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2021年02月16日(火)

樹木の過去の成長を調べる術〜「森林調査法2」で樹幹解析を学ぶ〜

先日、クリエーター科1年の「森林調査法2」で樹幹解析を行ったので報告します。

樹幹解析って何?と思う方も多いかと思いますが、簡単に説明すると木の年輪を読んで分析することで、過去にその木がどのように成長してきたのかを調査する方法です。例えば胸高で木を切り(林業の現場、森林調査では胸の高さでの直径が基準となります)そこの年輪を読めば、過去の直径成長がわかります。では樹高はどうやって調べると良いでしょうか。例えば玉ねぎを包丁で縦に切るように、樹木の中心軸を通るように縦に切れば過去の樹高成長がわかるはずです。できないことはないでしょうが、これはかなり難しいでしょう。

そのため伐った木から一定間隔で円板をとっていき、それぞれの年輪をつなぎ合わせて内部の年輪の様子を再現するということをします。例えば、今年の成長分は樹皮の直下、5年前は外側から5本目の年輪、10年前は10本目の年輪です。これはどの高さでも変わりません。そのようにそれぞれの年輪に印をつけて、中心からの距離(つまり半径)を測って方眼紙に落としていきます。それをつなぎ合わせることで過去の成長が再現できるのです。これが樹幹解析という方法です。

伐採するスギ

樹幹解析に使うスギを伐採

今回調査した木はスギ。樹高23.4m、胸高直径28㎝とそれなりの大きさの個体です。事前に杉本先生のご協力のもと受講生で伐倒し、円板を採取しておきました。年輪を調べたところ樹齢は44年でした。

円板の採取の様子

2m間隔で円板を採取

採取した円板

採取した円板。順番に積み重ねるだけでも木の形状がわかります。

2m間隔で採取した円板を読んでいきます。中心を通して引いた直交する線上の年輪を4方向から読んでいきます。年輪が詰まっていたり、逆に年輪幅が広く二重になっているところがあったりもして、4方向で数が合わないこともしばしば。何回も読み直して修正します。5年ごとに印をつけたら定規で中心からの距離を測り、平均してそれぞれの樹齢での半径を算出します。

円板の調査

5年ごとに印をつけて測定。この木は樹齢44年でしたので、外側から4本目が40年、9本目が35年になります。

樹幹解析図作成中

方眼紙に樹幹解析図を描いていきます。直径(ここでは半径)は実際の値、樹高は1/100の縮尺となっています。

さらに方眼紙に点を落とし、樹齢ごとに線を繋いでいくことで過去の木の姿が浮かび上がってきます。ここまできたらあとは計算の世界。直径と樹高がわかれば過去の材積までわかってしまうのです。胸高直径、樹高、材積のそれぞれについて成長曲線を描いて見ました。さらに地位級別の成長曲線と比較したり、材積表の値と比べたりしながら、この木がどのように成長してきたのかなどを考察しました。

成長曲線の考え方、解説

最後に描いた成長曲線から、皆で考察しました。

樹幹解析は処理に時間がかかり、林業の現場ではあまり経験することはないかもしれません。それでも方法を知っていれば、施業方針を考えるときに役立つかもしれません。情報の少ない樹種の利用の際にも有用かと思います。計算のところで四苦八苦していた人もいましたが、一本一本の木の過去に想いを馳せ、さらに将来の施業に活かすことのできるこの技術、ぜひ見につけておいてほしいと思います。(津田)