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2021年09月26日(日)

専門技術者研修「これからの木造建築構造を考える」

木造建築の新しいかたち(その174)木質構造に関する住育の取り組み
実務者のスキルアップをする住育:専門技術者研修「これからの木造建築構造を考える」を開催しました。
これは、木造建築構造の現状について情報共有し、これからの木造建築構造のあり方について考えることを目的とする研修です。前半は「木造建築や木材に関わるトピック」に関する御講演をいただき、後半はこれからの木造建築に関して参加者皆さんとともに議論する内容となっています。
午前の部 9:30~12:30、午後の部 13:30~16:30として研修を実施しています。

今年度の第3回は「古民家の移築・保存・活用」について、午前の部にて開催しました。コロナ禍のため、オンライン研修として実施しました。

研修の様子

まずは、南本 有紀 氏(岐阜県博物館)をお招きし、『岐阜県博物館「旧宮川家住宅保存活用計画」策定と旧徳山村移築民家について』を御講演いただきました。関市の百年公園内にある施設「旧宮川家住宅」の保存と活用について、お話していただいた中で以下のポイントが印象に残っています。

研修の様子
・文化財を保存するということと、活用することは別ものであるため、文化財の保存と活用を同時に考えることは非常に難しい。
・稼ぐ文化財
・博物館の展示は、一昔前の「ハンズオン展示」から、今は「オンラインコンテンツ」へ移行している。今後(ポストコロナ)は、リアルとバーチャルを融合した展示になっていく。
・5+1の壁がある。①認識の壁、②法律・制度の壁、③組織の壁、④経験の壁、⑤専門性の壁、+文化財価値に不要でも必要なこと(バリアフリーや防犯など)。

研修の様子

そして、最も印象に残っているキーワードは、茅葺き屋根のお話の中で出てきました、『身近な技術であるが故に、失われてしまった』です。
皆さんは家を建てる時に、「うちの家に必ず水道を付けてください」とか、「家に必ず電気を通してください」とか、わざわざ注文しないのではないでしょうか。それは、水も電気もわざわざ頼まなくても家には当然のようにあるという共通認識があるからだと思います。
わざわざ注文しなくても当然のように家の構造性能は定量的に検証されて、家には十分な耐震性があるということが、当然である社会になることがいいと、私は考えています。そのため、私は木構造を身近に感じてもらうために、みんなが知っていて当然のことのようにある「水のような木構造、電気のような木構造、空気のような木構造」を日々目指して活動しています。しかし、「木構造も空気のような存在になってしまうと逆に忘れられてしまうかなぁ?」と、ちょっとドキッとしてしまいました。

研修の様子

後半のディスカッションでは、参加者の皆さんをはじめ、社寺建築の改修設計などを手掛けている設計事務所さんや、郡上市や恵那市などの重要伝統的建造物群保存地区などにも関りをお持ちで東京から御参加していただいた設計事務所さんなどからも多くの御意見を頂きました。+αとして岐阜県博物館の特別展も少し御紹介していただき、非常に楽しい専門技術者研修となりました。

次回予定しています、第4回は『木材を利用するための建築確認申請、性能評価申請、構造適判申請について』(仮題)として、望陀 佐和子 氏(株式会社 建築構造センター 木造課)をお招きする予定です。コロナ禍のため、現時点で日程未定ですが、日程が確定しましたら、専門技術者研修の受講を申し込みされている方々に改めて御案内させていただきます。

教授  小原 勝彦