林業事例調査2025(4)株式會社フジイチさま視察(2025/7/23)
林業事例調査3日目は静岡県浜松市天竜区にあります株式會社フジイチ様を見学させていただきました。
天竜区は江戸時代から、治山治水のためにスギやヒノキの植林が行われ、現在では日本三大美林の一つに数えられている有名林業地になります。そんな天竜区で、林業事業体を経営されているフジイチ様は、1946年に創業された歴史ある林業会社になります。この日は、フジイチ様のご厚意により、1日、施業現場や製材工場を見学させていただきました。
午前中は、施業を行なっている皆伐現場を見学させていただきました。現在フジイチ様には森林文化アカデミーのエンジニア科卒業生が在籍しており、案内していただいた皆伐現場ではその先輩が作業されている姿を見ることができました。
皆伐現場に到着早々、100年生の大きな丸太が宙に吊るされ斜面を下ってくる状況を見させていただき、その迫力に言葉を失いました。
フジイチ様は、空中に張ったワイヤーロープ(架線)により伐採した樹木を集材する、架線集材という集材方法を専門的にされています。そのため、架線の設置方法には様々なノウハウが詰まっており、また最新型の架線集材機械などを使用されておられ、学生たちだけでなく先生方も興味津々でした。
架線による集材は高い知識や技能が求められる集材方法ですが、急峻な地形でも用いることができ、また山や搬出する樹木を大きく傷つけない集材方法でもあることから、架線集材にこだわっているとのことでした。
そのような高いスキルが求められる架線集材の現場ですが、当アカデミー卒業生の先輩も作業員の一人として立派に作業しておられ、頼もしく感じるとともに私自身の将来像を描く上でも良い刺激になりました。
午後からは、会社の概要について説明していただいた後、所有する製材工場を見学させていただきました。製材部の方により、大径木が次から次へと切断され、製材になっていく様は、その手際の良さとスケールの大きさに大変驚かされました。
最後に会社で現在力を入れられている取り組みや、理念などについてご説明していただきました。そこでは代表取締役である石野社長、専務様、山林部長様のお話を直接お伺いすることができました。
フジイチ様は、山林所有者である山主さんの意向と、天竜区の持続可能な森林開発、そして今ある樹木に最大の価値が出るように大切に扱うということを常に考えて経営されているとのことでした。生産するすべての製品は持続可能な森林管理に配意した企業のみ取得可能な「FSC認証」を取得しておられ、そのことからも確固たる会社の理念を感じることができました。また自社だけでなく、天竜地区の他の林業事業体とも協力し合いながら天竜地区の森林を管理していく、とおっしゃられていたことがとても印象に残りました。
今回、普段の授業では決して見ることのできない大規模な架線の集材現場や、製材工場を見学させていただき本当に勉強になりました。
また実施していただいた座学を通じて、林業というのは単に木を伐採するだけではなく、資源の持続可能性を考え、大切に扱っていくことが大事なのだということを改めて痛感しました。
最後になりましたが、詳しくご説明いただきました石野社長、専務様、山林部長様、案内していただいた相佐様、磯貝様、また現場で対応してくださった皆様、お忙しい中、貴重な時間を作ってくださり本当にありがとうございました。
以上、林業専攻1年 吉田大記が報告しました。
(林業専攻教員 津田)