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2019年09月17日(火)

木材検査と丸太の選木(森林総合教育センター)

森林総合教育センター(仮)は基礎工事が完了し、いよいよ木工事に突入です。

昨日は、木材の材料検査のため、郡上市にある澤崎建設さんの土場に学生と伺いました。

まず目に入ったのが、岐阜県産ヒノキの集成材の大梁。150mm巾で450mmの梁成、長さ13Mの集成材は、住宅ではまず見ることのない大きさです。この6本の大梁で屋根を支えます。

通常であれば、色目や節の状況が全く違う木材を、どこに、どの向きに使うか決めていきますが、さすがに集成材となると、見た目にはそれほどの材の差がありません。基本の検査は、曲げ強さのヤング係数と含水率の性能チェックが中心です。今回はJAS製品のため、書類でも確認します。

次に、屋根の水平構面でも使用する岐阜県産スギのCLTパネルです。最小寸法の36mm厚です。見慣れたJパネルと異なり、同じ厚みの積層ではなく、中央部のラミナが少し分厚目です。

 

さて、いよいよメインディッシュの丸太の確認です。これらの丸太はアカデミー演習林で、伐採して出してきた100年生ヒノキです。

丸太伐採は下記のブログでも報告しています。

大径木伐倒・集材プロジェクト授業(集材編)
大径木伐倒・集材プロジェクト授業(伐倒編)

背割りを入れて乾燥機で含水率を落としていきました。

あいにく、表面に黒カビが発生していますが、カビは材内部に菌糸を伸ばしませんので、材の強度には影響ありません。加工後、表面を洗ってカビを落として仕上げます。

12本の丸太から今回使用する10本を選定していきます。まずは、構造上必要な性能を確保するため、断面を一本一本検査して、10本に絞り込みました。

集成材と違って、まっすぐな素直な丸太から、少しねじりながら成長した丸太、割と枝が荒々しく出ている丸太など、個性豊かです。

正面にV字型に5つ並んで、来場者を迎える重要なファサードです。

三つ紐伐りの丸太は最も目につく東の端に配置して来場者に林業の話題提供に、節(成長のあかしの枝の後)の多い生き生きとした丸太は室内本体中央部に配置して屋根を支えるイメージで、それに合わせるV字の丸太も負けない太目の丸太を、、、といった具合に、丸太の個性に合わせて配置しました。

やはり、個性の少ない集成材より、最終の完成イメージを思い浮かべながら配置を決めていくのは楽しいです。

丸太から大梁を支える方杖は、ヒノキの150mm角の製材品です。品質を確認して、配置していきます。

内部に隠れてしまうスギ材ももちろん県産材の「ぎふ性能表示材」です。

このように、今回の森林総合教育センターは、構造材だけでも、様々な種類の材が使われます。内装の木材を合わせるとさながら木材利用のショールームのような状況になります。

 

ところで、一番目を引いたのは、大工さんが墨付けを行う前に試作した1/2の軸模型です。これだけで駐輪場のような大きさです。このV字が5つ連続して建物が構成されます。

一本一本の太さも個性も違う丸太を間違えない様に刻んでいくのは大変です。しかも代わりは無い。
実際に近いモックアップを立ち上げて、接合部の確認をして、その場でディテールを検討できました。

こちらからはモックアップの要望は出してませんでしたが、さすが、いい仕事をしています。

参加した建築学生も、これがプロの仕事かと感心しっぱなしでした。

 

材料検査と選木が終わり、来月の建て方に向けて、いよいよ加工が始まっていきます。

准教授 辻充孝