活動報告
最近の活動
月別アーカイブ
2025年09月18日(木)

「木材マーケティング」で未来工業(株)さんを訪問してきました

皆さん「木材マーケティング」と聞くとどんな授業だと想像するでしょうか?

木材流通の現状を知り、ユーザーに木材を選んでもらうための工夫、木材への付加価値の付け方、現状と理想の差をマーケティング的視点から埋めるための練習など思いつくかと思います。

もちろん、そのような学びも大事にしますが、今回は、木材業界を離れ、他業種で行われている企業理念に触れ、マーケティングの神髄を感じるために、安八郡輪之内町にある未来工業(株)さんに行ってきましたので、その報告をしたいと思います。

 

社屋玄関 どんな出会いが待っているか

今回、訪問目的としてお伝えさせていただいた内容は、「エンドユーザーと従業員の笑顔につながる企業の考え方を学びたい」でした。というのも、未来工業さんは、従業員の幸せと経済的発展を、「(他称)日本一のホワイト企業」と「東京証券取引所プライム市場、名古屋証券取引所プレミア市場 上場」という実績で証明し、今も成長し続けている企業さんだからです。

いったいどんな企業理念を持ち、どのように実践しているのか、話を聴きその実態(現場)に直に触れることで、森林林業の業界に旅立っていく若者たちが、いつか辿り着くべき理想の姿として、リアルに働く姿を想像できるようになるのではないか?そんな期待を胸に訪問してきました。

創業者からのメッセージや社内写真コンテストの結果(笑顔の秘訣)でお出迎え 玄関ホール正面の様子

さて、訪問結果なのですが、うまく言葉にできそうにありませんが、とんでもない企業を知ってしまったのではないか、、、そんな気がしています。
少し言葉にする努力をしてみますが、これから森林・林業に旅立つ若者を送り出す側にいる者として、高い高い目標をまざまざと突き付けられたような、何をどこから手を付けて行こうか?どうする?というソワソワ感、まだまだ、とんでもなくやれることがあることを知ることができたワクワク感、そんな感情が入り交じったような訪問直後の感想となりました。

学生一人一人に、様々な経験談やエピソードをまじえながら企業理念を伝えてくださった様子、心より感謝

 

少し冷静になるために、研修内でお話しいただいた具体的な言葉や数字を紹介してみます。

・企業理念は、「常に考える」 とてもシンプルですが、終始一貫していました。

・社是はない。 掲げてしまうと考えなくなってしまうから。

・創業メンバーは劇団仲間“未来座”の面々。 その心意気が今につながっている。

・客の困りごとを解決するのが、私たちの仕事。

・同業他社と同じものは作らない。プライドが許さない。“すげぇなコレ”といわれるようなものをつくりたい。 人のネタはやらない。

・男尊女卑はない。男優も女優も客を感動させたものが偉い。感動してくれたお客さんはリピーターになってくれる。ファンになってくれる。

・ホウレンソウは強制しない。ホウレンソウが必要な場面では、自分で考え、必要な部署メンバーに情報共有する。命令や強制ではやらない。命令されれば、楽だが、考えなくなる。慣れないと最初は大変だが、結果、仕事の効率は上がりスピードアップする。

一人一人が一生懸命走るのではなく、仕組みとして早くなるようにする。

代表取締役のお話しを聴き、廊下に出ると 当たり前のように暗~い廊下 徹底される小さな節約

・楽したいよね。楽できるようにみんな考える。アイデアを出す。アイデアは上質の紙に書かれ意見箱に入っていて、しっかり決裁ルートが決まっていた。どのアイデアも500円/案もらえて、採用されれば、等級区分され臨時収入につながる。

・考えるの対義語は、「学ぶ」。 学ぶ(教えられる)ことで人は受け身になり、考えなくなることがある。答えを教えない忍耐と手間を惜しまない。社員の「考える」を奪わない。

・ノルマはない。 80点の人はでてくるが、120点とる人もでてくる。(落ちこぼれ、吹きこぼれ)

・安心して働ける職場にする。終身雇用で余計な心労をなくしている。定年のタイミングは、70歳までに自分で選べるようにしている。再雇用ではない。給与も減らない。

・平均勤続年数23年。育児休業3年可。小さな子を養育する社員は△1.5hrの時短勤務が可能 フレックスも可 職員提案のズレックスなんでのもあったりする(笑)。 結果、社内出生率1.8超え!! 2024年離職率0.9%!!

・新卒採用の倍率は77倍!!

・人事部はない 昇進などの評価は管理職が全員そろってやる。 労働組合もない!!

・社内に自主的な勉強会がある。参加は自由。内容はリベラルアーツ。就業時間内に社外会場に行き、思考が妨げられない環境下で意見交換等する。 結果、自分の意見が言える人が育ってきている。

・自律的に「考える」人材を育てることが、組織の価値を高めることにつながる。

・企業経営3要素「人・物・金」のうち「人」にこだわり続けてきた。「常に考えてきた」結果であり、これからも柔軟に対応を続けていく。

・社員の幸福→製品の質向上→顧客満足up→社会的信頼 従業員の笑顔を増やすことが、ユーザーの笑顔を増やすことにつながり、循環する社会につながっている。

と、わが社は考えています

 

創業以来のアイデアの結晶の展示スペースは圧巻

直接見なくても、違いの分かる+&-ドライバー

マーケティングの本質は「人」と「人」がwinwinにある事。と教科書にあります。もちろんその通りだと思うのですが、未来工業さんが話すときに出てくる“人”は、似て非なる響きを感じました。

5年に一度の社員旅行の計画が並ぶ食堂 と それを可能にしている企業理念

至る所に企業理念 ”常に考える”

創業から今までの、従業員数と売上の推移

 

劇団 “未来座” その仲間から始まった、未来工業、良い芝居がしたい、人を感動させたい、そんな仲間が集う箱が、電気設備を作り販売する会社となり、そこでは創業から60年以上たちメンバーは変わってもなお、今も劇団員の仲間のような社員を育てたいと試行錯誤しているのかもしれない。仕事は仕事、趣味は趣味、分けて考えるけれど、生き方までは変えやしない。そんな声が聞こえてきそうな「“人”を大切にする」を、考え続けている企業が、今回の訪問で見えてきた、未来工業さんでした。

さて、次は誰の番なんだろう。仲間を家族のように、厳しくも優しく思いやれる、そんな森林・林業の組織を切り拓いていくのは…明日へつながる扉はこっちだよ。そんなヒントは十分いただけたように思います。そこにどうしたら近づけるのか?僕たちも考え続けよう。

”常に考える”その先に社員一人一人の笑顔、そしてエンドユーザーの笑顔が確かにある そう感じさせてくれる正面玄関

最後に、学生一人一人の目を見て伝えてくださった中島靖社長、次々と出てくる質問に対し丁寧に対応し続けてくださった杉原創紀様、本当にありがとう御座いました。この場をかりて心より御礼申し上げます。

 

以上、報告 

林業専攻教員 塩田