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2018年12月10日(月)

教員お気に入りのアイテム14:「雑木で作った普段使いのうつわ」前野 健

教員お気に入りのアイテム14:「雑木で作った普段使いのうつわ」

紹介している教員:前野 健


皆さんは、木工家の作る作品というと、どんなイメージを持つでしょうか?

こだわりの逸品

職人の技の光る工芸品

高級な銘木を使った希少な品

などなど・・
大量生産の工業製品が日常の昨今、木工家という人の手が作り出すモノには、どこか格式ばったというか、身近な感じのしない「肩に力の入った」感じのイメージをまとっているようなところがあるのではないでしょうか?

今回、私が紹介するのは、木工家が作ったモノですが、技術的にも用途的にも日常感あふれる素朴なモノたちです。なんせどれも自作のモノですから。

ミズナラ厚手のナッツボウル

 

このうつわは、自分が初めて木工旋盤で挽(ひ)いたナッツボウルです。

ミズナラの端材で作ったこのうつわは、自宅で柿の種などのおやつを食べるときに使っています。

アカメガシワのどんぶり鉢

 

こちらはアカメガシワで作ったうつわ。

春から秋まではラーメンどんぶりに。冬になるとこたつの上でみかんが盛られます。

クリの大盛り椀

 

このクリのお椀は端材で作った為に、大きく皮目が入っています。

入り皮の影響で高台が一部欠けたりしていますが、自分使いには全く問題ありません。大盛りの豚汁を食べたり、うちの子がうどんを食べるのに使ったりしています。子どもサイズのどんぶりにジャストサイズです。

ウリハダカエデの小皿

 

この小皿はお刺身や薬味用に使っています。

我が家の小さな食器棚には必要最小限のお皿しか入っていません。刺身皿のような、登場頻度の低いお皿はもともとなかったのですが、「こんなの小皿にしかならないだろ」というような、ウリハダカエデの皮ギリギリのところの端材で作ったため、サイズから用途が決まってしまったようなうつわです。

これは生木※に近い状態で挽いたため、お皿になった後に楕円に変形しています。※生木とは未乾燥の含水率の高い木材のことです。

アオハダのコップ

 

アオハダで作ったコップは教員室で飲み物を飲むのに使っています。

飲み口のところにすこーしだけ樹皮が残っています。なんちゃってナチュラルエッジなコップです。

これらのうつわたちは、いずれも家具をつくるときに捨てられる「端材」であったり、里山整備やグリーンウッドワークの実習で余った「雑木の小径木」が材料です。いわゆるゴミ箱や薪置き場から拾った材料で作ったモノ。

アカデミーの工房では、商業的な木工所と比べると廃棄する木材は微々たるものですが、それでも結構な廃材が出てきます。それらの有効活用と自身の木工旋盤の練習を兼ねて始めたのが、日常使いのうつわ作りです。

上のナッツボウルやお椀の材料はもともと材木屋さんから買った木材ですが、長さが短くなると機械を通せなくなるため、薪として処分される端材でした。また、どんぶりに使ったアカメガシワやコップを作ったアオハダなどは、径も小さく一般の流通に乗る木材ではないため、大抵は雑木として切られた後はモノ作りに使われることはほぼ無い木です。

立樹や木材は、どのタイミングで雑木や薪と呼ばれるのでしょう?
多分、人と経済の一方的な物差しで「価値の無いもの」と判断されたときではないでしょうか。

こういった一般に「価値を認められない材料」から作ったモノを、日常的に身構えずに使うのが自分にとってのモノヅクラー的な楽しみになっています。

 

前野 健

 

専門分野 木工、木育、木製玩具の企画・開発
最終学歴 豊田工業高等専門学校建築学科
研究テーマ 良質な木製玩具とは
木のおもちゃや遊びを入り口にした木育
木のおもちゃや遊びを入り口にした地域の活性化

 

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