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2019年11月24日(日)

8年目のエゴノキプロジェクト

11/23(土)は恒例のエゴノキプロジェクト。8年目の今年も、全国から50人もの人が美濃の山に集まり、みんなで協力して和傘部品「傘ロクロ」の原材料エゴノキを切りました。2メートル換算で256本、目標達成です。1年間に日本中で生産する和傘に必要な部品をこれで賄います。

実行委員長は傘ロクロを製造する日本で唯一の職人、長屋一男さん。

 

今年の明るいニュースは、3つの班の班長を岐阜の女性和傘職人たちが務めたこと。左から河合幹子さん(仐日和)、田中美紀さん(高橋和傘店)、神谷文与さん(坂井田永吉本店)。神谷さんは森林文化アカデミー卒業生です。元気な女性たちがリードしてくれるのは頼もしい限りです。

そして今年は、岐阜の和傘業界が募集している傘ロクロと傘骨の後継者育成プログラムに応募してきた候補者たちも、作業に参加しました。プロジェクトへの参加も選考の一環なのです。先輩職人たちが働きぶりを見守りました。

 

作業は9時半にスタート。エリアごとに3つの班に分かれ、アカデミーのエンジニア科学生たちが事前にピンクのテープを巻いておいた適寸のエゴノキを伐って運び出します。それを2メートルの長さに玉切りし、軽トラックで舗装道路へ。

この美濃市瓢ヶ岳の森で初めてエゴノキを伐り出した2012年度は、林道のすぐ脇にたくさんエゴノキが生えていて、伐り出すのは簡単でした。8年を経て本数が少なくなり、ずいぶん森の奥まで分け入らなければならなくなっています。

本数が減っている原因の一つは、切り株から生えた若芽がシカやカモシカに食べられてしまっていることです。本来なら切り株から萌芽した枝が8〜12年でふたたび適寸に育つはずなのです。そこで積水樹脂(株)から提供を受けた幼齢木保護チューブを切り株に被せ、シカの食害から守る努力も行なっています。この作業はクリエーター科の学生たちが担当しました。

 

天候に恵まれ、多くの人の参加があり、事前の準備も周到だったことで、作業は午前中で終了。昼食にはキノコ汁が振る舞われました。津田先生の実習で、アカデミーで育てたキノコです。

 

最後に、収穫した256本のエゴノキを前に、みんなで円陣を組んで感想を述べ合います。このひとときがとても良いのです。

今年は大分、山口、鳥取、徳島、長野、神奈川などから、和傘職人さんが参加してくれました。初めての方もおられて、和傘部品の原材料が育つ姿を見られて感激した、という方も。

森で林業に関わる人たち(アカデミーOBです)は、これからも持続可能な形でエゴノキを収穫するためにはどのように森を育てていけばよいか、語ってくれました。初めて参加した森林文化アカデミー学生たちからは、いずれお金を貯めて和傘を買いたい!という声も。

今回嬉しかったのは、東京から歌舞伎の小道具の会社の方が駆けつけてくれたことです。歌舞伎に和傘はなくてはならない小道具。その和傘を作るためにこれだけの人が関わって原材料を収穫していることを見られてよかった、このことを歌舞伎役者さんたちに伝えます、と言ってくれました。

歌舞伎役者さんたちとエゴノキを収穫できたらいいですね!
エゴノキの収穫を通して、森を守る人、部品を作る人、和傘を仕上げる人、和傘を売る人、和傘を使う人、みんながつながっていきます。小さな取り組みではありますが8年続けてきたことで、その輪が確実に大きく広がっているのを実感した1日でした。

担当:柳沢直久津輪 雅