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2017年11月29日(水)

教員オススメの一冊15:google Earthでみる地球の歴史

 

google Earthでみる地球の歴史
著者:後藤 和久
発行年:2008年
発行元:岩波書店
おすすめしている教員:杉本和也


なぜ森林文化アカデミーで地球の歴史が関係あるの??と思うかもしれませんが、地球の歴史を学ぶことが実はとっても重要なんです。

私は林業機械や森林土木など林業工学が専門ですが、例えば山の中に林道を開設する前に山の地質をチェックします。ここは美濃帯だがチャート(堆積岩の一種)が多い地域なのか、あるいは火山岩が貫入している地域なのか、はたまた風化具合はどうなのか、etc……。

高校でいうと地学の知識が重要になってくるのですが、あまり興味がない人にとってはとっつきにくいですよね。そこで今回紹介するのが「Google Earthでみる地球の歴史(岩波科学ライブラリー)」です。

Google Earth とはご存知の方も多いと思いますが、簡単な操作で世界各国、地球のいたるところの衛星写真、空中写真を見ることができます。そのGoogle Earthを使って、地球の歴史を感じることができるスポットを紹介しています。

本に掲載されいてるポイントのうち、2か所を紹介しますので、google earthを使ってぜひ訪れてみてください。ちなみにgoogle earthは無料でダウンロードして使えるパソコン版の他、ブラウザのchromeを使っても閲覧することが出来ます。(2017/11/29現在)

サン・アンドレアス断層
緯度,経度 : 35 07 35 N, 119 39 47 W

メキシコ北部から米国カリフォルニア州を貫く、世界有数の巨大断層である(原文)。

この断層は北アメリカプレートと太平洋プレートとの境界ですが、この太平洋プレートとは、東日本大震災を引き起こした三陸沖の海溝に沈み込むプレートで、年間約8cmの速さで移動しているといわれます。このカリフォルニア州から三陸沖まで広がる大きな太平洋プレートが、日本近海の海溝に沈み込むことで、地震を引き起こしたり、日本の山脈を形成したりしていると思うと、地球のスケールの壮大さに驚きます。

デンバー市郊外ダイナソーリッジ,恐竜の足跡が見える斜面
緯度,経度 : 39 40 51 N,105 11 32 W

実際にはGoogle earth上では足跡は確認できず、ストリートビューも表示されませんでしたが、ダイナソーパークと名付けられており雰囲気は感じられます。ここは白亜紀の地層で大型の草食恐竜と肉食恐竜の足跡を間近に見ることができるとのこと。恐竜は6500万年前に絶滅したが、その原因は天体衝突によるものと考えられています。その前後の地層境界をKT境界といいますが、過去には6500万年前を含めて5回の生物大量絶滅が発生したといわれています。そのうちペルム紀末の絶滅の痕跡(PT境界)は、なんと!日本ラインと呼ばれる木曽川流域で見ることができます。チャートには赤色、黒色、白色、緑色などいろんな色がありますが、そのPT境界ではチャートが赤色から黒色に変化しています。色の変化は、突如酸素の多い時代(鉄が酸化して赤色になる)から、酸素が少ない時代(黒色になる)に変化したことを表しているといわれます。

アカデミー周辺の山で林道や作業道を開設すると、チャートに出くわすことが多いですが、実はよく見るといろんな色があり、それぞれのチャートが堆積した時代の環境を表しています。土木的にはチャートに出くわすとブレーカーが必要であり、なるべくチャートの露岩が少ないところを選定して線形を計画する事が必要です。

 

ということで、若干こじつけている気がしなくもないですが、林業を学ぶにあたって地球の歴史を学び、地質に詳しくなるというのはとっても重要なことなのです。

ちなみにせっかくですので、

岐阜県立森林文化アカデミー
緯度,経度 : 35 33 18.860 N,136 55 03.216 E

校舎の裏に広がる演習林で皆伐実習を行った場所や緑の人工林の中に白く映るチャートの露岩を見ることができます。ぜひ訪れてみてくださいね!

 

杉本 和也
林業における生産システム
森林作業における生産管理
伐採搬出作業におけるシミュレーション

 

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