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2022年02月28日(月)

体験的に学ぶ「木育講座の基礎」

「木育」とは、すべての人が「木とふれあい、木に学び、木と生きる」 取り組みです。

クリエータ科木工専攻1年生の授業「木育講座の基礎」は、木育講座のプログラムの企画から講座の実践までを体験的に学びます。今回、受講者をエンジニア科1年生とした木育講座を企画立案し、講師/スタッフとして木育講座を開催しました。各々が担当した内容をブログ記事として作成しました。下記に掲載いたします。

<イントロダクション>

開催の挨拶として、本講座の目的と概要を伝え、講師/スタッフの紹介を行いました。

本講座では、雑木を用いてナイフやノコギリなどの手工具で「ものづくり」を行います。「ものづくり」の楽しさを体験したり、自分でも作ってみたいと思ったり、他の人に作り方を教えたいと感じたり、本講座がたくさんの気づきのきっかけなって欲しいことを伝えました。

<アイスブレイク>

アイスブレイクは、冒頭にて場の雰囲気を和ませ、コミュニケーションをとりやすい状態を作ります。今回、枝で作ったくさびとナイフを用いて木を縦に割ることを体験してもらいました。その結果、同じ作業台の人と協力して鋸で木を切るなどの姿が見れました。また、木がなかなか割れず苦戦する受講者もいましたが、講師/スタッフがくさびを変えたり、くさびの打ち込みをサポートしたりすることで、受講者全員が木を割ることを体験できました。アイスブレイク後の受講者の表情や雰囲気から、ナイフと枝だけで木を割る体験はよいウォーミングアップになったと感じました。

アイスブレイク

協力して鋸で木を切る

<道具の説明>

講座で使用するノコギリとナイフについて説明しました。ノコギリには、林業の現場では枝払いなどでよく使う剪定ノコギリや木工用ノコギリなどがあり、違いや適した使い方など説明しました。説明後、受講者に質問したところ、ノコギリの横挽きと縦挽きの違いについて正しい答えが返ってきました。しっかり理解してもらえたようです。次に、ナイフには片刃と両刃あり、その違いを説明しました。片刃のものは薄く切ることができ、平面を作り出す時に使い易く、両刃のものはグリーンウッドワークのような様々なナイフワークを使う場合に適しているということを説明しました。今回の講座をきっかけに様々な道具に興味を持ってもらえるとうれしいです。

道具の説明

剪定ノコギリの説明

<砥ぎの説明>

まず、研ぎに使用する砥石として、ダイヤモンド砥石・中砥石・仕上げ砥石の特徴について説明しました。

次に砥ぎ方のコツについて、実演にて説明しました。受講者は実演中の私の手元をジーっと見つめて聞いていました。研ぎの実演後、切れ味を披露したのですが、緊張のせいか上手く紙が切れずイマイチでした(泣)。

砥ぎの大切さについて、私が伝えたかったことは2つあります。

・切れ味が悪いとケガにつながる:力が入り、勢い余って指を大きく切ったりする

・切れ味が悪いと楽しくない!:作業が進まずストレスがたまり、長続きしない

一丁前に人に教えましたが、なかなか砥ぎは難しいです。一生の課題ですね。

切れ味披露

切れ味披露

<材の説明>

講座で使用する材を説明しました。普段あまり使われていない雑木でのものづくりです。

受講者であるエンジニア科が切った雑木を演習林内から拾い、土台として使用します。また、家とツリーには、アカメガシワの木を使います。

受講者に「アカメガシワはどんなところに生えていますか?」という質問をしたところ、「どこでも生えている。」という回答がありました。アカメガシワは明るいところによく生えます。学内でも至るところで見かけるため、厄介な木のイメージがあります。ですが、ナイフで削ってみるととても削りやすく、子供向けのワークショップでも利用しています。実際に削りやすさを体験してみてください。

以上のような説明を行い、製作の講師に引継ぎました。

説明している時の様子

説明している時の様子

<製作(前半)>

いよいよ製作の時間です。最初は「家づくり」を説明しました。受講者は真剣に説明を聞き、生木ということもありサクサクと削りやすく、あっという間に家を完成することができました。

家の製作説明

家の製作説明

次に「ツリーづくり」です。ツリーは乾燥した枝を使用します。受講者はカールの部分の力加減に苦戦していました。ナイフの鎬面に枝を当てて薄く削っていくのですが、これが見た目よりも難しい・・・何個もツリーを作り練習していました。休憩時間もツリーを作っている受講者もいて、夢中になって削っていました。

ツリー作りの実践

ツリー作りの実践

<子供指導時の注意点>

受講者であるエンジニア科の学生は将来林業関連の仕事に従事し、木育に関わる可能性があります。そこで、休憩後に、子供を対象としたワークショップを行う場合の注意点について紹介しました。

例えば、削り台に材を当てる部分の印をつけたり、材にナイフで削り落とす部分をテープで示したりなど、このように簡単な工夫で子供がものづくりを楽しむことができます。また、子供が安定した姿勢でナイフで削れるように作られた削り台など、子供に合わせた便利な道具があるということを紹介しました。

子供用削り台の紹介

子ども用削り台の紹介

<製作(後半)>

前半にて「家づくり」と「ツリーづくり」を学び、後半では家とツリーを好きなだけ製作し、土台に固定して自分が作りたい「まち」を作ります。土台の材料は樹皮つきや節ありの枝など、様々な木材を用意しました。

後半の製作

思い思いに「まち」にしていく

完成した「まち」はエンジニア科ならではの発想やアイディアがありました。切り株や伐倒された樹木をデザインに取り入れたり、慣れ親しんだ林業の現場を再現したりなど、木工専攻の私たちには発想できない「まち」ができ、とても新鮮で勉強になりました。

完成品

完成品

製作時間が足りなかったという意見が出るほど、「まちづくり」を楽しんでもらえたようで本当に良かったです。林業では捨てられてしまう雑木ですが、まちづくりだけでなく、魚・クルマ・キノコなど工夫次第で様々なものを作ることができます。木育講座の授業を通して「こんなのが作れるんだ!」「ものづくりって楽しい!」と少しでも思ってもらえたら嬉しいです。

<振り返り>

製作終了後、受講者は作業台毎のグループにて今日の講座について振り返ってもらい、その内容をグループ毎に発表してもらいました。下記に主なコメントを掲載します。

・「ものづくり」は楽しかった

・「ツリーづくり」は難しかった

・製作時間が足りなかった

・製作にて自分なりに工夫ができた

・ナイフの使い方が自己流であったため、勉強になった

など

<最後に>

今回の講座は受講者がエンジニア科1年生であり、受講者のことを考え、プログラムの企画立案をしました。

講座の結果、第一目標である「ものづくり」の楽しさを体験してもらうことは達成できたように思います。また、クリエータ科木工専攻一年生として初めての木育講座開催であり、反省点も多くありますが、この貴重な体験を今後に活かしていきたいと思います。ご協力いただいたエンジニア科一年生の皆さんに感謝いたします。

文責:森と木のクリエーター科 木工専攻 1年
井上真利、奥田百音、白瀧周、鈴木みなも、高橋敏、内藤光彦、坂野幸太、ヤップミンリー