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2017年10月09日(月)

教員オススメの一冊12:岡倉天心「茶の本」鑑賞

岡倉天心「茶の本」鑑賞
著者:立木智子
発行年:1998年
発行元:淡交社
おすすめしている教員:松井勅尚


身の回りの品々をみて下さい。恐らくどれも心の「いいね!」ボタンをポチっと押し選んだモノたちでしょう。家具にしても、衣類にしても、食器にしても・・・皆さんに選ばれたモノたちです。
「こんな暮らし方をしたい・・・」
皆さんが、どんなイメージを描くか?により生活空間のモノたちが選択され、それらと共に暮らす訳です。
木と共に暮らす「新たなライフスタイルの提案」を目指すアカデミーとしては、生活者が身近な道具として何を選ぶのか?その選択が気になるところであります。
テレビのない生活を始めて約30年(ジョイナーが騒がれた1988年のソウルオリンピックの年にたまたまテレビが壊れ、放置したのがキッカケでしたが…)。
先日たまたまCMを観る機会?があったのですが…その展開の速さについていけず、違和感を感じました。(CMを観なくても)街に繰り出せば生活に必要なものはすべて手に入り、何不自由なく暮らすことができるのが今の日本であります。
そんな中、「教員おススメの1冊」というお題を頂き、『茶の本』を思い出しました。
『茶の本』を知ったのは大学生のころ・・・
恩師から「日本文化や美意識をテーマにするなら読むように!」と薦められ、
急いで書店に走り求めた本でした。岩波文庫で100ページにも満たない本ですが、二十歳になったばかりの私には、なかなか読みにくい本でありました。理解するための日本文化の基本的な知識が圧倒的に足りないことを痛感しました。しかし、今まで無意識に惹かれていた世界が意識化され、茶と利休、道教や禅、芹沢銈介・河井寛次郎・黒田辰秋等民芸周辺等、日本文化に関する書籍への関心が広がりました。特に、小学生のころの単なるあこがれの建築家であった黒川紀章の書籍に改めて触れるキッカケとなり、「共生の思想」「中間領域」という概念に惹かれ作品のタイトルに引用したほどでした。
20代での本との出会いが、今の私の研究テーマの1つである「工芸と美術の融合~木の制作を通して」につながっていることを実感しています。
そして、この1月に黒川紀章が最後に設計した大口中学校を視察することが出来、不思議なご縁を感じました。

『茶の本』は、岡倉天心が日本文化を紹介するために、1906年に英文で『The Book of Tea』として出版されました。つまり想定した読者は主に西洋なのです。
その後日本語に翻訳された逆輸入本であります。日露戦争直後に出版され、100年たった今も尚読み継がれている本であります。

さて、ここでご紹介する本は、『岡倉天心「茶の本」鑑賞』という本です。著者立木智子さんが導く「茶の本」のいわばガイドブックです。そもそも「茶の本」を鑑賞するための本が出版されることが珍しいとは思いませんか?読みにくい…と思ったのは、私だけではなかったようです。
第四章ライフスタイルの提案の中の一文を引用します。

「 茶道が日常生活に指針を与えるもの、日常生活そのものを扱うものであることに
重要なポイントがある。つまり、ライフスタイルの提案である。
ライフスタイルーそれは、清潔で、質素で、合理的であり、節約を尊び、自然との共生を目指すものである。…」

この一文に共感する皆さん、岡倉天心の思想に触れ、アカデミーで共に形にしてみませんか?

 

 

松井 勅尚
木育・木工・彫刻
研究テーマ 木育の普及
木育推進のための玩具及び教材研究
文化と子どもを真ん中においたまちづくりの研究~レッジョ・エミリア・アプローチを通して
工芸と美術の融合の研究~木の制作を通して

 

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