【視察報告】ストローブマツの利活用について
木造建築専攻・講師の石原です。
皆さんは「ストローブマツ」(ホワイトパイン、イースタンホワイトパインとも呼ばれます)をご存知でしょうか。
北米東海岸の代表的な造林種なのですが、わが国においては昭和30~40年代にに北海道の一部地域で植林されたのみで、その後に広く普及することはありませんでした。
また、「輪生節」であるために長尺の良材が得にくいこと、在来の人工林材に比べて強度面で特に優れているわけでもなかったことから、材料(木材)としてもあまり利用されていません。
過去にも、あらゆる用途への利用を検討したようですが、今日に結実しているものはほとんどないと言ってよいでしょう。
とはいえ、北海道内のストローブマツは大径化が進んでおり、なんとか有意義に使いたいところ。
前々職(物林㈱)での元上司(金川晃さん)が定年後、自ら会社(㈱ストローブ)を立ち上げ、このストローブマツの利活用をいろいろと提案しているそうなので、挨拶がてら話を伺ってきました。
これがストローブマツ材。北海道を代表する造林樹種であるトドマツ(モミ属)に似た見た目ですが、大きめの樹脂道があるので、マツ属っぽさを感じます。
そして、これがストローブマツ大径材の利用例その1。「北海道開拓の村」の歴史的建築物の板葺き屋根(の修復)に使用しています。おそらく今まではスプルースの大径材から得られた柾目板を修復に使用していたのでしょうが、昨今では北米の大径スプルースが入手困難になっているため、その点に着目したそうです。
ストローブマツは輪生節なのですが、節間からは良質な柾目板が取れるそうです。
こちらは利用例その2。節を除けば比較的きれいな材が得られるので、造作用集成材(フリー板)も作っているようです。淡白な色合いで、雄々しきストローブマツの立木とは似つかぬ上品な印象を受けました。
・・・さて、三浦綾子の代表作「氷点」では、旭川市の外国樹種見本林にあるストローブマツの描写が頻繁に出てくきます。
「高いストローブ松の梢が風に揺れていた。それは揺れているというよりも、幾本ものストローブ松が、ぐるりぐるりと小さく天をかきまわしているような感じだった。(三浦綾子「氷点」より)」
大径となったストローブマツが林産業界をかきまわす日が来るのか否かは分かりませんが、こうしたチャレンジに注目を続けていきたいと思います。
講師 石原 亘