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2019年03月19日(火)

リクライニングチェア「家具をつくる(自力建設)」

より使い手に優しい空間を作るため、建築物の用途に合った家具を建築設計者から提案することがある。
「家具を作る」という本授業は、木工家と建築家のコラボレーションの実践を目標として、3月11日からの連続5日間「自力建設」を題材に、家具の提案から、設計・製作までを木造建築専攻3名と木工専攻の6名が連携して行った。

実習が始まる3週間前に、木造建築専攻チームから木工専攻チームへ2018自力建設「森のいちだんらく(休憩室)」に設置する“リラックスチェア”の提案を行った。

・休憩室内に入るサイズで、仮眠が取れる。
・本が読める。
・丈夫である(耐荷重100㎏)。
・学生が修理できる。
・製作個数は2脚。
・製作費用は0円(全て建築残材などを使用)。

などスケッチをもとに提案。「座面は別の素材でもいいかなあ」「後ろ脚は短くてもいいよね」「手すり高さは下げてもいいよね」など、全員で提案内容に対する確認やディスカッションを行い、製作する家具へのイメージを固めた。

2週間後、木工専攻チームは設計要望をもとに設計を行い、「モックアップ」を試作。木造建築専攻チームへ提案した。実際に建設中の休憩室内へモックアップを運び入れ、全員で建築物と家具との調和を確認した。「この部屋のサイズにちょうどいいね」「座面が長すぎないか」「背もたれはもう少し立たせたほうがいいね」など、再度ディスカッションを行い、基本的な寸法が決定。これを受けて、木工専攻チームが詳細設計に入ることとなった。

実習3日前、木工専攻チームが詳細設計したリラックスチェアの製作図面が完成。いよいよ「家具を作る」の実習を迎えることになった。

実習1日目。製作図面をもとに最終確認。追加の要望事項として、釘やビスなどの金物は使わないという条件が付加される。全員で自力建設の建築残材から家具製作に使えそうな木材を探し出し、工房へ運搬。フレームはひのき、座板は杉、接合に用いるダボはアベマキを用いることが決定した。そして、リクライニングチェアのフレーム材製作、座面板製作、特殊な八角形のダボ製作など部材ごとに製作を分担し、家具製作が始まった。「習い目、逆目に注意して」「この機械の調整は・・」など、木造建築専攻の学生は、木工専攻の学生がこの1年間に学んだ知識や技能に基づく指導を受けながら、扱ったことがない様々な電動工具や製作した冶具を駆使しての作業が開始された。作業終了時には、各分担から実物を使っての作業報告を行い、進捗状況の共有化も行った。

実習2・3日目。作業の内容と分担を確認し、引き続き部材制作。ようやく脚部となる「ロの字」の枠組みが完成。他の部材も着々と完成。製作するリラックスチェアには釘やビスなどの金物を使わないという条件のため、組み立てるための仕口の加工や八角形のダボを用いた接合も始まった。製作数量が多い座板は、人が触れる角面に優しく丸みをつけるため、削りくずまみれになりながらも丁寧に加工を行った。接合部となる仕口の精度は誤差0.2mmが許容範囲。全員が電動工具や冶具などを駆使しながら、より高い精度を目指して悪戦苦闘が続く。

実習4日目。今日中に組み合わせができるよう、各部材の最終加工を行った。朝のミーティングで貫材がないことが判明。急遽、2種類の貫材の製作も始まった。全員休憩時間も返上しての突貫作業となったが、夕方には仮組ができ、ホッと胸をなでおろす。でも、今の進捗状況は全工程の半分程度とのことなので、全員が気を引き締めなおす。

実習5日目。いよいよ授業の最終日を迎えた。フレーム材の面取り加工や、ひじ掛け部分の丸み付け加工を行った後に、組み立て作業が始まった。2チームに分かれての2脚同時進行であったが、「この隙間にはダボが打ち込めない」「この貫はどこに入るの」「座板がうまく並ばないけど」「ダボが足りない」など、問題が続出。その都度、先生の指導と全員で知恵を出し合って、なんとか解決しつつ、製作作業を進める。

そして、夕方には見事2脚のリラックスチェアが完成した。「同じ椅子に見えるけれども座り心地が違うね」「この傷は誰がつけた」「思ったよりゆったりできるね」「疲れたね」など各々が座っての感想を共有した。

連続5日間の「家具を作る」授業(事前準備を含めると約1か月間)であったが、計画段階から専攻が異なる学生間で多くの議論行い、知恵を出し合い、そして共に汗をかくことにより、機能的にも意匠的にも一体感のある家具を製作することができた。一連の製作作業を通じて、建築というダイナミックな面や家具製作の繊細かつデリケートな面を木造建築専攻と木工専攻の双方の学生が理解しあえたことは、できた家具の価値以上に双方の学生の将来にとって大きな財産となるのではないだろうか。

 

<追補>

完成後、誰かの「やっぱり塗装したほうがいいね」の一言で、課外製作の実施が決定。もう1日かけてリラックスチェアの塗装を行うこととなった。塗装したリラックスチェアをご覧になりたい方は、ぜひ森林文化アカデミーのウッドラボまでお越しください。

 

クリエーター科 一年 森本豊茂 記


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