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2019年03月20日(水)

教員お気に入りのアイテム18:「国産品にこだわる?」吉野安里

弱ったなあ。困ったなあ。

お題は「お気に入りのアイテム」。

私は「お気に入り」とか「自慢できる」モノを何も持っていません。せめて千利休の茶碗とか、マチスの絵があればなあ・・・。

(どちらもお気に入りですが、持ってはいない)

写真―1 アンリ・マチスの作品の絵はがき

「お気に入り」はムリなので、意味的にやや近い「こだわり」についてです。

私の関心はモノではなくおカネです。おカネの行方にこだわります。

そのこだわりとは・・・私が前職の学校で書いたものを紹介します。

 

----<引用はじまり>----

「お金のゆくえ」  

吉野 安里

1 スーパーマーケットにて

 たとえば、スーパーマーケットに野菜を買いに行くとします。外国産、国産が並んでいます。品物を買いお金を支払います。では、そのお金はどこへ行くのか?外国産を買うと、流通マージンを引いて、外国へお金が出て行きます。国産ならば、最終的には、国内生産者へお金が流れます。小さな買い物かもしれないが、この違いはとても大きい。国内生産者へお金が流れることは、生産者の生計を支え、地域の雇用を生み出し、それが地域の経済を循環させることになるからです。

 なぜこんな話をするかというと、林業も同じだからです。木を植えて、育てるだけでは、山元の収入はゼロです。業(なりわい)とはいえない。伐採し、木材を売り、そのお金が山元に還流されて、はじめて林業と言えるわけです。ゆえに外国産ではなく、国産の木材を使ってもらうことは、山村振興にとって極めて重要な意味を持ちます。

2 オーストリアで考えたこと

 チロル地方にフィスという村があります。人口は千人に満たず、近隣の2つの村を合わせても3千人ほどです。約50年前に自分たちで出資して会社を興し、スキー場を始めます。農家民泊は自分たちで経営し、少々高くても地元の農産物を使います。そうすることで観光と農林業とを両立させ、雇用を創出し、若者も定着しました。すなわち、観光で稼いだお金を村内で循環するような仕組みを作りました。かつての寒村は、今では3村あわせて150万人(2013冬季)のお客を受け入れるリゾート地に発展しました。

 ハンガリー国境沿いに人口4千人のギュッシングという町があります。かつての「オーストリア最貧の町」で長年人口が流出しました。なぜ自分たちは貧しいのか。化石燃料の購入によって多くのお金が外国へ流出していることに気づきます。そこで、豊富にあるバイオマスを燃料として、熱や電気に変えることを決意し実行します。これが世界中から注目され、今では見学者を相手にガイドや宿泊などの商売を始めるほどにもなりました。

3 お金のゆくえにこだわりを持つ

 「稼いだお金を、外へ流出させずに、自分たちの地域内で循環させる」。ここに山村の振興のカギがあると思います。林業を目指す皆さんは、普段の買い物でも値段以上に産地にこだわってください。「お金のゆくえ」に敏感であることから山村振興は始まるとは思いませんか。

原典:「林大だより」67号,P11,2014.3.14 長野県林業大学校

写真―2 フィス村公式ホームページ(上)、フィス村の事業の拡大(下)

----<引用おわり>----

 国産にはないものは、外国産に頼らざるをえません。やむをえない。しかし外国産と国産とがあって、同等の品質であれば、値段は少々高くても、私は国産や地元産を選びます。道の駅で「地元産の野菜」とあれば、つい買ってしまいますね。これが私の「こだわり」です。

写真ー3 道の駅での地元産品の販売

私の「こだわり」も大変な時代になっています。

  •  国産ではあるが、原材料のほとんどが外国産である。
  •  外国産ではあるが、日本の職人さんが日本で加工をしている。
  •  外国産ではあるが、日本の企業が現地で生産をしている

おカネの行方は単純ではない。うーん実に悩ましいなあ。

今までの話は、日本に暮らす私が買い物をする場合です。外国のお客様が日本に滞在したり日本で買い物をする場合は、おカネは外国からやって来ます。これは、地域振興の上でとても重要なことであると考えます。外から来たおカネは、なるべく外に逃がさずに地域で循環する。この仕組みづくりが大切であることを、チロルのフィス村の例は教えています。

買い物のたびに、私は産地を確認し、おカネの行方が気になります。

吉野 安里(木造建築専攻教員)


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