プロの技術に触れる、組手の手加工に挑戦しました「木工・建築文化論」その1
森林文化アカデミーは清水建設株式会社と連携協定を結んでいます。この授業は、清水建設の多分野からなる講師の方をお招きして講義をして頂くというもの。第1弾は、清水建設株式会社東京木工場の方々に実施して頂いた授業の様子をご紹介します。
清水建設東京木工場は普段は建築の内装や作り付け家具の製作を担当しています。良く知られている建物では東京大学の安田講堂や歌舞伎座などの施工にも関わられています。清水建設は大手総合建築業でありながら木工場を社内部署に持ち、高い木工技術を持った職人の育成にも力を入れています。冒頭の講義では、技能競技会を取り入れた職人育成について語って頂きました。
職人育成の取組みで印象的だったのは、手工具を使った加工技術に重きを置いている点でした。木工はアナログな職人仕事のイメージがありますが、木工現場においても今は機械加工がほとんどです。東京木工場でも、木工機械やプログラミング加工のNCルーターを活用していますが、職人技術の下地がなければ、これらを上手く使うことはできないそうです。
女屋さんは技能グランプリの家具部門で優勝、屋代さんは技能五輪で優勝し、世界大会にも参加しています。競技会は厳しい時間制限の中で課題の家具を作る必要があり、一部加工は手加工。とくに抽斗(ひきだし)を組む「あり組」は必須の技術です。今回はその抽斗加工の「あり組」をレクチャーして頂き、学生達に挑戦してもらいました。
まずは屋代さんのデモンストレーションから始まったのですが、驚いたのは手の速さと無駄のなさ。何度もおっしゃっていたのは「競技会では道具を持ち替える時間すらもったいないんです」という言葉。抽斗の箱であれば、8カ所の組み手加工が必要になりますが、1時間半ほどで完成させるとのこと。手際のよいお手本を見せてもらって、学生達もさっそく作業にとりかかります。
このあり組の手加工は、見た目以上に難しいものです。教えて頂いたからといって、早々にピッタシと組めるものではありません。しかし、実際に手を使い切って、削る体験を通して学べることがたくさんあります。学生達もアドバイスをもらいながらの加工体験を通して良い学びになったのではないでしょうか。材料はまだ残してありますので、引き続き取り組んでいって下さい。
体験実習では木工専攻の学生は抽斗作りをしましたが、他専攻の学生には鉋削りの体験をしてもらいました。鉋も伝統的な木工道具ですが、荒削り、仕上げ削りなど用途によって台の調整が変わります。今回は中仕込(ちゅうしこ)と仕上げの2種類の調整をした鉋を使い、それぞれ削り比べをしました。
学生達はその微妙な削りの手ごたえ、仕上がりの違いに木工の仕事の繊細さを感じてもらえたのではないでしょうか?最後に鉋の裏金の仕込みと逆目の止め方まで、伝統的な木工道具の優れた面と奥深さを伝えて頂きました。また、作業に使う刃物や治具(加工に使う補助具)など、自作された道具の数々を見せて頂きました。今回の経験と学びを、これからのモノ作りや現場で学生達は活かしてください!
清水建設東京木工場の女屋さん、屋代さんには和やかにかつ丁寧に学生達にご指導いただきありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
木工専攻 講師
前野 健