木育講座の実践「森のクリスマスマーケット」に参加して
木工専攻2年生で行う「木育講座の実践」の授業は、自ら企画した木育プログラム(ワークショップ)を運営する実践型の授業です。今回は2年生の橘さんが自ら企画して取り組んだ、活動レポートをご紹介します。(木工教員 前野)
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12月6・7日(土・日)の両日、JR岐阜駅のアクティブGで行われた「森のクリスマスマーケット」に参加させていただきました。
昨年末に「コミュニティビジネス起業論」の実践として、学内の友人に向けて行った「『サンタこけし』を実家に贈ろう!」という取組を、学外の催しに向けて「こけしで贈るクリスマスカード+年賀状」と「サンタさんをメイクして大切な人に贈ろう」という内容にブラッシュアップできるように準備を進め、当日に臨みました。
今回、このような取組を組み立てた一番大きな目的は、『「身近な木」についてちょっとでも考えてほしい』という想いが強くありました。今回の取組に用意した「サンタこけし」は、演習林から伐り出したヒノキの端材が多く、他に里山利活用の授業などで伐採させてもらった広葉樹の小径木、そして、ホームセンターの木材売り場の隅に捨て値で売られている端材で制作しました。
森林文化アカデミーに入学し、幾つかの授業や事例調査などに参加したことで、木材流通に乗る樹種が思っていた以上に少ないこと、そして身近な広葉樹を使って作品を創り出すことの難しさを知ることができました。一般の皆さんにも現状を知ってもらい、身近な樹木についての考えを「聴き」、有効活用する方策をみんなで考え始めるきっかけ作りができれば…と思ったのです。

上の写真をご覧ください。右側が「こけしで贈るクリスマスカード+年賀状」、左側が、「サンタさんをメイクして大切な人に贈ろう」です。どちらも、サンタクロースをイメージしたこけしの胴体部分にメッセージカードが封入でき
ます。
せっかくのクリスマスなので、クリスマスソングを主題としたおみくじを編み、「おみくじを引いてみて下さい」と、お客さんに興味をもってもらう仕掛けを施しました。
予め、今まで出店者として参加したことのある学校の文化祭(翔楓祭)や学校のそばの美観地区で行われたマルシェなどとお客さんの層が違うだろう…と予想していましたが、アクティブG・2階の内装が「森の入口」らしく飾り付けられており、岐阜駅に向かう人も帰る人も中央に立てられたヒノキのクリスマスツリーのそばを通過すると、自然とスイッチが入るようにサンタこけしの並ぶ机に興味をもってもらうことができました。
私は普段、木々そのものの木目や肌理を造形デザインと共に提示する無垢のこけしを主に制作しているのですが、今回は一般のお客さん方に目を留めてもらいたい…と思い、羽島市・中観音堂で学んでいる円空彫りの「早削り」を応用して「早描き」でサンタこけしの顔の絵付けをしてみました。幸い「かわいい」や「今までにないこけしで興味深い」など、お褒めの言葉を多くいただくことができました。

サンタさんの顔の絵付けは、エンジニア科林産業コースの水野さんが全面的にサポートしてくれました。
彼の小さなお子さんへのアドバイスの仕方が大変丁寧で、筆者は元教師なのですが学ぶ所が多かったです。
予想と異なる反応もありました。本来は「サンタこけしにメッセージを封入して贈る≒送る」という趣旨だったのですが、結果としては、子供向けになっていった絵付けの体験に比べ、おみくじ側のターゲットの大人のお客さんには「こけしにメッセージを封入する」という行為が不思議だったようで、説明するとほぼ全員の方々が感心してくださる反面、実際に「郵送してみます」とおっしゃってくれた方は2人だけでした。
それでも、「クリスマスソングみくじ」が予想を遥かに超える呼び水となり、こけしを手に取っていただくきっかけになりました。「同じくらいの大きさでも、ヒノキとソヨゴではここまでも違う」といった反応もあり、大人の木育の導入として、こけしは大いに有効なのかもしれない…と思いました。

2日間で少なくとも50人以上の方々から、色々なお話を聴くことができました。
最初はサンタこけしはどういうもので、おみくじのクリスマスソングはこういう曲だ…というような会話が、岐阜県産材や広葉樹の利活用の話になったり、お父さんが3歳くらいのお子さんに都度自己決定させている様子から子育ての心得について教えてもらったりするなど、会場ではサンタこけしを削ってはいませんが、こけしを介した話題の広がりに、これこそ『聴き削り』なのではないか…という実感がありました。
お話を聴いたことが、新たな創作の『種』となる『ご縁』をいただいたのだから…と、振り返りながらしみじみ思います。
今回の有難い経験を、今後の活動に繋げ、生かすことでお客さん方への感謝を形にしていこうと思います。
(クリエーター科木工専攻2年 橘 明広)