関わりの中で自分自身を整える時間となりました。
同じフィールドに立ちながら、それぞれが異なる視点で学び合うことができた一日は、学生たちにとって大きな刺激になったようです。
武蔵野大学ウェルビーイング学科のみなさん、貴重な機会をありがとうございました。

<森林環境教育専攻 教員 小林(こばけん)>