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2023年12月22日(金)

実測・設計・提案。実務と同じ「古民家の再生」

良い古民家には人間の技術や、その地域の暮らしの様子が集まっています。
とくに見えないところには、地域でとれたであろう木が使われていたり、つくりの荒さや精緻さに家の格式が表れていたり、多くの発見があります。
調査・実測に行くといつも学びがあって、下の写真のように、わたしも嬉々として床下を覗き込んでいますが、建物の足元は、おもしろいのです。


 

森林文化アカデミークリエーター科の授業「古民家の再生」では、空き家になっている古民家で実測野帳を採ります。
建築スキルを身につける近道は、いい建物の実測野帳を採ること。
とくに古民家は、日本の建物の基本がよくわかります。

なかなか風合いのある建物でしょう。岐阜には、というか日本全国に、こんな建物がまだまだ残っています。
プリント合板で左官壁を隠してしまっています、昔ながらの漆喰や土壁を隠すことが流行った頃があったようです。その方が現代的だという風潮だったのでしょう。
今はどうでしょうか。そして、これから改修されるこの家にとってはどうでしょうか。

実測野帳は、平面図、展開図に加え、屋根裏に入って小屋伏図、床下を除いて床伏図を描きました。
描き方の違う箇所は消して直しながら、丁寧に、かつスピーディーに描くのが大切です。
匠式実測野帳はCADで清書しません。このフリーハンドが清書図面です。
一年生の時の「空間認識」に始まり、プロジェクト授業でも実測野帳を採っているので少し慣れていますが、柱や梁の見えないところは、構造の規則性がわかりづらく、図面化するのも苦戦しますね。
絵を描いたあとは寸法をとり、確認して終了。まずまずの出来でした。

古民家の再生2023実測図

 

実測した図面をもとに、想定クライアントから要望をもらって設計します。
敷地があって、要望があって、設計する。実務と同じように進めます。

プレゼンも、何度も行っているので、各自上手になっていました。
改修設計は難しいので案はまだまだでしたが、予算を考慮しながら一連の流れを体験する授業になりました。

古民家の再生2023郡上八幡

最後は、お隣郡上八幡で町歩き。徹夜踊りで有名な郡上八幡は、空き家を再生して移住者を増やす事業が成功しています。アカデミーで木造を学んで卒業した後に、郡上八幡にも何かつながりができればという思いを込め、活動母体の「チームまちや」さんに改修物件を案内してただきました。この日驚いたのは、酒造を回収した小道具ショップ「gugulab」です。町中の空き家から出る「残置物」の中で良いものを揃え、壊れたものを直して売っています。「残置物」は空き家対策の問題として上がりますが、出口を用意できている点が見事と感じました。最近は行政が使える粗大ゴミのメルカリ販売を行っていることが話題ですが、「gugulab」ではネット販売も行っているようです。

町並みを感じて、町並みに配慮した設計で、建物をきちんと直し、長く使う。
これからの日本の建築にとって大切なことを、一連の流れ学ぶことができたと思います。

 

建築教員:松井匠