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2023年07月11日(火)

木工事例調査R5夏④ 木曽おもちゃ美術館

 木工専攻では学生達の関心分野に合わせて木工やモノ作りの事例見学を毎年行っています。今回は一泊二日の行程で木曽地域に足を運び、その時のレポートを学生がまとめました。4つ目にご紹介するのは「木曽おもちゃ美術館」の訪問記事です。


 木工事例調査2日目の午後は、木曽おもちゃ美術館を訪問しました。館内を案内いただいたのは、事務局長の安藤清美さんです。

安藤さんにお話しを伺う

館内にて安藤さん(左)のお話をうかがう

 こちらの施設は、昭和3年に建てられた旧黒川小学校の校舎、体育館、管理棟の3棟を利用しています。2002年から「ふるさと体験きそふくしま」の名を掲げて、郷土食体験や木工体験を提供されてきました。そして、2022年11月19日に東京おもちゃ美術館と連携し、新たに「ふるさと体験 木曽おもちゃ美術館」としてリニューアルオープンしました。現在はこれまでの体験メニューに加え、多様なおもちゃと遊びを通じた木育(木とふれあい、木に学び、木と生きる取り組み)を通して、木曽町の大自然と歴史、文化などの魅力を、多世代へ楽しく伝えていくことをされています。

 まずは、「たいけんのやかた」と呼ばれる、かつての木造校舎にある体験エリアを見学させていただきました。こちらは木工だけでなく、織物、蕎麦打ちなどの幅広い体験ができるほか、数多くの民具も展示され、木曽地域の人々の昔の暮らしぶりを深く知ることができます。

たいけんのやかた、木工室

「たいけんのやかた」内の木工体験の教室にて

館内に展示されている民具

館内に展示されている民具

 次に、安藤さんより「説明よりも体験しましょう。」というご提案をいただき、昨年11月に新たにオープンした「おもちゃのやかた」というエリアで自由に体験させていただきました。
「おもちゃのやかた」は、かつての体育館を改装して、約2400点のおもちゃで遊ぶことができる木育エリアです。内装は、木曽路の街並みを模しており、各所に置かれたおもちゃには、木曽地域の産業や伝統を遊びの空間に落とし込む工夫がされています。さらに、子どもの成長段階に合わせて館内が区分けされており、2歳児以下向けに五感を刺激するおもちゃや遊具を揃えた「赤ちゃん木育ひろば」や、幼児・児童向けにごっこ体験ができる「きそごっこファーム」など、体験を通して学びを得るための工夫もされていました。このような館内随所に子ども達が遊びながら地域の魅力を感じることができる手法には、目を見張るものがありました。

赤ちゃん木育広場にある木曽五木を使った卵のプール

赤ちゃん木育広場にある木曽五木を使った卵のプール

古くから木曽地域で食べられている「五平餅」のおままごとコーナー

古くから木曽地域で食べられている「五平餅」のおままごとコーナー

 来館するお客様は親子が多いということもあり、おもちゃを展示する棚の高さは子どもの目に止まりやすい低めに設定され、怪我や衝突を防ぐためにそれぞれの什器の間隔が広めに取ってあることや、遊びに集中できるようコの字のブース型になっているなど、親御さんにもありがたい細かな気遣いを感じました。
 そして、館内で扱っているおもちゃの中には、日本のおもちゃとして古くから親しまれているけん玉やテーブルサッカーゲームなどの懐かしいものもあり、学生も教員も夢中になって楽しんでいました。子どもが楽しいと感じる要素は普遍的で、歳がいくつになろうとそれは変わらないものなのだと改めて実感させられました。

様々な木材で製作されたけん玉

様々な木材で製作されたけん玉

テーブルサッカーゲームを楽しむ学生

テーブルサッカーゲームを楽しむ学生

 我々学生も、作品を作ることが目的ではなく、木工を通して社会に何を伝えていきたいのか、どのように貢献していきたいのかを見つめ直す良い機会になりました。

 そんな素晴らしい木曽おもちゃ美術館ですが、安藤さんは、木曽地域の歴史や文化を今後より一層、多くの人々に広めていきたいという思いから、様々なネットワークを作り情報発信や集客に尽力されておられます。木育や木のおもちゃに興味関心がある方にはぜひ訪れて欲しい場所だと思いました。

 2時間という短い時間で、広い館内を見尽くすことはできませんでしたが、森林文化について学ぶアカデミーの学生にとって非常に有意義な訪問でした。今回の学びを今後の活動に活かしていきたいと思います。

 今回ご対応いただいた安藤さんをはじめ、スタッフの皆さん、ご多忙の中、貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。

樹齢約250年の天然木曽ヒノキとともに

樹齢約250年の天然木曽ヒノキとともに

文責 森と木のクリエーター科木工専攻2年 寺島基、1年 増岡拓弥、若田拓也