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2022年08月03日(水)

~可愛いだけでは済まない どうぶつと森~

実習の様子を学生が記事にしてくれましたので、どうぞご覧ください

クリエーター科1年生(林業専攻・森林環境教育専攻)の実習「森林獣害の基礎」では森林内における野生動物の被害の現状を見てきました。

記事の終わりにかわいい(・・・と言ってしまっていいのか、今回考えさせられました。)鹿の親子?の写真もありますので是非最後までご覧ください。

見学先は近年野生動物の、特にシカの生息数が劇的に増えているという地域です。

この地域では、人口よりも鹿の方が多いと言われており、獣害もかなり深刻な状況でした。半日で見た鹿の数はパッと目視できただけ数えても36頭にものぼりました。
視察した山では、ディアーラインという、鹿が多いところに見られる植生上の線が観察されました。ディアーラインは、鹿が自分達の口が届く高さ(地上2メートル程度)までの植物を食べてしまうことで生じるもので、その下の植物がほとんどない状態のことを言います。奈良公園などでも見られるので、訪れる際には意識して見てみてください

ディアーライン

丁寧に草刈りされているように見えるが・・・

 

ディアーライン以外でも鹿のフィールドサインである樹皮を剥がした跡や鹿のフンが至る所に見られました。細いロープによる被害対策をされていましたが、それでも皮を剥かれてしまうそうです。

また、この地域では積雪も多く、冬場になると2〜3m雪が積もることもあるそうです。この積雪で問題になるのが、獣害対策の施設です。獣害対策で使用されるのが獣害防止ネット(全体をネットで囲うことでその中の樹木を守る)や幼齢樹保護カバー(苗木1本毎にカバーをつけることで中の樹木を食害から守る)です。どちらも獣害対策でよく使われるのですが、どちらも雪深い地域では雪の重さに耐えかねて倒れてしまうケースも珍しくありません。積雪と獣害の両方が重なると対策がとても難しくなるということがわかりました(一方で温暖化によって雪が降らなければ容易に越冬が可能になり、鹿が増えるケースもあります)。

また、雪深く、奥山であることで、この地域では冬季の狩猟も行われていないそうです。これも鹿の害を抑制できない原因の一つです。狩猟を行う人も高齢化しており、新規で若い人が狩猟を始めるケースは珍しいとのことでした。
このような問題はここだけの話ではなく、多くの山村地域で起こりうる(もう起こっているところもいっぱいある)問題です。見せていただいた地域をここだけの問題としてではなく、全国に先駆けて生じている問題として考えていく必要があると、改めて感じました。木材として価値をもたせることが難しい場合にどうするか、あるものをどう活かすか、難しい宿題が残りました。

未来の森林を作っていくために獣害対策は欠かせないものであること、そのために日々、悩み、努力されていることなどを現地で感じることができ、有意義な1日となりました。快く現場を見せてくださった関係者の皆様、ありがとうございました。

報告:森林環境教育学生(酒井・福田・湯本)
編集:新津裕