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2016年07月14日(木)

美濃和紙マニアックス 〜現状を知り、みんなで支えるために〜

7月9日、あいにくの雨の中、美濃市内のコウゾ畑で「美濃和紙マニアックス講座」を行いました。去年から岐阜県森林研究所と森林文化アカデミーが、美濃こうぞ生産組合穴洞支部とともに実施している講座です。

ユネスコ無形文化遺産にも指定された「本美濃紙」は茨城県産のコウゾを使いますが、生産者の高齢化により今後の供給が危ぶまれています。美濃市でもコウゾは栽培されていますが、まだ質や量は他県のものに及びません。生産量を増やすにもさまざまな課題があります。その現状を知り、地元のサポーターを増やそうというのがこの講座のねらいです。

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コウゾ畑で解説するのは、森林研究所の研究員、渡邉仁志さん。美濃のコウゾ栽培の課題は、労働力不足、シカやイノシシによる食害、株の衰えによる品質低下などです。

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労働力が最も必要とされるのは、夏場の脇芽かき。下の写真の脇から出ている紫色の芽です。コウゾは1年で3メートルの長さに成長しますが、1メートルあたり10か所から脇芽が出てきます。これを絶えず摘み取らなければなりません。それが大変な作業なのです。

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脇芽を放置すると下の写真のようになります。葉柄のほうは秋になると落ちてくれるのですが、脇芽は成長して枝になり、秋になっても残ります。

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これを収穫して皮を剥くと、下の写真のように脇芽のところで皮が残ってしまうのです。紙漉きには内側の「白皮」だけを使うので、これでは良質の紙ができません。

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美濃こうぞ生産組合の組合員は80代の人が中心です。このままでは美濃でもコウゾの生産が止まってしまうため、最近、手漉き和紙職人や製紙会社の人などが組合に入ってコウゾ生産に携わり始めました。とはいえ、職人の人たちにも本業があります。美濃和紙を継承していくためには、もっと多くの人が支える仕組みが必要です。

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去年から行っているこの講座、嬉しい評価もいただきました。去年参加していただいた岐阜提灯用の紙問屋さんが、「この講座に出たことで普段取り扱っている紙のことがより深く理解できるようになり、業務にも役立っている。これからも継続して参加したい」とのことでした。上流で原材料を生産し、下流で製品に加工するのが長良川流域の工芸の特徴ですが、これからは下流の人が原材料を学び、上流の人が工芸技術を学ぶ、クロスオーバーの取り組みが求められるように思います。森林研究所や森林文化アカデミーとしても、継続してお手伝いしていきたいと思っています。