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2026年01月19日(月)

「枝打ち」作業はいつ、誰が?施業履歴を探索! (自力建設2025「紡木人」)

今年度の自力建設「紡木人」(tsumugito)の柱材には「4面無節」など、木材の表面に枝の跡が出ない材を多く使っています。これは木の成長過程で「枝打ち」という作業が行われた証と言えます。一方で、建物全体の構造を補強している方杖の一部にはあえて「枝打ち」の跡が現れるように配置した部材があります。その理由は、「紡木人」が木に関わる人々の技術や想いを紡いでいける「紡ぎ手となる空間」をコンセプトにしているからです。では一体、この「枝打ち」はいつ、誰の手によって施されたのでしょうか?施業履歴を探索してみました。

(写真中央の節に不自然な水平方向の直線が刻まれているのが「枝打ち」跡)

 「僕たちが使用した木材の『施業履歴』が分かる資料はないでしょうか?」。昨年11月、林業専攻の塩田昌弘准教授にメールで相談したところ「おめでとう御座います🎉奇跡的に残ってましたよ」といった返信とともに、以下の写真が添付されていました。

 

(塩田准教授のメールに添付された写真。左から2枚目の板に枝打ち跡が残っている)

 この木材は、今年度の自力建設の用材確保のために2024年度にアカデミーの演習林で伐採されたもの。「枝打ち」跡からの年輪の数を数えれば、その作業が行われた年代が分かるはずです。

 さらに塩田准教授は、「演習林の概要」という冊子も手渡してくれました。この冊子によると、今回伐採された演習林のエリアは「Ⅲ-2」という区画。冊子の「小班別・年度別事業実績」というページを見ると、この区画では「昭和63年度」、「平成元年度」、「平成3年度」、「平成4年度」の計4カ年で枝打ちが行われた記録がありました。つまり、今から34年以上前、アカデミーの前身である「岐阜県林業短期大学校」時代のことです。

(「演習林の概要」には枝打ちや間伐などの施業記録が残る)

 

念のため、この記録と塩田准教授が見つけてくれた木材の枝打ち跡からの年輪数が一致するか確認することにしました。

年輪を数えるなら、この人!ということで、森林環境教育専攻の柳沢直教授の研究室を訪ねました。

柳沢教授が目を凝らして年輪を一本ずつ数えてくれます。「年輪の数は23本。2024年の伐採なら枝打ちは2001年ですね。これはアカデミーが開学した年。ストーリー性がありますね〜」とホクホク顔です。

 自分も納得して学生室に戻りましたが、妙な違和感が…。そう、例の「演習林の概要」には2001年に枝打ちが行われたという記録がないのです。その上、塩田准教授が見つけてくれた木材は130mm角の材で、「紡木人」の枝打ち跡が現れた方杖は90mm角の材…。

(塩田准教授が見つけてくれた枝打ち跡が残る木材は130mm角...)

 

 つまり、「演習林の概要」には枝打ちの施業記録があるものの、これとは別の年に枝打ちが行われた可能性も否定できないということです。結局、「紡木人」の部材に現れた枝打ちがいつ行われたかを特定することはできませんでした。

演習林地図アプリ「morivis」(モリビス)によると、今年度の自力建設で使用した木材は1960年に植栽されたもの。林業は、長い時間を掛けてたくさんの人たちが関わりながら木々を育てます。かつて、どこかの誰かが枝打ちをしてくれたおかげで、「紡木人」には無節の柱が立ち並びます。「紡木人」を訪れた際には、枝打ち跡を探して林業の奥深さを感じてみるのもいいかもしれません。

 

 

木造建築専攻1年 坂巻陽平