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2021年11月29日(月)

木工事例調査 関西①(竹中大工道具館)

クリエーター科木工専攻の恒例授業「木工事例調査」に行ってきました。昨年はコロナの影響で県外への訪問は実施できなかったのですが、今回は感染対策を万全にして兵庫、大阪、京都の博物館、製材所、木工工房などを1泊2日で回りました。学生によるレポート第一弾は竹中大工道具館です。

 

2021年11月7日に兵庫県神戸市中央区にある竹中大工道具館を訪問しました。

竹中大工道具館は、「消えていく優れた大工道具を民族遺産として収集・保存し、さらに研究・展示を通じて後世に伝える。」という理念の下、竹中工務店の創立85周年を記念して昭和59年7月に開館した日本で唯一の大工道具博物館です。

神戸のビル街に突然現れた和風の邸宅。そこが、竹中大工道具館でした。大工道具の博物館らしく、木のぬくもりを感じる素敵な入り口がありました。入り口の門をくぐり中に入ると、そこには小さな日本庭園がありました。

博物館の入り口

博物館の建物は、総ガラス張りのお洒落なレストランの様な外観でしたが、木を沢山使っていて、とても癒される空間になっていました。自動ドアは、クリの木を使っていて、チョウナという道具で削った跡が模様になっていました。そして、ロビーの天井は奈良のスギで作られており、船底のような形をしていました。建物を見ているだけでもとても楽しい博物館でした。

竹中大工道具館は1階、地下1階、地下2階の3階構造になっていました。展示は、テーマごとにまとめられており、閲覧しやすい工夫がされていました。

 

●木工の歴史や世界の木工道具(地下1階)

大工道具の発展を展示したコーナーでは、昔の物から順に展示してありました。道具だけでなく、実際に使う様子が分かりやすい展示になっていました。

石斧と鉄斧の切り口

鴨居挽鋸

継手と仕口の技を実際に体験出来る展示もありました。建物のどこに、どんな技が使われているのかが分かり、とても面白かったです。

継手と仕口の体験

世界の大工道具の展示では、中国とヨーロッパの大工道具が展示してありました。柔らかい木を使う日本と、硬い木を使う海外の道具の違いが分かり、興味深かったです。

 

●展示スペース・木工教室(地下2階)

展示スペースには、茶室の実物大模型や組子細工がありました。日本に残る、手仕事の美しさを感じました。

茶室の実物大模型

組子細工

●工房の見学と槍鉋の実演など

普段ワークショップなどで使われている工房を特別に見学させていただきました。竹中大工道具館の技能員である堂宮大工の北村智則さんが槍鉋を使ってヒノキを削るところを見せてくださいました。均等に削られていく木くずは長年にわたって堂宮大工で鍛えられていた職人技を感じさせられました。北村さんが作ったスプーンやお盆などもとても美しかったです。また、刃物の切れ味を維持するための砥石コレクションを見せていただき、研ぎ方についても貴重なお話を伺うことができました。

技能員である堂宮大工の北村智則さんによる槍鉋の実演

北村さんが作ったスプーンやお盆など

●最後に

今回の見学を通し、普段使っている鉋などの道具の歴史的変遷や伝統建築で使われる技法などについて理解を深めることができました。自然災害が多い日本でも何百年と維持されている伝統建築はすべて昔の職人さんが限られた手工具を使って造ったものだと思うと、本当に感心させられます。そして、次の世代に引き継いていこうと修復に励む代々の職人さんもまた、日本の歴史を刻む方々だと思いました。

竹中大工道具館

 

文責:森と木のクリエーター科木工専攻1年
鈴木、ヤップ、奥田