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2018年07月22日(日)

フィールドワーク

自然は常に変わらない存在ではありません。日本のように四季があれば、気象現象に合わせて1年のサイクルで生きものの営みが廻っていきます。これを研究する学問を「生物季節学」といいます。 同じ場所を巡ることで、ある昆虫がいつ頃から出現するのか、ある植物の花が咲くのはいつか、ある動物が卵を産むのはいつであるか、などを知ることができます。 こういった情報は自然を解説する際に重要な基礎的な情報であると同時に、昔の人が農業をする際の農事暦や、山で木の実を収穫する際など暮らしやなりわいに重要な経験知でもありました。

森林環境教育専攻の授業のひとつに「フィールドワーク」があります。この授業ではアカデミー周辺に観察コースを設定し、定期的に生物を観察して記録しています。

今回は6月上旬に学生とコースを巡ったときに出会った生きものたちをご紹介します。

この頃はまだアジサイが花盛りでした。

林の縁にはまだ青いフジの実が多数ぶら下がっています。このフジはひと月前にはまだ花だったものです。早速季節の移り変わりを感じますね。

さらに進むと田んぼにかぶさっているフジのツルにモリアオガエルが卵を産んでいるのを見つけました。モリアオガエルは天敵の少ない水田の上の樹木に卵を産み、オタマジャクシは真下の水に落ちるようになっています。時々山道の小さな水たまりの上に産んでいて心配になることもありますが、親はよく選んで卵を産んでいるようです。昔ながらの水田と林のセットがないとこのカエルにとっては困ったことになりますね。

しばらく歩くと道の上にヤマカガシの死骸が・・・。カエルがいればそれを食べるヘビが現れるのは必定。予定調和的に見えるかもしれませんが、実際このあたりはヘビが多いです。農薬の使用が少ないカエルが住める環境が続いていることを想像させます。アカデミー周辺の自然環境は農業をしておられる方のおかげで良好なようです。

最後に林の縁を離れて暗くて湿った林内に足を踏み入れると、ツツジ属のバイカツツジが咲いていました。日本産のツツジ属はほとんどがラッパ型の花をしていますが、バイカツツジはラッパが反り返った形の珍しい花冠です。ちょうど台風の日に外を歩いて反り返った傘のようです。小さいですが品があって美しい花です。 ほんの2kmほどのコースですが、ほかにも多くの生物と出会うことができました。

実習ではこれらの生物を調べることによって生物の同定技術(名前を調べること)を磨きます。 実習はまだまだ続きます。一年を通して実習を終えたとき、その経験は学生にとってかけがえのない財産になっているのではないでしょうか。

教員 柳沢直