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2022年05月07日(土)

改修と新築、2つの気密測定

本日は、住まい手の方と工務店の方に協力頂いて、改修と新築の2つの物件の気密測定を行いました。

単に「気密」と聞くと、息苦しいといったイメージを持たれるかもしれませんが、住まい手が閉めたり開けたりできる性能で心地よく暮らすための大切な要素です。

今くらいの気持ちいい季節はどんどん窓を開けてもらって心地いい風を取り込み、湿気の多い夏は締め切って冷房、秋は秋風を堪能し、冬はしっかり閉め切って暖房の暖かさを逃がさないようにするのです。

こんな暮らしができるのが気密性能です。

ただ気密性能の難しさは実際に計測してみないことには数値で確認できないこと。
これが同じ温熱性能の中でも計算である程度予測できる断熱性能や日射熱制御性能とは異なる部分です。

1つ目の物件は、鉄骨造を改修した住宅です。

まずは気密測定器を設置します。上の写真の大きな機械が気密測定器です。

仕組みはいたって単純で、矢印の書いてある部分が換気扇になっていて、室内の空気を外に出します。そうすると、外から空気を吸い込もうとしますが、気密が高く隙間が少ないと上手く吸い込めません。

つまり室内と外部で気圧差ができてきます。この気圧差と送り出した空気の量から気密性能を計算します。

学生は授業で何度か行っていたため手慣れたもので、機器をさっと設置して計測を開始しました。

性能は鉄骨造の改修とは思えないほどの気密性能でしたが、まだ改善の余地がありました。

工事途中で気密測定する良さはここにあります。その場で改善が簡単にできるのです。

気密性能は部材の取り合いが弱点になりやすいのです。
今回は数ある配管廻りで一か所だけ少し気流が感じられました。さっそく現場発泡ウレタン断熱材で補強します。

また、2階の根太部分からも少し気流感があったため、こちらも現場発泡ウレタンで塞ぎました。

新築であれば各部もしっかり把握しやすいですが、改修となると、既存建物の状況次第で予期せぬ部分に隙間が残ってしまいがちです。気密測定を工事途中で行うことで見えない隙間を感じることができます。

結果、鉄骨造の改修工事で気密性能C値1台です。

 

さて、2つめの物件は、木造の新築平屋住宅です。

設置もスムーズに、さっそく計測開始。

1回目からC値0.4c㎡/㎡とかなりの高気密性能を計測しました。
それでも、煙を出すスモークテスターを用いたり、体感で隙間を感じるように探し回ると1本の間柱の取り合いから少しだけ気流感を感じます。

コーキングで塞ぎ、再計測。

少しだけ性能向上し、床断熱工法でC値 0.3c㎡/㎡。ここまでくるということなしです。

あとは、学生が今回の計測の報告書をまとめるだけです。

 

さて、今回計測させていただいた物件は、両物件とも片付いていて気持ちいい現場でした。使っている素材や設備、断熱気密の考え方など、工務店の方から生の話を聞くことができ、机上の設計だけでなく現場の理解が進みます。
また、2物件の計測にはそれぞれ住まい手さんも同席され、住まい手さんの意識の高さと工務店との良い関係性が覗えます。

学生がこのようなモデルになるような現場に接する機会に恵まれるのは非常に貴重です。
ありがとうございました。

教授 辻充孝