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2019年11月07日(木)

ドイツ・サマーセミナー2019報告 その2

9/16(サマーセミナー2日目) 

林冠ウォーク

本格的にドイツの視察がこの日より始まります。まずは林冠ウォークができる施設(Baumwipfelpfad Schwarzwald)を見学です

林冠ウォークの入口

この施設では木の樹冠と同じ高さに木製の歩道が作られています。普段、樹木は下から見上げるものですが、ここではいつもとは異なった目線で森を楽しむことができます。

全長1250mの遊歩道が続きます

 

施設内はバリアフリー。誰でも利用できる施設でありながら、非日常的な体験を提供してくれます。昨年は27万人もの方が訪れ、森を楽しんだとのことです。

遊歩道の高さは最大で20m程度

樹木はドイツトウヒ、ヨーロッパモミ、ヨーロッパブナが多く、直接触ることもできます。

リス・鳥のえさ台。右側に小鳥が来ているのが分かりますか?

いたるところに自然と触れ合う仕掛けや環境教育の展示物がありました。こういった仕掛けや展示物の見せ方も日本より進んでいる気がしました。

遊歩道の最後には高さ40mのタワーがありました。

タワー頂上からは「黒い森」を一望できます(黒い森とはドイツバーデン=ヴュルテンベルク州に位置する森。植林されたドイツトウヒ等により森全体が黒っぽく見えることが由来)。

 

天気にも恵まれ、ドイツの爽やかな空気の中で非常に気持ちのいい体験ができました。林冠ウォークは民間の企業が経営しているにも関わらず、環境教育的要素も色濃く含んだ施設でした。今はこのような施設がドイツ国外も含めて8か所あり、もうすぐカナダに9か所目ができるとのことでした。日本にもできれば、人気の施設となるのではないでしょうか。

 

 

ナショナルパーク シュヴァルツヴァルト

午後は「ナショナルパーク シュヴァルツヴァルト」という国立公園を見学しました。広さは約1万haで、ドイツのレンジャーの方が案内してくれました。

人間が全く手を入れずに保護する「コアゾーン手を入れながら保全する「マネジメントゾーンに分けて管理しているそう。マネジメントゾーンには牛や羊を放ち、植生遷移が進まないようにしている場所も多いそうです。日本でも自然に手を加えるべきか否かというのは時に難しい問題となりますが、このようにゾーン分けして考えるというのは参考になると思いました。

また、ここでは枯れた木を大切にしているとのことでした。枯れた木を利用する動物は多く、フクロウの巣になったりもするそうです。「死んだ生命の中に生きた生命がある。それを見落としてはならない」とのこと(名言です)

風倒地区

更にバスで少しだけ移動し、風倒地区という場所を見学しました。

ドイツでは1999年に発生した「ローター」と呼ばれる大型台風により、大規模な風倒被害を受けました。ヨーロッパ全体で1億㎥の風倒被害があったそうです。当時は国外からも作業員の応援を呼び、絡まりあう倒木の処理にあたったそうですが、この場所だけはあえてそのまま残し、一般の方が見学できるようにしたそうです。

遊歩道が整備され風倒地区内を見学できます

風倒地区なので、木がたくさん倒れているのですが、思っていたよりも倒木が目立ちません。被害を受けたのは20年前。今では倒木の腐朽が進み、森林が再生してきていました。ここでは風倒被害と共に自然の治癒力のすごさを感じることができる場所でした。

浅根性のドイツトウヒの一斉林は災害で全滅するリスクが高くなります。このような被害はドイツで本来の自然ではないトウヒの一斉林から広葉樹を増加させる流れの要因のひとつになっているそうです。

若い木々の下に倒木がたくさんあります

遊歩道を整備した当初は「こんな被災地にそんなに人は来ないだろう」と思っていたが、今では年間10万人の観光客が来ているようです。ドイツでは自然や野生を見たいという欲求が年々高まっており、森林整備のために設置した募金箱もお金であふれてしまうことがあるそうです。日本では被災地を観光に結び付ける発想はなかなか出ないかもしれませんね。

バスの運転手さん(左)とレンジャーの方(右)

私たちのバスの運転手さんもレンジャーの方にたくさん質問していました。この光景にドイツ国民の環境意識の高さを感じました

ユースホステルの食堂(ドイツの高校生が合宿に来ていました)

盛りだくさんな1日を終え、ユースホステルに帰ってきた私達は食堂で美味しいドイツ料理を堪能し、明日の見学に備えるのでした。

 

報告:クリエーター科1年 林業専攻

 

柴田亮介

 

11月6日より毎日更新していきます!

※現地に行った学生の報告会も11月12日(火)に行います

時間:18:00~19:30

場所:森林文化アカデミー メディアラボ1F 多目的室にて