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2022年08月09日(火)

「木立のこみち」照明の話(自力建設2021)

2021 年自力建設「木立のこみち」には、照明として大光電機(ダイコー)のLEDスポットライト(品番:DOL-4601YB)を設置しています。この照明には照度センサーと人感センサーが付いており、日が暮れて辺りが暗くなると自動で点灯します。

照明器具の下側。球体がセンサーで、左右にモード設定があります

「木立のこみち」ができるまで、夕暮れ後は部屋から漏れてくる灯りが頼りでした。それはそれで充分だったとも言えますが、やはり、照明があることで、通行の安全性が確実に向上しました。それに、グリーンウッドワークなどデッキでの活動を支える一助にもなっているように思います。

暗くなってからの屋外講習の様子

このブログでは照明器具の選定と設置の過程についてと、備忘録として取り扱い説明について記載します。

照明器具の選定については、主に次の1~3について検討しました。

1.照明の種類

2.光の広がり方と向き

3.照明の明るさ、色、演色性

 

1.照明の種類

照明の種類は沢山あります。一方向を照らす「スポットライト」、壁付け照明の「ブランケットライト」、天井付け照明の「ダウンライト」、天井埋込式照明「シーリングライト」、足元の高さの壁付け照明「フットライト」など様々です。これの中から「木立のこみち」に合いそうなものに絞り、比較検討しました。最終的にスポットライトとし、光の方向を下から上、つまり天井裏を照らす方向に設置することにしました。

表:照明の種類と「木立のこみち」の適性評価

 

2.光の広がり方と向き

突然ですが、舞台でスポットライトを浴びたことはありますか?合唱コンクールや演劇や出し物…過去に一度はあるのでは。そこではスポットライトの強い光のせいで眩しくて、目を開けるのも苦慮した…そんなこともあったはず。
このように、光には広がり(角度)や強さ、方向があります。部屋の照明のように、空間全体を均質に明るくする光は「拡散」タイプとされます。スポットライトのように照らす範囲が狭い光は「集光」タイプで、その中でも舞台のようにピンポイントで狭い範囲を明るくするタイプを「狭角」、照らす方向は絞られているけれど、周りにもふわっと光が広がるようなタイプを「広角」と区分されます。
前置きが長くなりましたが、「木立のこみち」では光がふわっと広がる「広角」タイプ(角度60°)のスポットライトを、天井の木目を明るくするよう斜め上向きに設置しています。その意図としては、樹状の枝や天井裏の木目の方に目線を運びたかったということ。それと、上向きの光とすることによって浮き上がる、高揚するような印象をもたらしたかったということがあります。また、光が直接目に入ることは快いものではないため、それを防ぐという意味でもあります。

天井裏を照らすと、反射して光が拡散されています

白い半透明の部分が光を拡散させています

通路での点灯イメージ(施主の先生方へのプレゼン時に使用)

庇での点灯イメージ(施主の先生方へのプレゼン時に使用)

3.照明の明るさ、色、演色性

照明のカタログを見ると、機種ごとに様々な要素があることが分かります。【明るさ】については「定格光束[lm(ルーメン)]」や「白熱灯[W(ワット)]相当」、「照度[lx(ルクス)]」など、色んな単位で表記されています。混乱しそうですが、いずれも明るさを示すことには変わりありません。[W]は白熱電球を使っていた名残です。白熱電球の明るさは消費電力[W]に比例するため、単位として [W]が使用されたのです。一方、LEDは消費電力がとても小さい(白熱電球の約1/5~1/8)ため、代わりに光の量を示す「lm(ルーメン)」が使用されています。現在はLEDが主流になっているとは言え、白熱電球も依然として存在しているため、両方の単位が併用されているということです。

表 ワット相当とルーメン値の目安

単位面積あたりの明るさを示すのが「照度[lx(ルクス)]」です。必要な照度は「JIS照度基準」で定められています。

「木立のこみち」では、通行の安全性を確保することを第一義として、グリーンウッドワークなど精緻な作業に向けては他の光源を取り入れて補完することとし、必要な明るさを検討しました。JIS照度基準より、だいたい5[lx]程度あれば十分ということが考えられました。今回は天井裏に光を当てることにしたため、天井裏の反射率も考慮。天井裏の材は主に桧で、新築時の桧の反射率は55~65%です。無塗装としたため、いずれ色が濃くなり反射率が悪くなることを想定して反射率を30%程度と仮定。光源の照度×0.3で必要な照度を確保することを考えました。実際に設置してみると、光源自体がかなり明るく、通行はもとよりグリーンウッドワークを行うにも十分な明るさになりました。これは必要十分以上、少し過剰とも評価できます。照明の設計は自力建設が初めてことでしたが、必要十分な明るさを設計することは、なかなか難しいことだと実感しました。いい経験を得ました。

 

それから【色】は「色温度[K(ケルビン)]」で表現されます。数値が低い方が温かい色、数値が高いほど冷たい色になります。「電球色」と呼ばれる黄色っぽく、温かみのある光の色温度は2700Kくらいで、居間などで好んで使用されます。「木立のこだち」でも2700Kの照明を採用していますが、ろうそくのような温かさが感じられます。洗面所などに使用される白っぽい色は「昼白色」と呼ばれ、色温度は5000Kです。

 

色温度の隣によく表示されているのが【演色性】で、単位は「Ra(アールエー)」です。あまり馴染みのない単位です。これは自然光(太陽光)で見たときの色の見え方を最良(100)として、それにどれくらい近いかを評価する値です。「木立のこみち」においてはあまり重要な値ではありませんが、Ra83のため「まずまず」といったところです。化粧品売り場や店舗のショーケースなど、正確な色がわかる必要がある場所では重要な指標です。

 

以上が照明器具の選定のお話で、続いて設置について記載します。

電気工事は資格がないとできないことから、こちらはプロにお任せしました。

電気工事の様子

電気工事の様子

一方、学生側では配線隠しを作成。柱に沿って配線があるのですが、それが直に見えないように、柱の幅に合わせたカバーを取り付けました。柱と同じように塗装しているため、あまり目立たないようになっています。

配線の溝を掘る様子

<まとめ>

照明については初めて知ることばかりでしたが、色や光の世界は奥深いなと思いました。居心地の良い明かりを見つけたら、是非よく観察してみましょう。

木造建築専攻 2年 斎藤真梨乃