活動報告
2020年07月28日(火)

木工事例調査⑥「護山神社」 中津川市連携事業

森林文化アカデミーの木工専攻では毎年、全国有数の木工産地の一つである岐阜県中津川市の工房を巡る「木工事例調査」を実施しています。準備と運営はアカデミーと中津川市の連携協定に基づき、中津川市林業振興課にご協力いただきました。

レポート第6弾は、伊勢神宮に用いられる木曽ヒノキ備林の入口にある、護山(もりやま)神社です。


中津川市のご協力のもと、木工事例調査のプログラムとして「護山神社」をご案内いただきました。本来は「木曽ヒノキ備林」を見学予定でしたが、大雨のため護山神社での説明となりました。

●護山神社

護山神社(もりやまじんじゃ)は、江戸時代後期に江戸城再建の大量伐採による山神の祟りを鎮めるため付知村(中津川市付知)に創祀されました。古くから伊勢神宮の式年遷宮御用材を伐り出す霊山であるのに神社が権力者によって創建されるまでなかったのは意外ですが、それは日々の山仕事が山の神を祭る行為であったため、あえて神社は要らなかったのかもしれません。主な祭神は山の恵みを司る「山の神」、「木の神」、「草・野の神」で山や木を生業とする人々の守護神です。なんだかアカデミー専用のような神社ですね。

護山神社社殿

護山神社 社殿

●木曽ヒノキ備林

「木曽ヒノキ備林」は東濃森林管理署内の加子母裏木曽国有林内にあります。裏木曽地域は、江戸時代いわゆる木曽五木「ヒノキ」「アスナロ」「ネズコ」「サワラ」「コウヤマキ」が停止木(ちょうじぼく:禁伐林)であったように厳しい伐採統制がかけられました。また明治期には皇室所有の御領林内となり、伊勢神宮の式年遷宮御用材を供給する「神宮備林」となります。戦後は国有林となり「神宮」の名称は外されますが「備林」が示すように、現在でも式年遷宮や、歴史的木造建造物へ材を供給する貴重な森林として維持管理がなされています。

●日本人の祈り

護山神社宮司の田口豊年さんから護山神社の紹介を通じて、日本人と森との関係性についてお話がありました。「日本人は信仰や祈りを通じて感謝し、命(人間も木も植物も)を大切にしてきました。木を大切にするということは、単に材料として大切にするだけでなく、命として大切にすることです。日本には自然や神を畏れ敬い、その恵みに感謝しつつ程々を頂戴するとともに、新たな再生を祈る思想があります。鳥総立(とぶさだて:切り株に伐採木の梢先を挿して山の神に祭り、感謝する)はその表れでしょう。」これは、まさに木育!。日本人と山との関わりは精神面において実に深い。森林文化を大切にしようと改めて感じます。

田口豊年さん

護山神社宮司 田口豊年さん

鳥総立て

鳥総立て (2019年の見学時の写真)

●御杣山としての木曽ヒノキ備林

当初見学予定の木曽ヒノキ備林について、裏木曽古事の森ウォーキングツアーガイドの前川信孝さんから歴史的な背景や、森林の状況についてご説明いただきました。

裏木曽古事の森ウォーキングツアーガイド 前川信孝さん

御神木の伐採式について説明する 裏木曽古事の森ウォーキングツアーガイド 前川信孝さん

 

●森林の保全

当地の天然ヒノキ林は伊勢神宮の式年遷宮の御用材、あるいは歴史的木造建築物等の限定な材としてのみ伐採が許され「基本は伐っていけない山」というのが重く響きました。貴重な森(資源)は今の私たちだけの都合で使うのではなく、後々の世代を思いやる、公平で謙虚な姿勢が大切ですね。

 

●遷宮への準備

材はかつて約1万3千本必要、採材効率が良くなった近年でも約8千本!も必要。大量なので遷宮から4年後に次の準備が山で始まるとのことです。選木から伐採を経て伊勢に運んだ後、1~2年は水中貯木で樹脂を抜き、その後製材、乾燥がなされます。自然素材である樹木を材として使えるようにするには相当な手間と時間が掛かるのが分かります。

 

●斧入れ式と三ツ尾伐り

「斧入れ式」とは伐り初めに作業の無事を山の神に祈る神事です。伐り方は伝統的な「三ツ尾切り(三ツ緒切りとも)」。狙った方向に正確に倒すことができ、芯抜けや芯割れが生じることもありません。伐採後は山の神に中(材)を頂戴したお礼に鳥総立を行います。動力は人力しかない中でいかに伐倒するか。観察と工夫を真摯に積み重ねた合理性を見る思いがします。

裏木曽古事の森HPに加筆)

 

●伐採式

「伐採式」とは伊勢の御神体をお納めする御樋代木(みひしろぎ)を奉製する御用材を伐採する神事です。選木は大変厳しく、地上5.4mで直径46cm以上、中に空洞や腐れがないこと、真っ直ぐなこと、枝もあまりあってはダメ、南向きの斜面に生えていること、近くに清浄な川の水が流れている、等々です。また内宮用と外宮用の梢を「人」の字に交差させて倒すのでちょうどよい距離にある木を選定しなければなりません。その他にも大勢の方々が参加されるので斜面上に大掛かりな板台を組むなど、伝統を守るのは本当に大変だと思い知らされます。

 

◆終わりに
護山神社の由来や、御杣山としての伊勢神宮との関係、人と森との関係性を学ぶことができました。案内をしていただいた護山神社宮司の田口豊年さん、裏木曽古事の森ガイドの前川信孝さん、貴重な体験の機会を与えていただきありがとうございました。

森と木のクリエーター科 木工専攻一同

文責: 岡田和美(木工専攻2年)


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